Euro 2012

準々決勝 イタリアVSイングランド

イタリア     0-0                   イングランド
   PK                  4-2

MOM    CH アンドレア・ピルロ(70)(イタリア)
試合内容 A-
主審 C+

GK ジャン・ルイジ・ブッフォン(75)         ジョー・ハート (75) 
CB レオナルド・ボヌッチ(60)           ジョン・テリー (65) 
   アンドレア・バルザーリ(60)          ジョリオン・レスコット (60) 
SB フェデリコ・バルザレッティ (65)        アシュリー・コール (65) 
   イニャツィオ・アバーテ (70)           グレン・ジョンソン (75) 
CH アンドレア・ピルロ (70)          DH スコット・パーカー (60)   
   クラウディオ・マルキージオ (65)     CH スティーブン・ジェラード (75) 
    ダニエレ・デロッシ (55)          SH  ジェームズ・ミルナー (70) 
OH リカルド・モントリーボ (60)            アシュリー・ヤング (40) 
FW アントニオ・カッサーノ (60)       FW ウェイン・ルーニー (60) 
   マリオ・バロテッリ (70)             ダニー・ウェルベック (65) 

監督 チェーザレ・プランデッリ A-         ロイ・ホジソン  C+

交代
(イタ)
アントニオ・カッサーノ→アレッサンドロ・ディアマンティ(65)
ダニエレ・デロッシ→アントニオ・ノチェリーノ(70)
イニャツィオ・アバーテ→クリスチャン・マッジョ(60)

(イン)
ジェームズ・ミルナー→テオ・ウォルコット(55)
ダニー・ウェルベック→アンドリュー・キャロル(50)
スコット・パーカー→ジョーダン・ヘンダーソン(?)

【試合概要】

堅い試合を予想していたが、思いの外両者攻勢に出た序盤戦となった。
とはいえ、やはりポゼッションはイタリア。ピルロ、デロッシ、カッサーノの他に
モッタに代えて起用されたモントリーボと、パスの基点が更に増えたことは大きい。
一方のイングランドは右サイドから、ジョンソン、ミルナーの仕掛けが目立ち、いつになく決定機を作り出していた。
しかしそれも前半の30分すぎまで。普段に比べれば攻撃的ではあったが(普段は10人で守るところを、今日は9人で守っていた)、やはり守備的は守備的である。
後半の25分すぎになると、疲労からか足も止まるようになった。
それでも何とか守りに守り、時折のセットプレイでイタリアゴールを脅かすシーンもあったが、結局スコアレスでPK戦へ。
イタリアはモントリーボが外すなど、一時はイングランド有利の展開になったものの、ピルロのパネンカ(PKの際、ゴール中央にチップキックをすること)を境にそれも一変。結局ベスト4最後の切符は、試合を終始押し気味に進めたイタリアのものとなった。



【イタリア】

ゲームを支配していたのはイタリアだ。PK決着とはいえ、この結末は試合内容を考えれば順当といえる。
モントリーボが先発したこの日は、更にパスの基準点が増え、スムーズにボールが流れていた。
デロッシ、モントリーボ、ピルロと、縦のスルーパスが出せる選手が複数いるというのはイタリアの強みだ。

MOMはピルロ。この日の彼は、軽率なボールロストが二度ほどあり、いつもに比べるとパフォーマンス自体は低かったように思う。
ただ、試合を決定付けたあのPKは圧巻だった。
それまで読みを当てていたイングランドGKハートの表情から余裕が消えうせ、あのキックを境に彼の読みは当たらなくなった。
単なる一発以上に精神的ダメージを与えた、素晴らしい一撃だった。

そのピルロを採点で上回ったのはGKのブッフォン。活躍の場面は多くなかったが、前半の決定的なピンチを奇跡的なセーブで防ぎ、PKのシーンでも勝利に貢献した。

アバテは短い時間ながら、後半開始直後の猛攻に一役買った。
デロッシはパフォーマンス自体悪くなかったものの、ペナルティエリア内で相手ユニフォームを露骨に引っ張るシーンがあり、PKを取られても文句の言えないプレイだったために減点をした。


