フィリップ・K・ディックの短編集「人間以前」を読了しました。評価はB。
表題作の「人間以前」は、13歳以上で代数の知識がある人間以外を『人間以前』と見なし、中絶……つまり殺しても良い社会を描いたディストピア作品。
貴志祐介がこの設定も盛り込んで(他にもたくさんアイディアがありますが)、名作「新世界より」を描いており、そちらの方が更にインパクトが大きいですが、『人間以前』の方がもちろん昔の作品です。
庭の虫が父親に化けて、本物になりすます『父さんもどき』は、「人間以前」と同じく、子供が持つ原初的な親への恐怖をよりダイレクトに描いた作品。
逆に、ロボットとデータによって子供を育成する未来世界で、昔ながらの子育てを行ないたいと苦悩する父親を描いた『新世代』も面白い。
毎年のように新モデルが発売され、強制的に新モデルを買わされ続ける世界を描く『ナニー』と『フォスター、お前はもう死んでるぞ』は、現代の消費社会への皮肉がたっぷり。
過去の小さな出来事によって、現在が変わってしまいかねないあやふやさを描いた『地図にない街』、
天使の不始末によって、世界中が同じ人間で埋まってしまう『この卑しい地上に』も良作。
『欠陥ビーバー』と『シビュラの眼」は途中までは面白かった。
『妖精の王』、『不法侵入者』、『宇宙の死者』はピンときませんでした。