76点。
この作品からは『演劇』に対する『憎悪』は伝わってきても、愛は全く伝わってこないけど、
本当にこれでいいんですか?
この作品からは『演劇』に対する『憎悪』は伝わってきても、愛は全く伝わってこないけど、
本当にこれでいいんですか?
☆総評1
ざっくり書いてしまうと、「紙の上の魔法使い」よりはマシだったけど、胸糞悪い作品だったなぁ、と。
(かみまほは、メインヒロインが胸糞というのがしんどすぎた)
親ガチャ×5→全ハズレは幾ら何でも酷い……。
瀬和兄妹・奈々菜、めぐり(祖父)、朧と5人も親ガチャに失敗していて、まともな親は出てこない。
主要人物11人中5人がクソ親にぶつかるのって、話の展開としてもワンパターンだし、それ以前に胸糞だし……。
芸術活動に伴う負の側面については、瀬戸口廉也の「キラ☆キラ」、「Musicus」や
又吉直樹の小説「火花」などが思い浮かびますけど、これらの作品には音楽への愛や、お笑いへの愛もしっかり詰まっていたように思います。
ですが、本作からは「演劇の楽しさ」、「演劇への愛」は微塵も感じることができなかったのが、一番残念だった部分です。
「劇団ランビリス」は居心地の良いホーム?
演劇のために、プライベートを侵害されて意図的にゴシップ新聞をばら撒かれたり、演劇のために失恋させられたりするような劇団が、ですか?
本気のプロ志望ですらこんな劇団は嫌なのに、『究極の自己満足』のために役者を痛めつける劇団……
僕は、この劇団で役者はやりたくないですねぇ。
皆さん、マゾなんでしょうか……??
そもそもがクソ親による悲惨な児童虐待物語なんですから、そこから外れたランビリスぐらい、
楽しく真剣に、けれども胸糞抜きで演劇をやっても良かったと思うんですけどね。
全編に言えることですが、『才能があるかどうか』に関係なく
『個人の意思』を優先させるのが当然だと思うんですが、どうですか?
まぁ毒親連中はお話にならないので仕方ありませんが、
本来同格であるはずの座長(天樂来々)とか兄(瀬和環)に、
「お前には才能があるんだから、才能を活かせ!」と言って役者を痛めつける権利はないと思うのですが……。
☆ 天使奈々菜
魔性の女っていう設定だったけど、魔性の女はむしろ匂宮めぐりの方に感じました。
要はめぐりが男心をくすぐる系の魅力的ヒロインだったって事が言いたいんですけど、
それはイコール、奈々菜に魔性の女っぽさが全然出ていないという事で、こちらはマイナス。
かわいくてダメダメな、『環くんにとっての理想の妹』。
奈々菜ちゃんは別に嫌いじゃないですが(というか本作のヒロインに嫌いなキャラはいませんが)、
美少女だらけのギャルゲー界では、『かわいいだけでは、魅力にはならない』のです……。
あと、娘を騙して枕営業(っつーかレイプっつーか)させようとする親を許せるのって凄いなと思うのですが、
これって『虚構世界』で起きた出来事で合っていますか?
ラストで『虚構世界での母親の姿を知っているから騙されたくはないけれど、現実の母は踏みとどまってくれた』的な言及があるのでそう思ったんですが、
それじゃ『現実界の母』は奈々菜ちゃんに何か悪い事をしたんでしょうか?
現実と虚構が入り乱れているので、僕の読解ミス(胸糞作品なので、じっくり吟味することなく読み飛ばしてしまった部分はある)の可能性はありますが、よくわかりませんでした。
☆ 箱鳥理世
未来以外の全ヒロインはエンディングロールすらもらえないのですが、
理世に至ってはTHE ENDすらもらえない。
嗚呼、何と不憫な娘なのでせう。
☆ 匂宮めぐり
皆さんの感想を見ていると、個別ルートはいらなかった派の方が多いようですが……
これがトゥルーでいいよ俺は!!
残酷な現実よりも、幸福な夢に逃げようぜ!
めぐりちゃんかわいいし、この先やらなくても良くね? ここで終わりにしようよ!
