話 120/150 人 115/150 絵 80/100 音 90/100 その他システム 60/100 印象 35/50
合計 500/650 ESにつける点 83~84
合計 500/650 ESにつける点 83~84
【前置き】
本作は、よくある攻略ヒロイン分岐型(共通ルート→個別ヒロインAルート
→個別ヒロインBルート)という形ではなく、
一本道(すみれルート→雛姫ルート→あかりルート)の作品となっております。
また、一言感想でも書きましたように、修正パッチが必須だと思うのですが、私は当てないでやりました。
その結果、100点満点にして3点ほどですが、減点することになりました。
その辺の顛末は後述しますが、私は「当てないでプレイした」ということを念頭に置いてお読みください。
パッチを当てないとどうなるか、というのは【その他注意】の欄で書かせていただきます。
本感想は【すみれルート感想】→【雛姫ルート感想】→【その他注意】→【あかりルート感想】
の順で書かせていただきます。
【すみれルート 評価 A】 テーマ「ぼっち1――歩み寄り方が下手な、孤独な娘――」
のっけから心を鷲掴みにされる、素晴らしいエピソードでした。
エロゲでは「不思議ちゃん」属性を筆頭に、友達の少なそうなヒロインというのはそこそこ見かけるわけですが、
こんなに胸の痛くなるぼっちキャラ、ぼっちシナリオはなかなかありません。
本作のギミック(ネット世界で演じられる「アバター」と、現実生活を送る「人格」の乖離)を存分に生かしている点も素晴らしいですが、何より素晴らしいのはすみれのキャラクター造形です。
本当は友だちが欲しいのにできず、いつも休み時間は「寝たフリ」をしている女の子。
それでいて、大好きなお兄さんとのプリクラについて聞かれるとつい自慢してしまう、そんな脇の甘さというか、感情に素直なところにとても好感が持てました。
そういう「ズルさ」も解るなぁ、と。
ついつい見栄を張ってしまう、それがバレたら更にバッシングされる事ぐらい解っているはずなのに。
普段は仲間に入れないのに、仲間に入れると嬉しさのあまり舞い上がり、調子に乗ってしまうすみれちゃん。
……そういうところも意地悪な人間には、ネタにされ、バカにされてしまうんだよなぁ……。
でも僕はそんなすみれちゃんが大好きです。
折々に挟まれる、「……それができるくらいなら、ぼっちなんてやってない……」という諦観に満ちた言葉。
毎日ログイン前に暗示のように唱える「明るくて、ちょっと天然で、クラスの人気者のモエ」という言葉。
「いつもは少し無愛想なんだけれど、本当に辛い時には支えてくれるような、そんなさりげない優しさを持っている人なの」という台詞からも伝わる、健ちゃんへのひたむきな想い。
終始、ハラハラし、応援しながらすみれを見守るプレイとなりましたが、特にラストのクラスメイトに啖呵を切る
「ぼっちで悪いか……ぼっちだってプリクラくらいするわっ、このボケぇ」
のシーンでは思わず胸が熱くなりました。
自分への悪口は受け流せていたけれど、大好きな人への悪口には我慢できなくなり、飛び出してしまった彼女。
不格好でしまらないところが、またすみれちゃんらしいというか、愛おしいですね。
世界を救うような壮大な物語ではない、それどころか小さな、どこにでもいそうな孤独な少女が勇気を出すだけの物語。
クラスの問題も、悪質ないじめがあるわけでも、強烈ないじめっ子がいるわけでもありません。
ただ、すみれが勇気を出すだけ。
ともすればつまらない物語と思う方もいるかもしれませんが、心から彼女に共感し、好感を抱いた身としては、
壮大な物語に勝るとも劣らない、強烈なカタルシスを味わうことが出来ました。
主人公の健ちゃんの描き込みも見事で、特にキャラクターもののクリアファイルへ言及するくだりなどは、
とてもしんみりとさせられます。
OP曲の「sleeping pretend」(寝たフリ)や、作中に流れるしっとりとしたBGM(「6月の空」、「雨のマージナル」など)もあいまって、心を揺さぶるセンシティブなエピソードになっていると思います。
あかりと、すみれの間にこんなやりとりがあります。
あかり
「当たり前よ。見ず知らずの相手に、名前や……まして、本音なんて見せないわ」
すみれ
「でも親友は……愛想笑いだけで生まれるのだろうか……」
自分への悪口は受け流せていたけれど、大好きな人への悪口には我慢できなくなり、飛び出してしまった彼女。
