前置き
冒険というフレーズに、心を躍らせた時期があった。
ゲーム世代な事もあり、それは多分に「ドラゴンクエスト」的な色彩を帯びていた。
勇者になって魔王(悪)を倒したい、なんて思った事は実は一度もなかったけれど、
大きな事を、心が通い合う大切な仲間たちと共に成し遂げる。
「仲間たちとの絆」に憧れただけ、ではない。
この作品にはそんな「信頼できる仲間」なんていなかった気がするけど、何とも怪しげで何ともチャーミングな
シルバー船長と共に過ごす航海はやはり胸躍るものだった。
しかし、人間主体の「冒険」モノには存外、惹かれた作品が少ない。
冒険心をくすぐられた作品はむしろ、こういったファンタジーの方に多かったようだ。
僕には向かなかった『冒険小説』
時は流れ、『冒険小説』というジャンルがある事を僕は知った。
しかし、最初に手に取った作品が悪かったのだろう。
あるいは、僕の期待が間違っていたのだろう。
僕が最初に手に取ったのは、アリステア・マクリーン
だった。
これは、絶望的な状況の中、最後まで屈せずに敵と戦い続ける男たちの、血と、涙と、汗と、絆を高らかに謳い上げた作品……だと思う。
日本人にもファンが多く、
で堂々の『第1位』に輝いた作品だ。
しかし……僕の心には「しんどいなぁ……」という気分しか残らなかった。
しんどい、のだ。楽しくない、のだ。ワクワクしない、のだ。
これはその後も続いた。
ファンの方を怒らせたくないのであまり触れないが、↑のベスト100は6割近く読んでいます。
ソモソモ論として、船で大災害に遭ったり、軍用機で敵とバトルしたり、カーチェイスしたり、
僕の憧れはそういう方向には向いてないんだよね……。
「黄土の奔流」が思い出させてくれた冒険心
そんな鬱屈を吹き飛ばしてくれる作品に、ようやく出会えた。
生島治郎「黄土の奔流」だ。
時は大正時代末期。
満州(上海)で会社を潰してしまった主人公は、お宝『豚の毛』を求め、
揚子江を遡り重慶へと向かう。
行く手には、土匪、軍閥らが跳梁跋扈する無法地帯が待っている。
主人公と旅路を共にするのは、
曰くありげな悪友、葉村(「宝島」のシルバー船長的な曲者)やバリバリ国粋主義者の九州男児、
レモン大好きな純真少年などの個性派揃い。
そしてその中でも出色なのは、殺伐とした空気の中で、一人マスコットとして物語を和ませてくれる飯桶(ウェイドン)。
この男、主人(主人公)が破産しようが何しようが、とにかく主人を車に乗せて人力車を担いでいれば幸せ!という何ともニクい奴なのだ。
正直言って、足りない奴だ。足りない奴だが、実にいい奴なのだ。
そんな飯桶に春が来たエピソードでは本当にほっこりしてしまった。
道中には美人女匪賊との出会いアリ、涙の別れアリ、次々と失われていく命あり。
それでいて過剰にしんみりとせず、さりとてしっかりと心に余韻を残す。
僕の求める冒険物語がそこにあった。
日本にありがちな『せちがらく、湿った』雰囲気もなく、エネルギッシュでカラっとしているのは
中国大陸を題材に取っているからだろうか?
それでいて、『ワビ・サビ』はきちんと感じられ、最後には『生きる元気』を与えてくれる。
この作品を読んだ後、もう1つ『ワクワク冒険』作品に出会う事ができた。
こちらはブラジルを舞台に日本人主人公が冒険する物語。
どうも、「異国の地」を舞台に「日本人」が活躍する作品に、当たりが多いのかもしれない。
僕が冒険小説に(もっと言うなら、創作全般に)求めているのは、
『ここではない場所』への『逃避』かもしれない。
現実世界で「冒険」と言えば、『今まで接点のなかったイベントに参加してみる』とか
(こないだ、人生初ヨガを経験してきました! 楽しかった。またやりたい!)、
『心理的ハードルが高い店に入ってみる』とか、
『賭博・ギャンブル・株・転職・起業・プロポーズ』(最後の方は別の意味で夢はあるけど)などで、
どうも子供心のワクワク大冒険とは違う。
そういう類の冒険ではなく、夢のような大冒険をしたい。
そんな事を思ったのでした。
余談
なお、記事にはまとめられなかったけれど、この『冒険』作品は面白かったです。
とってもチャーミングなゴリラ(メス)と二人でアフリカの秘境を冒険するの。
お薦めです!
やっぱり『異世界』とか『秘境』がいいなw
余談2
本は読んでいるんですが、本の感想をまとめる気力がなく、長文感想は凄く久しぶりになります。
やはり、感想をまとめるだけでもエネルギーがいるんですね。
久しぶりの感想なので、感覚が少し変な気がします。