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6/18
笠井潔の「オイディプス症候群」読了。69点。

イリイチの、世界にHIVをばら撒こうというスケールの大きな邪悪さには驚いた。
ミステリとしては、ギリシャ神話に狂った犯罪者が多層に表現する神話的モチーフが難しすぎて整理できない。
大きな不満は、フーコーの思想が肩透かしに終わっていること。

見られるというのは、一般的には『自分を見ている相手を、こちらが見る』
(『自分を見ている相手の目に、相手を見ている自分の姿が映る)。

「見るー見返される」という対称性のもとで成り立つ事も多いが、パノプティコンに代表されるように
こちらからは見る事ができず、『見られているかもしれない』という恐怖を一方的に与え続ける事で、相手を封じ込め、弱者として規定する、『まなざしの持つ暴力性』について語っている
……という理解でいいのかな?
めっちゃ自信がないんだけど。

6/13
ヴァル・マクダーミドの「処刑の方程式」読了。81点。
35年前、13歳の美少女アリソンが誘拐され、殺された。
犯人として挙がったのは義理の父、ホーキン。
母クロエと再婚したホーキンは、アリソンを凌辱し続けていた。
ホーキンは死刑になった。

そして35年後、全ての真相が明かされる。
法律では裁けない罪があること。
それを捻じ曲げてでも、止めるべき悪はあり、
けれどそれを恣意的に見逃せば、法治国家ではなくなってしまう。

事件の結果が、次の世代の人々にまで影を落とすこと。
面白かったです。
唯一あれだったのは、ホーキンが真性のクズすぎて、
『冤罪で処刑された』事に対して、

『これで良かったのだろうか……彼は邪悪そのものではあったけど、人殺しはしていなかったのに』という思いよりも、
『こんな屑は殺されて当然』と思ってしまったこと。
少しだけ、ホーキンにも良いところがあれば、もっと色々と考えさせられたと思った。
村ぐるみで一人のクズ男をハメて死刑に持ち込んだ、
処刑の物語。
という、陰の面よりも、
あまりにもクズ。殺されて当然、という気持ちが勝ってしまった。


6/10
山田風太郎の「妖異金瓶梅」読了。83点。
強烈な悪女、潘金蓮の犯罪を探偵の応伯爵が解く連作短編ながら、世界の滅亡を描く最後の四編を加えることで、長編小説として余韻を残す仕上がりになっている。
面白かった。

アラン・ブラッドリーの「パイは小さな秘密を運ぶ」読了。68点。
11歳、化学大好き実験大好き毒物大好きな、少女探偵フレーヴィアの魅力で読ませるミステリ。


6/6
養老孟子の「バカの壁」読了。
マッチョな思考で「近頃の若い者」を嘆いたまとまりのない本。
20年前の本ということもあって、そもそもが古い。
『女は家事』、『百姓』などの著者の古さや、『イチロー・松井・中田英寿』のような例の古さなど。
キャッチ―な題名で【バカを釣る】事には成功。

6/4
ジャレット・ダイヤモンドのノンフィクション「銃・病原菌・鉄」上巻読了。(下巻も含めた感想は記事にしました)
アフリカから散らばった人類が、それぞれの土地環境により、家畜を育て農地を耕す農耕民族と、狩猟採集民族へ分かれる。
農耕民族は余剰物資によって蓄財ができ、食料調達以外の専門職を食わせる余裕が出来たことで軍人も増え、圧倒的な力によって狩猟採集民族を滅ぼしていく。
また、群居性の動物(人類含む)の間で流行・進化を続ける病原菌が、耐性を持たないアメリカ先住民を滅ぼしていく様子も描かれる。

5/31
森見登美彦の「有頂天家族」読了。71点。

5/27
フレドリック・ブラウンの「73光年の妖怪」読了。75点。

1・睡眠中の動物に乗り移る
2・宿主の動物が死んだ時にだけ、新しい動物に乗り移れる
3・本体は亀に似ている。

この3つのルール内で繰り広げられる、寄生宇宙人VS博士&女教師の死闘。
田舎町の片隅で綴られる、人類の存亡をかけた戦い。

明確なルールが決められていて、その枠内で殺るか殺られるかというサスペンス。

スティーブン・キングの「クージョ」に状況が似ているが、あちらほどは重くないですね。


5/23
宮島未奈の「成瀬は信じた道をいく」を読みました。77点。
前作に比べてみゆきの存在感は薄いけど、前作同様、成瀬のアグレッシブな魅力とそれに振り回され、影響を受ける周囲の人々が描かれる、読みやすく元気になれるライトな作品。
前作が好きだった方は是非! 楽しかったです😊