不格好でしまらないところが、またすみれちゃんらしいというか、愛おしいですね。
世界を救うような壮大な物語ではない、それどころか小さな、どこにでもいそうな孤独な少女が勇気を出すだけの物語。
クラスの問題も、悪質ないじめがあるわけでも、強烈ないじめっ子がいるわけでもありません。
ただ、すみれが勇気を出すだけ。
ともすればつまらない物語と思う方もいるかもしれませんが、心から彼女に共感し、好感を抱いた身としては、
壮大な物語に勝るとも劣らない、強烈なカタルシスを味わうことが出来ました。
主人公の健ちゃんの描き込みも見事で、特にキャラクターもののクリアファイルへ言及するくだりなどは、
とてもしんみりとさせられます。
OP曲の「sleeping pretend」(寝たフリ)や、作中に流れるしっとりとしたBGM(「6月の空」、「雨のマージナル」など)もあいまって、心を揺さぶるセンシティブなエピソードになっていると思います。
あかりと、すみれの間にこんなやりとりがあります。
あかり
「当たり前よ。見ず知らずの相手に、名前や……まして、本音なんて見せないわ」
「うん、もちろん、ウソは良くないわね。私もそう思う。
でもね、今の世の中は、馬鹿正直に生きるのはしんどいのよ……
むしろ、誰もが仮面を被っているの。そして…本当に大切な相手にだけ、素顔を見せるのよ……」
すみれ
「でも親友は……愛想笑いだけで生まれるのだろうか……」
傷つかないよう、傷つけないよう、誰もが仮面を被っている。
そして、本当に大切な相手にだけ素顔を見せるというあかり。
けれど愛想笑いを続けていたら、
素顔を見せたくなるような、素顔を受け止めてもらえるような、「親友」なんてできるものなのだろうか。
もしできないのなら、いつ「仮面」を外せば良いのだろう。
いつ仮面を外せば、「親友」ができるのだろう。
こうした悩みに共鳴できる方には、是非「すみれ」をプレイしてほしいです。
【雛姫ルート 評価 C-】 テーマ「ぼっち2――歩み寄る気もない、孤独な娘――」
すみれルートで高揚した心を一気に冷ましてくれる、箸にも棒にもかからない駄ルートです。
このシナリオは二重の意味で罪深い。
一つは、単純に面白くない事。
もう一つは、ライターが違うためか、『健ちゃん』の人格が豹変していることです。
ストーリーを雛姫視点からまとめてみれば、本ルートがアカン事は一目瞭然です。
・あらすじ
住所も名前も明かさずに、ネトゲをプレイする女子高生の雛姫。
リアルでは誰とも友達になりたくない。
そんな彼女の元に突然、サラリーマン男性がやってくる。
「やぁ、僕はネットで親しくさせてもらってるハンドルネーム『健ちゃん』です。君が悩んでるんじゃないかと思ってやってきたんだ」
嫌だと言っても、毎日つきまとってくる『健ちゃん』。
「自分の家に来て、妹と遊んでくれないか?」という健ちゃんの誘いに、仕方なく彼の家に行った雛姫は、いつしか毎日通うようになる。
休日のたびに雛姫をどこかに無理やり連れだそうとする健ちゃん。
人ごみは嫌だし、暑いのも嫌。ただ、一人で静かにしていたいだけなのに。
でも最近そんな彼に好意を持ち始めた、雛姫なのだった……
まず、設定自体に無理がありますよね。
突然現れたサラリーマン男が、女子高生の元に現れる。
何故か名前も、通う学校も知っている。
100%不審者でしょう。背筋がぞっとします。ホラーですよこれは。
しかも拒絶しても付きまとってくるんですよ? ストーカー以外の何物でもありません。
率直に言ってキモいです。
そんな男が「自分の家に来て、妹と遊んでくれないか?」。絶対行きません。ありえないでしょう。
何をされるかわかったもんじゃありませんよ。
まして、雛姫ちゃんは誰とも友達になりたくないという子です。そんな子が、ホイホイついていくわけがない。
……ついていくんですね。なぜか。
僕が雛姫なら警察に相談に行きますし、そのネトゲもやめますけどね……。
で、健ちゃんは調子に乗って、嫌がる雛姫を誘って外に遊びに行きまくるんです。
……ウザいことこの上ないです。押しに弱い娘というのはいるとは思いますが、いくらなんでも変質者、不審者に迫られて喜ぶ娘はまずいないんじゃないかなぁ。
あのさ、本当に迷惑だからやめろよ……と終始苛々しながら読んでいました。
友達がいない子にだって、友達を選ぶ権利ぐらいあるんですよ!
