まずは点数から。
ストーリー 120/150 キャラクター 125/150 絵 80/100 音 85/100 その他システム 70/100 印象35/50
Total 515/650 ESにつける点 84 (暫定45位/180ゲームくらい中)
【前置き】
「終末ホラー」+「SF」。
入莉BAD、ミカ、柊の3ルートでは主に終末ホラーが描かれ、成子ルートでSFにシフトし、入莉TRUEで物語が締められます。
本感想では順を追ってそれぞれのルートについて書いていきますが、まず始めに簡単なルート評価をさせていただきます。
『終末ホラー』
評価S~E
Cassandra Syndrome(入莉BAD) B-
Genocide Virus(ミカルート) A
Glacial Period(柊ルート) B-
『SF』
Reverse End(成子ルート) B
Happy Birthday (入莉TRUE)&Epiloge A-
【終末ホラーとしての「終わる世界とバースデイ」① 危機意識の足りない入莉BAD&柊ルート】
『2012.9.29、世界が終わる』。
カサンドラを名乗る者から、巨大掲示板に描きこまれたのは8月の終わりのことだった。
その後、交通事故、学校でのナイフ殺傷事件などを次々に言い当てていくカサンドラ。
いったいこの投稿者は何者なのか。世界は本当に終わってしまうのか。
予言は本当に未来を言い当てているのか。それともただの偶然なのか……
そんな、緊迫感とともに始まる本作は、終末ホラーものが大好きな私の琴線にビンビン触れまくり、
プレイする日を楽しみに、大切に積んでいた作品でした。
そしてその期待を真っ向から受け止め、叶えてくれたのがGenocide Virusことミカルート。
ホラーとしての出来がいまひとつだと感じたのが入莉BADと柊ルートということになります。
なぜ入莉BADや柊ルートが楽しめなかったかと言いますと、やはり主人公たちの危機意識の薄さにあるでしょうか。
私がビビリなだけかもしれませんが、第二の予言「交通事故」、第三の予言「ナイフ殺傷」までが当たったならば、入莉BADルートでの第四の予言「転落事故」はもっと注意しても良いように思うからです。
なぜか9.29対策協議会は、学内の皆の安全を守る自警団的活動を始めます。
しかし(利己的で申し訳ありませんが)私としては、そんなことよりも「予言された当日は学校に近づかない。家から出ない」こと。これに尽きると思うのです。
だというのに、ノコノコと学校に向かった結果、竜巻&窓ガラス崩落事故に巻き込まれてしまう。軽率すぎます。
柊ルートでは『9.28までに死者〇〇万人~』 とあるのに、なぜか主人公たちは『9.28に』と勘違いをした結果、行動が遅れて致命的な結末を迎えます。
そもそもなぜカサンドラが『9.28まで』と日時を区切ったのかも不明ですが(9.29以降も氷は拡大しているため)、
普通、まともな国語能力があるならば、『9.28まで』と言われたら『9.28に』とは思わないでしょう。
一人ぐらい勘違いをする人間がいるかもしれませんが、頭の良い成子や柊がそんな勘違いをするとは思えないんですよね。氷が広がってきたと思ったら、すぐに逃げる。これでよかったのに、何をモタモタしていたのでしょうか。
やはり危機意識が薄すぎると思います。
【終末ホラーとしての「終わる世界とバースデイ」② ホラーの真骨頂を見せてくれたミカルート】
そんな他ルートに比べ、ミカルートはホラーとしての面白さを存分に味わえる、終末ホラーの傑作ルートだったと思います。
まず、セルビアから殺人が起こり、東ヨーロッパ、そしてイギリスへ。
災厄が徐々に拡がっていくその怖さ、分かっていても逃げ場がない恐怖。
そしてついに日本へ~という流れは、『その日だけ学校休めばいいじゃん』な入莉BADや、『だからさっさと街から出ればいいじゃん!』な柊ルートと比べ、深刻度が桁外れに違います。
街から脱出する成子と入莉を見送り、柊のために残ると決めたミカの心情も自然で、そこから続いていく展開も圧巻の一言でした。