めぐりちゃんかわいいよっ!
って思いました。
「真実にかすりもしないけど、登場人物たちはそれなりに幸福に暮らしました」エンドは、
この手のゲームでは基本、どうでもいいルート(Hシーン回収ルートと名付けても良い)扱いで、
実際このゲームでもそういう扱いではあるのですが。
メインのルート(現実)があまりにも胸糞なので、むしろ現実から目をそらして虚構に生きればいいのにと思ってしまいました。
☆ 架橋琥珀
すみません。琥珀さん、(未来を除けば)メインヒロインのはずですよね?
僕の認識が間違っていましたか?
とりあえず、琥珀さんは現実界では何をやっていらした方でしたっけ???
劇団ランビリスの演劇を見て感動した一観客、という事で合っていますか?
個別ルートも奈々菜の二番煎じみたいな『兄妹ごっこ』ルートだし、扱い酷すぎません?
☆ 瀬和未来
瀬和家の母親がクソすぎますし、主人公の瀬和環くんもまぁクソですね。
結局、未来は華々しく自殺しているので、
環くんへの愛よりも憎しみの方が最後には勝っていたような気がしますけど……。
『虚構世界』で折原京子を出す意味もなかったような
……というか、架橋琥珀が瀬和未来の『虚構世界の姿』って事にしても良かった気がするんですけど、それじゃだめですか?
現実世界での架橋琥珀さんの役割があまりにも小さいため、存在意義が薄いですし、
役者さんなのですから多少の変装ぐらいできるはずなので、現実界での姿に拘りすぎる必要もないですし。
あぁ、演技力を誰かに引き渡す必要はあるんでしたっけ……でもそれなら別に朧くんや龍木さんあたりに渡しても良かった気はしますしね
(ゲーム的には都合が悪いでしょうけど、未来的には別に誰に渡しても良かったはずなので)
せっかく妹ではない存在になったのに、姿も妹のままで名前も折原京子だし、
案の定、環君からは強烈に警戒されているし、これで本当に良かったのかなぁ?
中途半端に姿や名前も似せないで、全くの別人として恋人ごっこするルートがあっても良かったんじゃないの?
☆倉科双葉
めぐりの次に好きです。
一服の清涼剤というか、健全なキャラがほとんどいないこの世界で、双葉ちゃんは貴重でした。
なぜ虚構世界に飛ばされたのかはよくわかりませんでしたが。
(環のためにくっついて飛ばされてきたとしか思えないのですが、未来は『招いたのは環だけ』と言っているのが謎)。
☆総評2
文章は下手ではない(現在この業界に残っているエロゲライターの中では巧い方だと思う)ので、
最後までプレイできる作品ではあるんですが、
どうもルクルさんの胸糞さは、僕の好みにはマッチしないという事を再確認した作品でした。
後、「シーシュポスの神話」を未読なのでこんなことを書く資格もないかもしれませんが、
カフカの「変身・審判・城」やカミュの「ペスト・異邦人」、ベケットの「ゴドーを待ちながら」、
セリーヌの「夜の果てへの旅」といった作品を読んだ身としては、
ルクル氏の描く『不条理』って、僕のイメージとちょっとズレてるんですよね。
別に不条理の定義を間違えているとは全く思わないんですが、『不幸・悲劇』の一側面だけがやけに強調されているように感じました。
ついでに言えば作中最大の見せ場である『フィリア公演』は、北欧神話というよりも『オイディプス王』じゃんと思って読みました。
まぁ、匂宮王海先生の遺作なら仕方ないんですが、それが明かされるのは最後の最後ですしね。
オーディン役のめぐりと、ロキ役の琥珀も見て見たかったところですが、
そもそも『現実界』の琥珀は、演劇できるんでしたっけ?
まぁ、作中で全てを説明する必要はありませんし、僕自身の雑な読みも多々あると思いますが、
色々スッキリしない事が多かったですね。
それが作中ではきちんと描かれていて、注意深く読めば読み取れたのか、
ご都合主義でルクル先生がごまかしたのかは、僕にはわかりませんでした。