さすがにストーカーと友達になるなら、ぼっちの方がいいと僕は思います。
雛姫は友だちなんていらないって言ってるんだから、放っておいてやれよと。
もう一つ気に入らないのは、すみれルートとの整合性がまるで取れていない事です。
健ちゃんという男は、基本、慎重で「相手の反応を気にする」人間だったはずです。
だからすみれを相手に、「下手に干渉しないようにしよう」などと言ってしまう。
それに、人ごみも嫌いです。「プール? 面倒くさいなぁ」。それが彼という男だったはずでしょう?
ルート営業ではお得意様にカラオケや飲みに誘われるのが嫌で嫌で仕方がない。
そんな、やる気のない臆病な健ちゃんが、(少々やる気なさすぎだろと思わなくはないものの)僕は好きでした。
……で、雛姫ルートの健ちゃん。
雛姫を無理やり遊びに連れて行く健ちゃんは、「無理やりカラオケや飲みに誘ってくるお得意様」とどう違うんでしょう?
自分がやられて嫌な事を他人にするなよという以前に、完全に別人です。
そんな、空気を読む気のない無神経男である健ちゃんに、何故か惹かれてしまう雛姫も含めて、
このルートのキャラクター達には、すみれルートで印象深かった、繊細な心の機微というものがありません。
非常に説得力が薄い。
整合性を整えることなく、ただ、雛姫と健ちゃんが仲良くなってもらわないと困るという作者の都合だけを
ゴリ押しした結果生まれた、説得力のカケラもない駄シナリオ。
それが2章、雛姫ルートということになります。
言っても仕方ない事ですが、このルートも片岡ともさんに書いてほしかったです。
ともさんなら、もう少し自然な流れでルートを作れたんじゃないでしょうか?
あるいは仮にダメダメでも、ともさん単独ライターなら
「あんなに面白い1章を書いてくれたんだから」とまだ許せた気がします。
完全に足を引っ張っている複数ライターというのは、泣くに泣けません。
……しかし、説得力のある展開で、雛姫と健ちゃんが仲良くなるにはどうすればいいんだろうと考えると、
これがまた難しい。
例えば雛姫が暴漢に刺されそうになるのを健ちゃんが助けるとか、
車に惹かれそうになるのを助けるとか、まぁこの辺りもありきたりですけど、
何かそういう大きな事件でもない事には、難しいんじゃないかなぁ。
接点が全くない上に、お互い「人間関係に臆病」な同士でしょ?
すみれみたいに、「親が結婚して義理の兄妹になる」ぐらいの事件がないと、やっぱり無理だと思います。
普通のエロゲなら、「雛姫ルートは作らなければ良かったのに」と言っちゃうところですが、
一本道形式のこのゲームだと、そうも言ってられませんし……。
【その他注意】
ここでいったんシナリオ感想から外れ、不具合の話をします。
本作は修正パッチが必須ですが、私は当てないでプレイしました。
その結果どうなるかと言いますと……
まず、ものすっごい大量の誤字脱字が現れます。最終ルートだけで40か所ほど。
作品全体では80ぐらいはあったかな。
15時間弱ぐらいの作品なので、10分プレイすれば1つは誤字がある感じです。
基本的に、文庫小説などでは100ページに1つあるかないかぐらいだと思うのですが、
1ページ=1分で単純計算すれば10倍の量の誤字がある事になります。
次に、音声がおかしくなります。
すみれの声が遅れて聞こえてきたり、なぜかパートボイスになったりします。
例:
すみれ「え、どうして?」(音声:無音)
健ちゃん「さあな、わからん…」(音声:すみれ「え、どうして?」)
すみれ「もしかして、そこまで重病なのじゃ…」(音声:無音)
健ちゃん「いや、あまりそうは見えない」(音声:すみれ「もしかして、そこまで重病なのじゃ……」)
お前は腹話術士か!とツッコミたくなること請け合いです。
あかりの立ち絵が、私服からパジャマへ早変わりするシーンも一か所ありました。
もちろん着替えシーンとかじゃないです。普通に話していたのに、クリックしたら突然パジャマの立ち絵に変わり、もう1クリックしたら私服に戻るという……。
他にもあります。
台詞ウィンドウ(喋っているキャラクターの名前が表示されるウィンドウ)も挙動が怪しいです。
多恵の台詞なのですが、台詞ウィンドウには「多恵弟」という名前が出ているのです。
実は多恵は一人二役で、『あかり』と『弟』の二人が動かしているのですが、主人公はそれを知りません。