子供だけが罹患するウイルスという設定もなかなか面白く、これによりウイルスの恐怖だけでなく、『人狩り』と称して子供を襲う大人の設定も光っています。
そしてスカイタワー(でしたっけ? スカイツリーみたいなやつ)から、大切な彼女と共に飛び降りていくエンディング。
元々、9.29対策協議会の中ではミカが一番好きだったこともあり、非常に感情移入させられるシナリオでした。
全ヒロインがこのクラスの内容ならば、90点も夢ではなかったのですが。
【SFとしての「終わる世界とバースデイ」① 先の読める展開、力技の多用】
さて、そんな『ホラーとしての』本作には、やはり不可解な点が幾つもあります。
最大の疑問点は、「選んだヒロインによって、終末の展開が変わる」ことでしょうか。
普通に考えれば和臣が誰を選ぶかで、世界の終わり方が変わるなんてことはありえません。
となると、これは
①予言者カサンドラは和臣に近い存在で、カサンドラの予言どおりに事件が起こる、カサンドラ超能力犯人説か、
②和臣の夢説。「リトルバスターズ」的な感じで、「世界の終わり」=「現実世界への回帰」
という二つの予想が容易に立てられたのですが、 多少の変形はあれど本当に②だとは……さすがにそれはありきたりすぎるのではないでしょうか。
また、「終末ホラーとしての不可解点」を
A カサンドラは未熟だから、下手な予言をしても仕方ないよ
B 入莉は不安定だから、そういう設定にしないとおかしくなっちゃうんだよ
の2点で強引にまとめてしまうのは、少々乱暴に感じました。
確かにこの2点を押し出せば、不可解点は一挙に解消でき、物語に目立つ齟齬はなくなるのですが……。
後はまぁ、成子さんが面倒くさがりでどうしょうもないのはその通りなんですが、
本人が嫌がってるのに無理やり面接練習をさせるどころか、申し込みまでさせるのは正直どうかと思いますし、
冗談とはいえ「社会のダニとは友達になりたくない」という柊の台詞はかなり不快に感じました。
この手のキャラいじりはたまにエロゲでも見かけますが、面白いですかねぇ……。
自分がナルの立場だったら、友達作りに絶望して更にネトゲの世界に引きこもっちゃいそうですわ……。
【SFとしての「終わる世界とバースデイ」② SF設定で広がる世界】
一方で、10年後の2022年を持ち出したことで、得られたものもあります。
最たるものは、この手の作品では珍しい(と言ってしまいますが、珍しくなかったらすみません)、10年スパンでの物語が展開されたことでしょうか。
後日談の1枚CGのような形ではなしに、高校生だった主人公たちが成長する姿をしっかりと描いてくれる作品は、エロゲではやはり少ないように思います。
この2022年設定によって、成長した成子や柊の姿を見ることができたのは、やはり嬉しかったです。
【SFとしての「終わる世界とバースデイ」③ Happy Barthday】
そして、美しいエピローグ。
更に数年後、ということで主人公は35歳くらいになったのでしょうか。
寂しく街を歩いている一臣のもとに届けられた、失われた少女からの祝福は、非常に心の温まるものでした。
スペルを間違えているあたりがまた、入莉らしさを感じてよかったと思います。
このゲームを最後までプレイして良かった、と心から思えるエピローグでした。
【余談】
ただ、入莉のエピローグ自体はそのまま残してほしいのですが、
選択肢で分岐する形で、バーチャルリアリティで出会った9.29対策協議会の皆と、同窓会のように思い出を語り合うシーンも欲しかったです。
せっかく絆を深め合った仲間たちなのだから、現実に戻っても繋がっていたいなぁと。
個人的にミカがヒロインの中で一番好きだったこともあって、現在のミカももっと見てみたかったです(一人だけ、全く和臣と接点がない……)。
まぁ、バースデイエンドが一番美しいのは間違いないでしょうし、蛇足になってしまうかもしれませんけども。
そんなわけで、細かいところは結構不満もあるのですが、ミカルートの出来の良さと、ラストに心を持っていかれました。