【イングランド】

いつになく、攻勢に出ていた印象だ。
いや、どちらにしろ守備的すぎる感は否めないのだが、通常10人で守るところを、今日は9人で守っていた。
その甲斐あってか、何度かチャンスを作ることにも成功したが、やはり時間を追うごとに守備一辺倒になってしまった。
セットプレイ時のジェラードは、大会を通して輝いていた。
惜しむらくは前半早い時間、ジョンソンとミルナーが素晴らしい突破でイタリアを蹂躙していたあの時間に、
点を決められていれば……。しかし、そんな儚い願いは相手GKブッフォンに阻まれ、後の時間はひたすら守るのみだった。

それでも、底知れぬ不気味さを感じさせるあたり、スリーライオンズの威光はまだ失われていない、と見るべきか。



【イングランド代表まとめ】 2勝2分 得点5 失点3 攻撃 B- 守備 A+ 面白さ B- 総合 B

注目選手 CH スティーブン・ジェラード(66.6/3試合:ウクライナ戦は未採点)。
       GK ジョー・ハート(68.3/3試合:上に同じ)
       CF ダニー・ウェルベック(63.3/3試合)
       SB グレン・ジョンソン(63.3/3試合)


『弱小チーム』なりに素晴らしい結果を残した、ポジティブな大会だったと言える。
気持ちの強さを見せてくれたし、何より10人で固めたゴールは非常に堅固だった。

元々イングランドは真の強豪国ではない。ビッグトーナメントでベスト4に進出したのは96年が最後だ。
その上、今大会は記録的な数の負傷者を出し、監督は大会1ヶ月前に就任したばかり。
更に更に言えば、エリクソン監督以降イングランドは常にドン引き、引きこもりサッカーを磨き上げてきた。

イングランドの攻撃が魅力に欠けているのは、もはや今更、なのだ。
そう考えれば、イタリアを相手にPKまで粘ってのベスト8敗退。
立派ではないか、と思う。

選手個々に目を向ければ、やはり守備ブロックの評価は高い。
最後尾に控えるハートの奇跡的な反射神経に、救われた試合もあった。
数々のスキャンダルに見舞われたテリーも、ピッチ上ではイングランドを代表するだけのパフォーマンスを見せてくれた。
レスコット、ジョンソン、コール、皆、文句のつけようがない。

そしてジェラードだ。
極端に攻め手が少ないこの代表では、センチメーター単位で通す彼の正確無比なロングパスが、
チャンスの8割を占めていたという印象だ。
前線ではウェルベックが、エースのルーニー以上に奮闘。
守って守ってスピードカウンターという、イングランドの戦術は、攻撃面でジェラードとウェルベックの二人に依存していたと言える。




【プレビュー】

カテナチオから脱却し、テクニカルなサッカーを目指し始めたイタリアと、
イタリアからカテナチオ戦術を取り入れ、ゴールを10人で守るイングランド。
まさに、新旧カテナチオ対決、師弟対決と言えるかもしれない。

3バックと4バックを使い分けるイタリアだが、コンセプトの部分は変わらない。
それは、ピルロ、デロッシ、カッサーノを中心にした足元で繋ぐテクニカルなスタイルだ。
この3人を縦の軸で繋ぐのが3バック、ピルロデロッシを横に並べた従来のスタイルが4バックである。
この試合、どちらを使ってくるのかはわからないが、イングランドの快速攻撃陣に対抗するためには
3バックよりも4バックが望ましいだろう。
3バックの方がより、足元に繋ぐ本来のスタイルを保持できる一方で、4バックの方がよりサイドを攻略できるというメリットもある(本来3バックの方がサイド攻撃に適しているシステムのはずなのだが、実際この大会では3バック時のサイドアタックは乏しく、むしろ4バック、バルザレッティ起用時の方がサイドを抉れていた)。