しかし、その事実を知る前から台詞ウィンドウに「多恵弟」と表示されてしまっているのです。
(この男は何者なのだろう。まさか多恵なのだろうか)
とか
「お前は誰だ? 多恵じゃないよな?」という台詞を読まされても白けるだけです。
「僕は、貴方が多恵と呼ぶ人物の弟です」という台詞が出るまでは、台詞ウィンドウに多恵弟なんて書かないでください。
それからバックログなんですが、主人公の台詞の部分が『健ちゃん』と書いてある時と『主人公』と書いてある時があります。こういうのも、統一してほしいなぁと思います。
修正パッチを出したのだから、あまりグチグチ言うのもあれなんですが、いくらなんでも手抜きすぎでしょう。お前は腹話術士か!とツッコミたくなること請け合いです。
あかりの立ち絵が、私服からパジャマへ早変わりするシーンも一か所ありました。
もちろん着替えシーンとかじゃないです。普通に話していたのに、クリックしたら突然パジャマの立ち絵に変わり、もう1クリックしたら私服に戻るという……。
他にもあります。
台詞ウィンドウ(喋っているキャラクターの名前が表示されるウィンドウ)も挙動が怪しいです。
多恵の台詞なのですが、台詞ウィンドウには「多恵弟」という名前が出ているのです。
実は多恵は一人二役で、『あかり』と『弟』の二人が動かしているのですが、主人公はそれを知りません。
しかし、その事実を知る前から台詞ウィンドウに「多恵弟」と表示されてしまっているのです。
(この男は何者なのだろう。まさか多恵なのだろうか)
とか
「お前は誰だ? 多恵じゃないよな?」という台詞を読まされても白けるだけです。
「僕は、貴方が多恵と呼ぶ人物の弟です」という台詞が出るまでは、台詞ウィンドウに多恵弟なんて書かないでください。
それからバックログなんですが、主人公の台詞の部分が『健ちゃん』と書いてある時と『主人公』と書いてある時があります。こういうのも、統一してほしいなぁと思います。
発売前に、確認はしなかったのでしょうか。
自分で確認もしていないようなテキストを、そのまま読者に届けることに、ためらいはなかったのかしら。
僕は、この「すみれ」という作品が好きです。
特に一章は最高に良かったし、三章だって結構好きです。
それだけに、「手抜き・やっつけ仕事」を強く感じさせるような欠点は正直残念に思いました。
修正パッチを当てれば良い。そうかもしれません。
ですが、中には私の知人のように、ネット環境がないところでエロゲをやっているような人も未だにいるのです。
もちろん、頑張ってデバッグしたつもりでも、発売後に出てくる不具合というのはあるでしょう。
そういうものを、修正パッチの形でリリースするのは解ります。
しかし、本作のように「一度読めば、ぼろぼろと大量に見つかるこの誤字の山」。
ろくに推敲すらしていないことが丸わかりじゃないですか。
推敲しないでこの質のテキストが書けるというのはある意味羨ましいものがありますが、それにしたって酷い。
というわけで、ネタバレ感想のここで言っても未プレイの方はいないかもしれませんが、
もしいましたら皆さんは是非ちゃんと修正パッチを当ててからプレイしてください。
せっかくいい作品なんですから、誤字などに惑わされず、集中して楽しんでいただきたいと思います。
【その他2】
誤字関係ではないミスで気になった事も2つありました。まぁ、作品を楽しむ上ではどうでもいい話なんですが。
1つ目、主人公は『23歳』ということになっていましたが、『二浪』して『社会人二年目』なので、大学を中退していない限りは25歳ぐらいのはずではないでしょうか。
2つ目、このゲームは2015年が舞台ということになっているのですが、すみれちゃんの住所が
「横浜市緑区つつじが丘」になっています。
しかし実際には1994年に緑区が改編され、つつじが丘は現在では
「横浜市青葉区つつじが丘」になりました。
だからなに?という話でもあるんですが、2つ目に関しては既に20年以上前に変わった地名なので、調べてほしかったです。
以上、不具合についてでした。
それでは再びシナリオ感想の続きに移りたいと思います。
☆あかりルート 評価 A- テーマ「不登校・ひきこもり――仮病がやめられなくなった、女の子――」
THE・過去編。