5/22
ここでは書いてなかったけど、NBAも例年どおり見てますよーという報告。
今年は東も面白いので、例年より更に面白いかもしれません。
まぁ、応援していたセルティックスが悲しい形で敗退したのは残念ですが。
これを書いている時点で、東西決勝が始まったところですが
東はペイサーズ、西はサンダーを応援します。

上橋菜穂子の「闇の守り人」、「夢の守り人」読了。68点ぐらい。

5/20
山本弘の「アイの物語」読了。87点。感想は記事にしたのでここでは割愛。

また、永井路子の「北条政子」の感想を書き忘れていたので、追加。

86点。
鎌倉幕府において、源氏というものは大して重要ではなく。
頼朝以降の2代、3代においては将軍という【お飾り】を【乳母一族】が争い合い殺し合う、権力争いの象徴としての存在と化し、政子が全てを失っていくと同時に、北条家は執権の座を手に入れる。
愛に溺れた女性の悲しい物語だった。

5/17

乃至政彦の「謙信越山」読了。 上杉謙信と、その頃の武田・北条。そして古河公方と関東管領(謙信)、近衛前久などの関係性が描かれる。
謙信は足利幕府を立て直す『佐幕』派の筆頭的な存在で、それ故に関東の足利氏出先機関である古河公方を補佐するべく、関東管領に就いたばかりに、北条・武田と延々不毛な戦争をする羽目になったという話。

余談だけど、『信長の野望・創造PK』において、謙信のイベントである『小田原城攻囲』が一番難儀した記憶がある。 ただでさえ北条の方が謙信よりも兵力も国力も上なのに、新潟県から大軍が通れない山道を通って、はるばる小田原までやってきて、途中に信玄の領土があるので巧みに避けつつ、やっとたどり着いた頃には、兵糧が少なくなっていて、そこから自分より強い北条と戦うというマゾイベントだった。 何とかクリアしたけど、もう一度やれと言われたら無理だと思う。

5/11
山本弘の「アイの物語」途中感想。
第1話「宇宙をぼくの手の上に」。
インターネット通信の時代を思わせる、オタクのための旧きネット空間。現実逃避のためにネット小説を共同で書き続けるクルーメンバーたちの友情を描いた作品。
『虚構は現実を救う力になりうる』
第2話「ときめきの仮想空間」。身体障害者の少女が、VR世界で出会った少年に、現実世界で出会うための勇気を描く作品。欲を言えば二人のその後が見たかった。
これもまた【虚構が現実を救う】お話。そして、現実を変えていく勇気を与えるお話。
第3話「ミラーガール」。
『お友達AI』シャリスと、大人へと成長していく女性の友情物語。
アシモフの「ロビィ」を皮切りに、AIと人間の心暖まる友情物語はたくさんあるけど、良いものはやっぱり良い。
第4話「ブラックホール・ダイバー」。
作り物の冒険に飽き飽きした、冒険家女性がブラックホールに挑む物語。
虚構の冒険→現実の冒険という展開は第2話の「ときめきの仮想空間」と共通するものの、この短編集の中ではやや異質かな
第5話「正義が正義である世界」。
永遠に歳を取らない変身美少女のメール友だちは、正義の名の元に爆弾を落としあい、滅びていく人類の住む『現実』に住む人間。
『滅びた現実とは関わりなく、永遠に続く虚構』の物語。
第6話「詩音が来た日」。
介護ロボット詩音が、老健施設での人との触れ合いによって、人類とは何かについて学んでゆく話。
「人類全ては認知障害」と結論し、認知症の人に怒っても仕方がないという論理で介護ロボットは人間に甲斐甲斐しく尽くす。
より優れた種族が、弱い種族を守るように。