最終ラインは毎試合メンバーが変わっているように流動的であり、負傷したキエッリーニの回復具合も気にかかる。
守備の局面では、スペインのように繋いでくるチームには鉄壁を誇っているのだが、クロアチア、アイルランドのようにロングボール主体のチームにはやや脆さも見られた。イングランドもまたロングボール主体のチームだけに、マークのズレなど十分ケアしておきたい。
攻撃の局面では、カッサーノに一度預けてからゲームを作る。前線ではフィジカル自慢のバロテッリが控えるが、
マルキージオの飛び出しも含めて、やや攻撃が中央に偏りすぎる嫌いがある。


10人で守る。それが現在のイングランドのスタイルだ。
まさに要塞を守る人間の壁。その人海戦術の故もあってか、そう簡単にゴールを許すことはない。
常に、ボールよりも後ろの位置に人数をかけるのがイングランドの特徴である。
最後尾に控えるGKハートは、今や世界でも三本の指に入るGKと評価してもいいだろう。
(No1はスペインのカシージャス、No2はドイツのノイアー)。
人種差別騒動もあり大きな批判を浴びながらのプレイとなった守備の要、CBのテリーのプレイも際立っている。
攻撃のキーは、正確無比なジェラードのロングボールだ。
ミルナー、ウェルベック、ヤング、控えと予想したがウォルコットやチェンバレンなど、快速を持ち味とする
2列目の選手たちが単独でボールを持ち込み、チャンスを作り上げる。
セットプレイの際にはテリーやレスコットも含む長身選手が上がり、ゴールを狙う。
とにかく1ゴールを奪い、後は守りきってしまう。それがイングランドの狙いである。
控えには、高さ自慢のキャロル、爆発力のウォルコットなど、切り札になりうるメンバーが揃っており、
0-0のスコアで終盤を迎えれば、彼らの出番も回ってくるだろう。
イングランドのサッカーは、出場16チームの中で、最も守備的であり、クラシカルなカテナチオスタイルである。
個人的にこのようなサッカーは、(殊に、選手がある程度揃っているチームがそれを行う場合)許容しがたいが、こんなチームもある、ということだ。






準々決勝 スペインVSフランス

スペイン    2-0            フランス

試合内容  B-
MOM CH シャビ・アロンソ(75)
主審 B


GK イケル・カシージャス (70)     ウーゴ・ロリス(60)
CB ジェラール・ピケ (50)        アディル・ラミ (45) 
   セルヒオ・ラモス (65)        ロラン・コシールニー (55) 
SB ジョルディ・アルバ (70)       アンソニー・レバイエール (50) 
   アルバロ・アルベロア (60)     ガエル・クリシー (45) 
DH セルヒオ・ブスケッツ (60)     ヤン・エムビラ (40) 
CH シャビ・エルナンデス (65)     ヨアン・キャバイェ (55) 
   シャビ・アロンソ (75)      SH フロラン・マルダ(40) 
WG ダビド・シルバ (60)         マテュー・ドゥビュッシー (45) 
   アンドレス・イニエスタ (60)   OH フランク・リベリー (60) 
CF セスク・ファブレガス (60)   CF カリム・ベンゼマ (45) 

監督 ビセンテ・デルボスケ A    ローラン・ブラン   C+

交代
(ス)
ダビド・シルバ→ペドロ・ロドリゲス(70)
セスク・ファブレガス→フェルナンド・トーレス(50)
アンドレス・イニエスタ→サンティ・カソルラ(55)

(フ)
マテュー・ドゥビュッシー→ジェレミー・メネズ(45)
フロラン・マルダ→サミール・ナスリ(50)
ヤン・エムビラ→オリビエ・ジルー(?)