『謎に包まれた多恵の正体』や、『広大なネットの世界で知り合ったにしては、世間が狭い』などの疑問点に丁寧に答え整合性を守りながら、「ぼっち」とはまた別の「引きこもり」にスポットを当てたシナリオです。
辛い事から目を背け、逃げたあかり。
最初は単なる仮病。
せいぜいひと夏の仮病にすぎなかったはずなのに、気がつけば9年(かな?)も仮病を続ける羽目になったあかりのエピソードには、すみれルートとはまた別の形で共感させられました
(健ちゃんに薬を飲ませたのは、子供とはいえやりすぎだけどな)。
病院内ということなので、自宅での引きこもりとはまた違うかもしれませんが、不登校や引きこもりというのは
恐らくちょっとしたきっかけで、生まれてしまうことが多いものなのだと思います。
学校で嫌なことがあった、今日はサボりたい。
そんな経験は、誰しも1度ぐらいはあるのではないでしょうか。
そして、サボってしまう。これもよくあることだと思います。体温計をシーツで擦ったりしてw
38度を超えると病院に行かされるかもだから、37.5度ぐらいになるように調整した記憶が僕にはあります。
で、一日サボる。すると翌日には、「行きたくなさ」に拍車がかかったりします。
僕なんかは凄く人の眼を気にする人間だったので、
「あー、あいつ昨日休んでたのに今日来たのか。あいつは休みのままの方が良かったのに、なんで来たんだよ」的なことを誰かが思っていないだろうか、なんて思ってしまう。
あーーー、行きたくない。
まぁ実際には杞憂なんですが(少なくとも、「お前なんで来たの?」と面と向かって言われた経験はありませんが)、そういう葛藤があったりして、もう1日休んでしまう。
ズル休みが3日も過ぎるとますます行きたくなくなってしまう。
僕の場合は、土日をまたげば「土日で治ったんだよーいやー大変だったー」みたいな事を言えるかな? みたいなどうでもいいことを考えて月曜には復帰できたんですが、これをやりすぎるともうそのまま学校に行かれなくなってしまうだろうなという予感がしたのを覚えています。
実際に、学校に来なくなってしまったクラスメイトもいました。
なぜ彼が来なくなったのかはわかりません。ひょっとしたら、単に家で遊んでるのが楽しくてサボってただけかもしれない。
ですが、彼が学校に来なくなってから1か月もすると、「彼が来ないのが当たり前」のようになりました。
彼がごくまれに学校に姿を現すと、「お、珍しい奴がいるな」という空気が流れました。
彼は別にいじめられていたわけではないと思います。それどころか、学校に来れば周囲の人と話もしていました。僕も仲良く話した思い出があります。
しかし一方で、「彼が来ないのが当たり前」の空気を、彼は感じていなかったのか?
もし僕が彼の立場なら、あぁいう空気が流れてしまったら、学校に来るだけでレアキャラ扱いをされたら……
学校にはもう、行かれなくなってしまうかもしれません。
作品内の言葉で言うならば、彼が1か月来なかった結果、学校は彼の「居場所」ではなくなってしまったのです。
あかりルートをプレイしながら、僕はそんな学生時代の事を思い出しました。
すみれルートや他作品の「ナルキッソス」などで、「弱者」に対して真摯な眼を向けてきた片岡ともさんらしい、
キャラクターの心情に心を配った丁寧なストーリー、テキストだと思います。
ルート全体の事を言うなら、これは基本的にはファンタジーですよね。
あかりから見たファンタジーであり、あかりの見続けている夢。
ただ、視点人物が健ちゃんっぽいのが、実はちょっとよくわかりませんでした。
あかり視点なら、確実にそうだと言い切れたんですが……。
まぁ、「長い間眠り続けていたあかりが、健ちゃんのサポートがあって起きられるようになった」
というストーリーラインがやれればそれで良かったのかな、と思っています。
選択肢によっては、再び「眠り姫」に戻ってしまうというのもそういう事なのだろうと。
この辺りは「みずいろ」の日和シナリオと被せてきたところがありますよね。
健ちゃんのサポートで、日和(あかり)が起きる。
名前も日和とあかりで、どちらも陽光をイメージさせる名前ですし(←こじつけ)。
紫色のすみれの花言葉は、「貞節」、「愛」の他に『白昼夢』というものもあるそうです。
あかりシナリオのファンタジーは、つまるところあかりの見ていた白昼夢なのではないかと思いました。