はじめに

SFマガジン選出のオールタイムベストを片っ端から読む、『SF祭り』を去年11月から開催しているfeeですが、このオールタイムベスト表、どうにも読みづらい作品が多い。

タイミング良く、風竜胆氏が「ブラインドサイト」の感想で書かれていたが、
https://shimirubon.jp/reviews/1703779

まぁなんというか、『読者がSF脳でないと、何が起こってるんだかワカラン』な作品が多いのだ(ちなみに、feeは「ブラインドサイト」は未読です)。
SFの歴史に詳しくないので、テキトーな事を書くけれど、これは80年代のウィリアム・ギブソンの「ニューロマンサー」あたりから始まっているような気がする。
また、科学技術がなまじ進んでしまったばかりに、最近のSFには珍妙な宇宙人が出てきづらいのも、個人的には寂しいところだ。
地球人が宇宙に植民するような話は結構あるのだが、もっとこう
フレドリック・ブラウン「火星人ゴーホーム」に出てくる、ヘンテコなタコ型宇宙人とか、そういう作品が少ない。

翻って、昔のSFはもっと自由奔放である。
ぼくの愛するレイ・ブラッドベリは、『リアリティ的にはどうなの?』とも思うが、情景の美しさとロマンの香りは最高だし、
クリフォード・シマックやアイザック・アシモフなど、どうも僕の肌に合うSF作家は昔の作家が多い。
最近の……と考えてもオーソン・スコット・カードになってしまう(80年代に活躍)のだから、これは重症だ。
他にはマイクル・クライトンや、ジョー・ウォルトンあたりか……。

2/21時点でSF祭りは残り4作を残すのみなのだが、日本のSFに関しても余り状況は変わらない。

アニメ・ゲームの世界では「シュタインズ・ゲート」を筆頭に、「魔法少女まどか★マギカ」、「新世紀エヴァンゲリオン」はもちろんのこと、
歴史改変SFギャルゲー(というか、単に過去世界に行って主人公が無双するだけと言えなくもないが)「忠臣蔵46+1」だとか、「蒼の彼方のフォーリズム」など、たくさんの楽しい作品が生まれているのに、
こと『小説』に限って言うと、私の狭いアンテナに引っかかるのはどうも小難しく、難解で、ギミックに頼ってドラマの少ない、小理屈バリバリの作品が多いような……気がする。そうじゃなかったらごめんなさい!
DОIが無知なだけです!

「光の塔」の感想

というわけで、いつも通り前置きが長くなったが、「光の塔」の感想に入る。
作者は今日泊阿蘭氏。1960年代に書かれた古典SFである。

1950~60年代のSFは、キューバ危機に代表される「核の危機」の真っただ中。「世界崩壊」系のSFが流行った時期で、滅びの美学に酔いしれるfeeとしてはSF的には豊作期間である。

渚にて -人類最後の日-

渚にて -人類最後の日-著者: ネビル・シュート 井上 勇

出版社:東京創元社

発行年:1999

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マレヴィル

マレヴィル著者: 三輪 秀彦/Merle Robert

出版社:早川書房

発行年:1978

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また、日本においては戦争を体験した作家も多い事から、焼け跡からの復興を思わせる作品も多い。

日本アパッチ族

日本アパッチ族著者: 小松 左京

出版社:角川春樹事務所

発行年:2012

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本書もまた、そうした系譜の作品である。

物語の舞台は恐らく2010年頃の東京。
そこに謎の光(ufo的な)が現れ、街を灰燼と化していく。
正体不明かつ、コミュニケーション無用の理不尽な殺戮はまるで、『エヴァンゲリオン』のシトを彷彿とさせるが、その正体はなんと31世紀からやってきた日本人たちであった。

未来から過去への攻撃というガジェットからは、「クロノリス」


を連想したが、「光の塔」の方が断然古い。

本書には火星人も登場するし、遠い未来からやってきた自分の祖先との邂逅もあり、『小難しい』ものではなく、純粋に『ワクワクさせてくれる』SFとして、とても楽しめた一作だった。

31世紀人というスケールは、

永遠の終り

永遠の終り著者: アイザック・アシモフ

出版社:早川書房

発行年:1977

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タイムマシン

タイムマシン著者: 池 央耿/ウェルズ

出版社:光文社

発行年:2012

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時間スケールこそこれらには及ばないかもしれないが、『想像もつかない未来』という意味では十分以上に楽しめる。

書かれた時代が1960年代、且つ、解説の野田氏に『ナウとは言いかねる』(この表現自体がナウとは言いかねるww)と評されているとおり、
人類が火星や木星に飛び立っているにも関わらず、主人公の奥さん(事実婚)の名前が『イネ』さんだったり、昔よく見た、謎のカタカナが混じる
文体
(きッと、〇〇だナ、〇〇だョなど)などなど、明かな昭和臭を感じさせるが、それがまた一周回って良い味を出している。

SFはやっぱりいいなぁ、と思わせてくれる一作だった。

余談

1『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム
2『ディアスポラ』グレッグ・イーガン
3『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン  
4『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター
5『幼年期の終り』アーサー・C・クラーク
6『万物理論』グレッグ・イーガン
7『地球の長い午後』ブライアン・W・オールディス  
8『新しい太陽の書』ジーン・ウルフ
9『夏への扉』ロバート・A・ハインライン
10『ハイペリオン』 ダン・シモンズ 

2014年のSFマガジンベスト10。
好きな作品が10位の「ハイペリオン」しかないんだけど……。
(「新しい太陽の書」以外は既読)

てか、2位の「ディアスポラ」、3位の「ニューロマンサー」、6位の「万物理論」とか、ガチのSFマニア以外で楽しめるんか……?
「地球の長い午後」や「虎よ、虎よ」(虎よ、虎よは結構好き)だって読みやすいとは言いづらい代物だし、どうなってるねん。

ちなみにぼくの海外SFベスト10はこちらです(順不同)

1死者の代弁者/オーソン・スコット・カード
2火星年代記/レイ・ブラッドベリ
3アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス
4天の光はすべて星/フレドリック・ブラウン
5精神寄生体/コリン・ウィルスン
6われはロボット/アイザック・アシモフ
7キリンヤガ/マイク・レズニック
8ジュラシックパーク/マイクル・クライトン
9都市/クリフォード・シマック
10 1984年/ジョージ・オーウェル
次点 タイムマシン/ウェルズ 恋人たち/フィリップ・ホセ・ファーマーなど

ふっる!!
ほとんど、ぼくが生まれる前に書かれた作品じゃん……