「007」と言えば、明らかに映画の方が有名だと思うし、
実際映画の方が面白いというとても珍しいシリーズである。
何故かというと、映画版は(全部見たわけではないが)ギャグ方向に振り切っているのに対し、小説版は多少ギャグタッチを入れつつも立派なアクション小説だからである。
肩の力を抜いて、「そんなバカなw」と笑って読めるアクション小説というのが、小説版007シリーズで、映画版は「そんなバカなw」の部分を増幅してドラえもんの秘密道具のようなアイテムを盛りだくさんに詰め込んでいる部分が面白いのだ。
(小説版には秘密道具は基本、出てきません)。
今回は、まずシリーズ既読全作評価を載せてから、軽く個別に触れたいと思います。
小説版007シリーズ独断と偏見評価(シリーズ順) S~E
「カジノ・ロワイアル」 B
「死ぬのは奴らだ」 C₋
「ムーンレイカー」 D
「ダイヤモンドは永遠に」 D
「ロシアから愛をこめて」 C₋
「ドクター・ノオ」 C
「ゴールド・フィンガー」 B₋
「サンダーボール作戦」 B₋
「わたしを愛したスパイ」 未読
「女王陛下の007」 B₋
「007は二度死ぬ」 C
「黄金銃を持つ男」 D₋
小説版007シリーズの特徴
基本的に1作ごとにボスが登場し、そのボスとボンドがバトルするというのがメインプロットになります。
ボスは、基本的に『最初に会った時は小物』臭がするのに、まるで変身したかの如く最後には世界転覆を狙うような大物になっているのが笑えます。
特に「ゴールドフィンガー」と「サンダーボール作戦」
ちなみにこの2作は書かれた年が近いだけでなく、プロットもそっくりなので、うまくいったプロットを流用したように感じてしまいますが、
まぁ一気読みでもしなければ、気にならないでしょう。
ボスは『やろうとしている事は大物』で『金持ち』なんですが、基本メンタルが雑魚で頭が悪いので、小物臭が漂うのもシリーズ全体の特徴です。
世界転覆と、カジノでのトランプ詐欺を同列にやらかす輩たちなので、
とりあえず悪い事なら何でもしたいお年頃なのだと思っていただければ幸いです。
フレミングがカジノ好きなのかはわかりませんが、カジノシーンやトランプ対決シーンが多いのも特徴です。
映画版と同じく、小説版にも毎回美女が登場しますが、
こちらは文字で読む上に、濡れ場があっても官能的なシーンは一切なく
あまり心に残るヒロインはいませんね。
強いてあげれば
と
のヒロインでしょうか。(後者はヒロインという感じもしませんがw)
読むべき本は?
一応順番に書きましたが、順番に読む必要はほとんどありません。
ただ、「女王陛下の007」以降の3作には繋がりがあるので、この3作だけは順番を守った方が良いと思います。
読む本として、まずは007シリーズの映画を見て、気に入った作品原作を読む、というのが一つのやり方だと思います。
評価にも書きましたが、
個人的に一番面白いと感じたのはデビュー作の
です。
個人的には6作目の「ドクター・ノオ」から10作目の「女王陛下の007」までに良作が詰まっていますが、
10作目の「女王陛下の007」で割とショッキングな事件が起こります。
そこからの2作は、シリーズを畳みに来ている感じがして、単体評価では面白いとは思いませんでした。
フレミング氏について詳しくないのですが、「女王陛下の007」が1963年発刊で、フレミング氏は最終作「黄金銃を持つ男」1965年に亡くなっているので、
ひょっとすると自らの死期を悟った彼が、シリーズをきちんと完結させたいと願ったのかもしれません。
そうだとするなら、個人的にシリーズを完結に導いた彼の奮闘は称えたいと思います。
前回のチャンドラーに続き、連載の趣旨に微妙に反しているのですが、
ほぼ全作読んでいるし、近々「ドクター・ノオ」と「ゴールドフィンガー」のあらすじ解析をしたいと思っているので、記事を書きました。
映画版は実は2~4作しか観ていないので、お薦めの映画作品などありましたらコメントください。
(「ドクター・ノオ」と「ゴールドフィンガー」は見ました。
「ロシアより愛をこめて」と「死ぬのは奴らだ」のどちらかを見て、
後は見ていないはずです)