【試合概要】

両者ともにパスサッカーを主軸に置くチーム同士だが、それだけに如実にレベルの違いが浮き彫りにされた印象だ。
フランスがスペインゴールを脅かした機会は皆無に近く、わずかにキャバイェのFKや、リベリの突破があった程度。
前半の早い時間にシャビ・アロンソがゴールを決めてからは、
まだ1点差だというのに、早くもスペインの勝利が磐石なものとなったような錯覚に陥った。
後半、フランスはややペースを上げ、前半に比べればスペインのゴールに迫ったものの、勝利は遠いと痛感させられた。
結局、ロスタイムには交代で投入された絶好調ペドロの突破にラミがまるで対処できず、
慌てたレバイエールがPKを献上。
この日、代表100キャップを飾ったシャビ・アロンソが2点目となるPKを決め、スペインが準決勝へと駒を進めた。


【スペイン】

中盤のクオリティで、フランスを圧倒した。
全く危なげない勝利というべきで、特に言うべきことは少ない。
敢えて苦言を呈すなら、1-0で十分とも言える消極的な姿勢(ペドロ投入まで)が気になったが、
実際1-0で十分とも言えるくらいフランスに怖さがなかった。
MOMは2ゴールのアロンソを選んだが、チーム全体として仕掛けのパスが少なく
いつも以上に横パスが多い展開だっただけに、少々退屈さを感じたのは確か。
一方、ほとんどミスパスがなく、流れるようなボール回しはさすがの一言で、
横パスをまわされ、時計の針が進んでいくのを、なすすべなく見守るフランスの姿が印象に残った。


【フランス】

スペインとの差は歴然としていた。どう手を打っても、勝利することは難しかったかもしれない。
だが、それにしてもブラン監督は無策だった。
大会を通して良いところのなかったベンゼマを代え、ジルーを早い時間から投入することはできなかったのだろうか。まるでベンゼマと心中をしたかのように感じた。
ラミの守備はあまりにも軽く、CBの層が薄いことを改めて痛感させられた。
キャバイェ、ロリス、コシールニーなど及第点を与えられる選手が数少ない中、リベリだけは相変わらず違いを作り出せていた。リベリのチャンスメイクを、ゴールに結び付けられるだけのストライカーがいれば……。


【フランス代表まとめ】 1勝1分2敗  得点3 失点5 攻撃 B- 守備 B 面白さ B 総合 B+

不完全燃焼の大会だった。
初戦のイングランド戦、中盤を圧倒的に支配したフランスには、躍進の可能性を見出したものだ。
だが、振り返ってみれば、そのイングランド戦で相手を圧倒しながらも、気の抜けたフィニッシュとどこか消極的な姿勢で、結局引き分けで良しとしたその短所こそ、今回のフランスのその後を象徴していたのだ。

ドゥビュッシー、キャバイェ、リベリ、ナスリを中心にした崩しはなかなかのレベルなのだが、
肝心のフィニッシュに持ち込めない。
最前線のベンゼマが決められないというよりも、ベンゼマ以外にフィニッシュに絡もうとする選手が少ないのだ。
結果、中盤は支配するものの誰もゴール前に入っていかず、パスをひたすらまわし続ける羽目になる。
まるで、ポゼッションサッカーの本家スペインの悪い部分をコピーしてしまったかのようだ。

そんなミニ・スペインが、本家スペインに勝てないのが当然というなら、そのスペインを相手にポゼッションされ、
ポゼッション率4割の状態で勝機が見出せないのもまた、当然だった。
もとより、カウンターをコンセプトに作られたチームではないのだ。
似たもの同士のチームスタイルを持つ両者がぶつかれば、完成度の違いが如実に表れてしまうのもまた、至極当然の結末だった。









