☆ ブラジル代表  3勝1分1敗 8得点3失点

  攻撃 S 守備 S 面白さ S
  個人的MVP FWヴィニシウス(ブラジル)

これ以上、完璧なブラジルは見たことがない
ネイマールが悪目立ちせず、トップ下で攻撃陣を操縦。
両翼のヴィニシウス、ラフィーニャ、最前線のリシャルリソンのカルテットが織りなす美しいサッカーは、サッカー王国の復活を予感させた。
長らく失われてきた「美しいブラジル」を現代に復活させたチッチ監督の手腕も大きい。

私がワールドカップを見始めたのは1994年からだが、その前の1990年も含め、「美しいブラジル」など一度も見たことがない
(1998年は多忙だったため、あまり観れなかったのだが)。
2002年の3Rは前線の3人に全てを託すようなチームだったし、2006年も似たようなものだ。
2010年代に入るとFWにタレントを欠き、ルイス・ファビアーノやフッキといった2線級がCFを務めた大会が続いた。

しかし、長き時を経て、見るものを虜にする「美しいサッカー」をチッチ監督は復活させた。
最前線からの即時奪還、『攻撃し続ければ、失点もしない』という大原則は
セルビア戦、スイス戦2試合あわせて枠内シュート0本に抑える堅守という形でも現れた。
主力を休ませたカメルーン戦は参考にならず、韓国戦は枠内シュートを6本も打たれるなど、韓国の素晴らしい挑戦が光ったが、試合自体は4-1と余裕の快勝。


そして最後のクロアチア戦も、120分を通して枠内に許したシュートはわずか1本だった。

この敗戦は、事故のようなものだ。
老練なクロアチアの戦いぶりにはシビれたが、敗北が決まった今ですら、こう思う
2022年の最強チームは、ブラジル代表だった、と。




☆ オランダ代表 3勝2分 10得点4失点

  攻撃 B+ 守備 A₋ 面白さ B₋
  個人的MVP コディ・ガクポ


くじ運に恵まれたオランダは、大会前からベスト8がノルマと言われていた。
そして、その通りのベスト8敗退ということで、ある意味予想どおりの結果に終わったと言える。

今大会のオランダ攻撃陣は小粒で、エースがデパイという時点で優勝候補とは到底言えないわけだが、
2列目にも最前線にも対応する、新星ガクポの得点力はチームを助けた。
最終ラインのファン・ダイクはさすがの存在感を発揮したが、
ビッグネームではフレンキー・デ・ヨングは今大会も黒子に徹し、ドゥムフリースは波が激しかった。

「美しく勝つ」オランダは今大会も封印され、もはや過去の遺物。
オールドファンの記憶の中にしか既に存在しない代物となりつつある。
ただしこのタレント力で、手堅く勝つファン・ハール監督の手腕は健在で
戦術面で相手を完全にハメたアメリカ戦、
5バックから4バックへ移行し、戦術戦では明らかに優位に立っていたアルゼンチン戦と、
好き嫌いはともかくとして、さすがの名将ぶりを見せてくれた。


☆ポルトガル代表 3勝2敗 12得点6失点
 攻撃 A 守備 B+ 面白さ A₋
個人的MVP MF ブルーノ・フェルナンデス


大会前はノーマークだったポルトガルだが、予想していた以上には面白いチームだった。
フェルナンド・サントス監督を侮っていたとも言える。

ベルナルド・シルバこそ黒子に徹していたが、柔のジョアン・フェリックス、剛のブルーノ・フェルナンデスがチャンスメイクとフィニッシュに精力的に絡み、小気味良い連携を実現していた。
そして、最前線にはいるだけで怖いクリスチアーノ・ロナウドや、スイス戦で突如ブレイクしたゴンサロ・ラモスが現れた。
中盤に攻撃的な駒を並べた反動か、サイドバックのオーバーラップは自重気味ではあったが、そこでバランスを取り、サントス監督は攻撃的なタレントを多くそろえながらも、大崩れしないチームを作り上げた。

残念だったのはやはりクリスチアーノ・ロナウド、もしくはそのパートナーだ。
代表の勝利よりも、自らのエゴを最優先するこのスーパースターは、所属していたマンUと同じく、
ベンチスタートに不満を漏らし、チームの空気を悪くしてしまった。
ウルグアイ戦でのブルーノ・フェルナンデスのゴールを、手柄を横取りするかのように喜んだシーンも含め、正直見苦しさを感じた。
このような振る舞いをしている限り、彼を獲得するビッグクラブは現れないだろう。


イングランド代表 3勝1分1敗 13得点4失点
 攻撃 A₋ 守備 A+ 面白さ B₋
個人的MVP FW ブカヨ・サカ


サウスゲイト監督のイングランド代表は、今大会も低重心でしっかり守備を固め、
両翼のスピードを活かしたカウンターサッカー。
マグワイアを中心としたセットプレイも非常に強く、大きな穴のないチームを大会に送り出してきた。
特筆すべきは若手の多さで、フォデン、サカ、べリンガム、マウントと20代前半の選手を攻撃陣に多く抱えていた。
その走力でサイドからカット・インし、多くの選手が複数ゴールを決めて見せた。
ケインばかりがクローズアップされがちだが、MVPには黒子に徹してアシストを量産したケイン、
サカ、ラッシュフォード、中盤の軸であるべリンガムなど、誰にするか迷ったほどだ。

ただし、個人的にイングランド代表のリスクを取らないサッカーは正直見ていて面白くはない。
こればかりは好みの問題になってしまうが、列強国の中で一番つまらないのがイングランド代表で、
これは20年前のエリクソン監督からカペッロ監督に続き、今のサウスゲイト監督まで受け継がれている。
敢えてリスクを取る必要がないのかもしれないが、小国ならまだしも、強豪国なのだから強豪に相応しい戦いを見せてほしい、と思ってしまう。

プレミアリーグは世界一エキサイティングなリーグで、
個人的にはここ数年のマンC、リバプール。
去年あたりからのアーセナル、ブライトンのサッカーは見ていてワクワクするのだが、イングランド代表にはそれがない。

どうもネットを見ていると、
「プレミアリーグファン=イングランド代表ファン」
「スペインリーグファン=スペイン代表ファン」な人が多いようだけども、
何故そうなるのか僕には正直よくわからない。
(バイエルンファン=ドイツ代表ファン、はわかる気がする)

プレミアリーグの2強(マンC、リバプールでも、マンC、アーセナルでも良い)が表現しているような美しさは、この代表にはないからだ。