あらすじから
割とシンプルなストーリー。
3章構成で、主人公は焚書官(消防士 fire man)。本を見つけて焼く仕事。
未来世界は本がなく、ひたすら中身のないテレビを見続けて心を病んでいる人々が多数派。
主人公モンターグの妻ミルドレッドもそんな一人である。
1章では、消防士の仕事を続けるモンターグが、クラリスという一風変わった少女と出会うところから始まる。
クラリスは突拍子もない行動を取り、『均一化された』一般人とは全く違う思考方法を取るのだった。
モンターグは以前から、本に密かに興味を持ち、少しずつ現場から本を盗んでいた。
しかしモンターグが、本に傾倒していくのは恐らくクラリスとの出会い、
そしてある日の仕事で、本と共に焼け死んでいく老婆を目にしてからだと思う。
更に、その際にモンターグは聖書を手に入れる。
2章では、老婆の発言を足掛かりにフェイバー教授と出会う。
フェイバー教授は臆病ながら、現代の風潮に批判的な老人だった。
モンターグはフェイバーに協力を仰ぎ、遠隔で繋がるが、
モンターグは妻やその友だちたちの愚かさにウンザリしてしまい、とうとうキレてしまう。
モンターグの上司はベイティというインテリで、本をそれなりに読んでいながら、焚書官になっている悪役。
様子のおかしいモンターグを疑うように、隊長はモンターグを牽制し、最終的にはモンターグ家に出動するのだった。
3章では、ミルドレッドの通報によりベイティが出動したことを知る。ミルドレッドは去る。
モンターグは自分の家を、そしてミルドレッドとの生活を焼き尽くす。
その後、逮捕しようとするベイティがモンターグを殴り、フェイバーのイヤホンに気づく。
フェイバーを逆探知しようとするベイティをモンターグは焼殺し、逃亡する。
モンターグはフェイバーの家を目指して逃走する。
一度、愚連隊(暴走族)にひかれかける。クラリスを殺したのは彼らではないか、とモンターグは疑う。
「宣戦布告」がなされた事、核戦争が始まった事を知る。
フェイバーの家に無事たどりついたモンターグ。
テレビではモンターグ追跡劇が始まった事を大々的に流している。
匂いを追跡する猟犬が解き放たれる。
フェイバーに衣装を借り、フェイバーに迷惑をかけないようモンターグの匂いをワインでかき消す。
猟犬は迷った末、フェイバーの家には立ち寄らず去った。
モンターグはフェイバーのアドバイス通り河沿いに広がる、使われなくなった廃線路を逃げる。
そこは、思想犯たちが逃げていく道だという。
やがてモンターグは、秘密の集落へとたどりつく。
そこでは、人々が自らを1冊の本として、暗唱できるように訓練するという形で『口承文学』として
本の内容を伝える集落だった。
テレビでは、偽のモンターグが殺されていた。彼を逮捕できないとメンツにかかわるため、無辜の民が殺されたのだった。
やがて、核爆弾が破裂し、都市部は壊滅する。
戦争が終わった後、本が必要になるかもしれないという希望を基に、集落でモンターグたちは生き続ける。
感想
スマホをずっといじり続けている人々、緊迫する国際情勢に国民が無関心になるようくだらない番組を流し続けるテレビ、本を焼くことで「考える力や共感力」を失う人々の姿がよく描かれているSFで、古典ともいえる。
ひっきりなしにそこら中でCMを流し続ける姿も現代を予見している。
ブラッドベリにはおなじみの焚書をテーマに描いた長編。
(「火星年代記:第二のアッシャー邸」をはじめ、「アッシャー邸」ものは別短編にも登場。こちらも焚書に抵抗する話である)
ただ、ブラッドベリ的な大らかさもあって、一番気になるのが『放射能』の影響に無頓着な事だったりする。
モンターグたちの秘密の集落は、『都市』から徒歩でせいぜい1日程度の川辺だったはずだが、大丈夫だったのだろうか? そして、生き残った人たちの様子を見に行くエンドだが、これまた大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫ではないw
これは、普段のブラッドベリ・SF(素敵な・不思議)を愛する僕にとっても、
本書は(一応)真面目に書かれたディストピア小説だと思われるので、大きなマイナスポイント。
核の恐怖を描いた作品としてはネビル・シュートの「渚にて」、
メディア操作とディストピアを描いた作品としてはジョージ・オーウェルの「1984年」に劣ると思う。
やはりブラッドベリは「短編の人」なんだろうなぁ、と強く感じた。
感想
スマホをずっといじり続けている人々、緊迫する国際情勢に国民が無関心になるようくだらない番組を流し続けるテレビ、本を焼くことで「考える力や共感力」を失う人々の姿がよく描かれているSFで、古典ともいえる。
ひっきりなしにそこら中でCMを流し続ける姿も現代を予見している。
ブラッドベリにはおなじみの焚書をテーマに描いた長編。
(「火星年代記:第二のアッシャー邸」をはじめ、「アッシャー邸」ものは別短編にも登場。こちらも焚書に抵抗する話である)
ただ、ブラッドベリ的な大らかさもあって、一番気になるのが『放射能』の影響に無頓着な事だったりする。
モンターグたちの秘密の集落は、『都市』から徒歩でせいぜい1日程度の川辺だったはずだが、大丈夫だったのだろうか? そして、生き残った人たちの様子を見に行くエンドだが、これまた大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫ではないw
これは、普段のブラッドベリ・SF(素敵な・不思議)を愛する僕にとっても、
本書は(一応)真面目に書かれたディストピア小説だと思われるので、大きなマイナスポイント。
核の恐怖を描いた作品としてはネビル・シュートの「渚にて」、
メディア操作とディストピアを描いた作品としてはジョージ・オーウェルの「1984年」に劣ると思う。
やはりブラッドベリは「短編の人」なんだろうなぁ、と強く感じた。