【プレビュー】

似たもの同士とも言える顔合わせだが、有利なのはクオリティで絶対的に上回るスペインの方だろう。
クロアチアの攻撃にピンチの連続となった守備陣には不安がないとは言えないが、結局は完封を収めており、
今大会でも3試合で1失点。
そもそも、攻撃は最大の防御ならぬ、『ボールポゼッションは最大の防御』を地でいくチームだけに、
守備が破綻をきたすことはない。自分たちがボールを持っていれば、敵に攻められることはないのである。
最大の特徴はやはり中盤である。
スペイン代表は、他のチームとは全く別のスポーツをプレイしている。
非常に異質であり、過去に類を見ないスタイルと言えるだろう。
相手にほとんどボールを奪われず、ひたすらボールを自分のものとする、バルセロナ譲りのスタイルだ。
ポゼッションの鍵を握るシャビ・エルナンデスから、両ウイングのシルバ、イニエスタへ。
シルバの飛び出し&パス、世界一とも言えるイニエスタのキープ力は必見だ。
また、ここに来て、過去2年全く頼りにならなかった男が、再び輝き始めている。
フェルナンド・トーレスの動きは見違えるようで、点取り屋不在の危惧を払拭してみせた。
万が一、トーレスが抑え込まれた場合にも、控えにセスク/ゼロトップシステムという切り札がある。
ゼロトップが機能していることは、イタリア戦、アイルランド戦の後半を見ても明らかであり、
リードを許した終盤にはジョレンテ、ネグレドといったパワープレイ要員も備えている。
守勢に回ることは少ないが、世界最高の守護神カシージャスがクロアチア戦ではビッグセーブを見せていた。
現在、最も優勝に近いチームと言えるだろう。


対するフランスは、劣勢が否めない。
とはいえ、それは相手がスペインだからというだけの話である。
最終ラインで目を引くのが右サイドバックのドゥビュッシーだ。サイドバックでありながら、基準ポジションはサイドハーフのそれであり、彼のオーバーラップは今大会でも一際目をひいている。
対照的に中央の守備には不安がある。センターバックのラミは軽率なプレイが多く、頼りになる相棒のメクセスは出場停止。コシールニーが代役となるが、アーセナルでのプレイを見ている限りでは、彼の守備力に信頼は置けない。最後尾にGKロリスが構えているのは救いである。
中盤の底、アリュー・ディアッラの守備とキャバイェのビルドアップは信頼性があり、イングランド戦では完全に中盤を支配した。
攻撃においては2列目のリベリーのキレのある突破、ナスリのミドルシュートなども大きな武器となっているが、
真の意味で鍵を握るのはメネズであると思う。
というのも、最前線のベンゼマが今大会、ここまで完全に不発に終わっており、フィニッシュにおいてフランスは大きな問題を抱えているからだ。そのため、せっかく中盤を支配しても有効なフィニッシュに繋がらず、結果として攻撃に迫力を欠き、満足に得点が奪えていない。
2列目から最前線に飛び出して、フィニッシュに絡めるキャラクターが、現在メネズくらいしか見当たらないだけに、彼の飛び出しがゴールを生み出す特効薬となるかもしれない。






準々決勝 ドイツVSギリシャ 

ドイツ  4-2          ギリシャ

試合内容 A-
MOM  OH メスト・エジル(90)(ドイツ)
主審 B

GK マヌエル・ノイアー(55)                ミハリス・シファキス (0)  
CB マッツ・フンメルス (55)                 キリアコス・パパドプーロス (50) 
   ホルガー・バドシュトゥバー (50)            ソクラティス・パパスタソプーロス (60) 
SB フィリップ・ラーム (65)                 ヴァシリス・トロシディス (45) 
   イェロメ・ボアテンク (60)                ゲオルギオス・ツァベラス (40) 
CH サミ・ケディラ (80)                 DH ジャニス・マニアティス (50) 
   バスティアン・シュバインシュタイガー (60)   CH コンスタンティノス・カツラニス (55) 
SH アンドレ・シュールレ(65)                グレゴリス・マコス (60) 
   マルコ・ロイス (80)                WG ソティリス・ニニス (55) 
OH メスト・エジル (90)                    ディミトリオス・サルピンギディス (65) 
CF ミロスラフ・クローゼ (70)                CF ゲオルギアス・サマラス (50)

交代

(ド)シュールレ→トマス・ミュラー(55)
  ロイス→マリオ・ゲッツェ(50)
  クローゼ→マリオ・ゴメス(55)

(ギ)
ニニス→テオファニス・ゲカス(55)
ツァベラス→ゲオルギオス・フォタキス(55)
マコス→ニコス・リベロプーロス(50)