良いゲームでした。
ストーリー 120/150 キャラクター 125/150 絵 80/100 音 85/100 その他システム 70/100 印象35/50
Total 515/650 ESにつける点 84 (暫定45位/180ゲームくらい中)
【前置き】
「終末ホラー」+「SF」。
入莉BAD、ミカ、柊の3ルートでは主に終末ホラーが描かれ、成子ルートでSFにシフトし、入莉TRUEで物語が締められます。
本感想では順を追ってそれぞれのルートについて書いていきますが、まず始めに簡単なルート評価をさせていただきます。
『終末ホラー』
評価S~E
Cassandra Syndrome(入莉BAD) B-
Genocide Virus(ミカルート) A
Glacial Period(柊ルート) B-
『SF』
Reverse End(成子ルート) B
Happy Birthday (入莉TRUE)&Epiloge A-
【終末ホラーとしての「終わる世界とバースデイ」① 危機意識の足りない入莉BAD&柊ルート】
『2012.9.29、世界が終わる』。
カサンドラを名乗る者から、巨大掲示板に描きこまれたのは8月の終わりのことだった。
その後、交通事故、学校でのナイフ殺傷事件などを次々に言い当てていくカサンドラ。
いったいこの投稿者は何者なのか。世界は本当に終わってしまうのか。
予言は本当に未来を言い当てているのか。それともただの偶然なのか……
そんな、緊迫感とともに始まる本作は、終末ホラーものが大好きな私の琴線にビンビン触れまくり、
プレイする日を楽しみに、大切に積んでいた作品でした。
そしてその期待を真っ向から受け止め、叶えてくれたのがGenocide Virusことミカルート。
ホラーとしての出来がいまひとつだと感じたのが入莉BADと柊ルートということになります。
なぜ入莉BADや柊ルートが楽しめなかったかと言いますと、やはり主人公たちの危機意識の薄さにあるでしょうか。
私がビビリなだけかもしれませんが、第二の予言「交通事故」、第三の予言「ナイフ殺傷」までが当たったならば、入莉BADルートでの第四の予言「転落事故」はもっと注意しても良いように思うからです。
なぜか9.29対策協議会は、学内の皆の安全を守る自警団的活動を始めます。
しかし(利己的で申し訳ありませんが)私としては、そんなことよりも「予言された当日は学校に近づかない。家から出ない」こと。これに尽きると思うのです。
だというのに、ノコノコと学校に向かった結果、竜巻&窓ガラス崩落事故に巻き込まれてしまう。軽率すぎます。
柊ルートでは『9.28までに死者〇〇万人~』 とあるのに、なぜか主人公たちは『9.28に』と勘違いをした結果、行動が遅れて致命的な結末を迎えます。
そもそもなぜカサンドラが『9.28まで』と日時を区切ったのかも不明ですが(9.29以降も氷は拡大しているため)、
普通、まともな国語能力があるならば、『9.28まで』と言われたら『9.28に』とは思わないでしょう。
一人ぐらい勘違いをする人間がいるかもしれませんが、頭の良い成子や柊がそんな勘違いをするとは思えないんですよね。氷が広がってきたと思ったら、すぐに逃げる。これでよかったのに、何をモタモタしていたのでしょうか。
やはり危機意識が薄すぎると思います。
【終末ホラーとしての「終わる世界とバースデイ」② ホラーの真骨頂を見せてくれたミカルート】
そんな他ルートに比べ、ミカルートはホラーとしての面白さを存分に味わえる、終末ホラーの傑作ルートだったと思います。
まず、セルビアから殺人が起こり、東ヨーロッパ、そしてイギリスへ。
災厄が徐々に拡がっていくその怖さ、分かっていても逃げ場がない恐怖。
そしてついに日本へ~という流れは、『その日だけ学校休めばいいじゃん』な入莉BADや、『だからさっさと街から出ればいいじゃん!』な柊ルートと比べ、深刻度が桁外れに違います。
街から脱出する成子と入莉を見送り、柊のために残ると決めたミカの心情も自然で、そこから続いていく展開も圧巻の一言でした。
子供だけが罹患するウイルスという設定もなかなか面白く、これによりウイルスの恐怖だけでなく、『人狩り』と称して子供を襲う大人の設定も光っています。
そしてスカイタワー(でしたっけ? スカイツリーみたいなやつ)から、大切な彼女と共に飛び降りていくエンディング。
元々、9.29対策協議会の中ではミカが一番好きだったこともあり、非常に感情移入させられるシナリオでした。
全ヒロインがこのクラスの内容ならば、90点も夢ではなかったのですが。
【SFとしての「終わる世界とバースデイ」① 先の読める展開、力技の多用】
さて、そんな『ホラーとしての』本作には、やはり不可解な点が幾つもあります。
最大の疑問点は、「選んだヒロインによって、終末の展開が変わる」ことでしょうか。
普通に考えれば和臣が誰を選ぶかで、世界の終わり方が変わるなんてことはありえません。
となると、これは
①予言者カサンドラは和臣に近い存在で、カサンドラの予言どおりに事件が起こる、カサンドラ超能力犯人説か、
②和臣の夢説。「リトルバスターズ」的な感じで、「世界の終わり」=「現実世界への回帰」
という二つの予想が容易に立てられたのですが、 多少の変形はあれど本当に②だとは……さすがにそれはありきたりすぎるのではないでしょうか。
また、「終末ホラーとしての不可解点」を
A カサンドラは未熟だから、下手な予言をしても仕方ないよ
B 入莉は不安定だから、そういう設定にしないとおかしくなっちゃうんだよ
の2点で強引にまとめてしまうのは、少々乱暴に感じました。
確かにこの2点を押し出せば、不可解点は一挙に解消でき、物語に目立つ齟齬はなくなるのですが……。
後はまぁ、成子さんが面倒くさがりでどうしょうもないのはその通りなんですが、
本人が嫌がってるのに無理やり面接練習をさせるどころか、申し込みまでさせるのは正直どうかと思いますし、
冗談とはいえ「社会のダニとは友達になりたくない」という柊の台詞はかなり不快に感じました。
この手のキャラいじりはたまにエロゲでも見かけますが、面白いですかねぇ……。
自分がナルの立場だったら、友達作りに絶望して更にネトゲの世界に引きこもっちゃいそうですわ……。
【SFとしての「終わる世界とバースデイ」② SF設定で広がる世界】
一方で、10年後の2022年を持ち出したことで、得られたものもあります。
最たるものは、この手の作品では珍しい(と言ってしまいますが、珍しくなかったらすみません)、10年スパンでの物語が展開されたことでしょうか。
後日談の1枚CGのような形ではなしに、高校生だった主人公たちが成長する姿をしっかりと描いてくれる作品は、エロゲではやはり少ないように思います。
この2022年設定によって、成長した成子や柊の姿を見ることができたのは、やはり嬉しかったです。
【SFとしての「終わる世界とバースデイ」③ Happy Barthday】
そして、美しいエピローグ。
更に数年後、ということで主人公は35歳くらいになったのでしょうか。
寂しく街を歩いている一臣のもとに届けられた、失われた少女からの祝福は、非常に心の温まるものでした。
スペルを間違えているあたりがまた、入莉らしさを感じてよかったと思います。
このゲームを最後までプレイして良かった、と心から思えるエピローグでした。
【余談】
ただ、入莉のエピローグ自体はそのまま残してほしいのですが、
選択肢で分岐する形で、バーチャルリアリティで出会った9.29対策協議会の皆と、同窓会のように思い出を語り合うシーンも欲しかったです。
せっかく絆を深め合った仲間たちなのだから、現実に戻っても繋がっていたいなぁと。
個人的にミカがヒロインの中で一番好きだったこともあって、現在のミカももっと見てみたかったです(一人だけ、全く和臣と接点がない……)。
まぁ、バースデイエンドが一番美しいのは間違いないでしょうし、蛇足になってしまうかもしれませんけども。
そんなわけで、細かいところは結構不満もあるのですが、ミカルートの出来の良さと、ラストに心を持っていかれました。
良いゲームでした。