監督 ヨアヒム・レーブ  S                  フェルナンド・サントス B

【試合概要】

優勝候補ドイツが、とうとう覚醒した。
この日のドイツは、前戦までに動きの悪かった3人(ポドルスキ、ミュラー、ゴメス)を、
ロイス、シュールレ、クローゼへと一気に代えてきた。
このレーブ監督の英断が、ドイツを蘇らせたと言える。
特にロイス、クローゼの動きは秀逸で、次戦からの継続起用を望みたい。

試合は前半からドイツが圧倒的な力の差を見せつける展開に。
後半、一度は同点に追いついたギリシャだが、すぐに突き放され、完全に引き立て役に回ってしまった。


【ドイツ】

前述したように、前節からメンバーを変えたレーブ監督の英断が、ドイツ代表を更なる高みへと導いた。
動きの少ないゴメスが前線に張っている時と違い、クローゼを前線に置くとチーム全体が活性化する。
初登場のロイスは、中央に構えるエジルとパス交換を繰り返し、そのエジルは大車輪の活躍で完全にゲームを掌握した。
後方に控えるケディラは好調を維持し、組み立てにも積極的に参加。
前節まで、馬鹿の一つ覚えのようにアーリークロスを繰り返したミュラーや、強引で利己的なプレイの目だったポドルスキに代わって入った、ロイスとシュールレ(シュールレはポドルスキ同様、少々利己的ではあったが)の働きにより、優勝候補の名にふさわしい圧巻のパフォーマンスを見せたのだ。
守備陣も、ギリシャにサイドを破られたシーンもあったとはいえ、十分許容範囲だろう。
ラーム、ボアテンクのオーバーラップも冴え渡り、チームの攻撃力は大幅に上がった。

この日のようなプレイができれば、どんな相手にも負けない。
そう思わせるだけの、充実したパフォーマンスだった。


【ギリシャ】

まずはここまで大会を盛り上げてくれた、その健闘を称えたい。
その上で、やはりドイツとはレベルが違うということをまざまざと見せつけられた。
特に守備陣は完全崩壊レベルで、ここまで抜群の安定感を見せていたトロシディスでさえ、例外ではなかった。
それにしてもGKのシファキスはどうしてしまったのか。
元から良いGKという認識はなかったが、今日の彼はボロボロだった。
何でもないボールもキャッチせずにコーナーに逃げる、頻繁にボールをこぼす、ふらふらと意図不明に飛び出すなど、完全に自分を見失ってしまっていた。
堅守を土台にして戦術を組み立てるチームの守護神が、これではいけない。

攻撃においてはサルピンギディスの存在が際立っていた。
何より1点目のアシスト、完璧な突破からの完璧なクロスで、試合を束の間面白くしてくれた。



【ギリシャ代表まとめ】

1勝1分2敗 得点5 失点7 攻撃 B- 守備 B- 面白さ B 総合 B


強豪国とは言えないが、実に不気味なチームだった。
ポーランド戦、度重なる不利なジャッジを覆して同点に追いついたあの試合から、ギリシャはどこか
可能性を感じさせるチームだった。

攻撃は、前線を走り回るウイングプレイヤー、サマラスに向けてのロングボールから。
彼が足元にボールを収めると、逆サイドのサルピンギディスが裏を狙って走り出す。
ぎこちない攻撃でありながらも、振り返ってみれば毎試合確実に1ゴールは奪えていた。

チームの精神的支柱は、04年大会の生き残りであるカラグーニス。
彼の一撃は、大国ロシアをも沈めた。
守りの局面では、若いセンターバックコンビ、パパスタソプーロスとK・パパドプーロスが可能性を感じさせ、
右サイドバックのトロシディスも好パフォーマンスを披露。
唯一不満だったのが、左サイドで穴になり続けたホレヴァスとGKのシファキス。

フェルナンド・サントス監督のポーカーフェイス(うまくいっている時でも、常に苦渋の表情をしている)も含め、
今大会のギリシャは、記憶に残るチームであった。





【プレビュー】

圧倒的に有利なのはドイツだ。それは誰が見ても明らかだろう。
死の組と呼ばれたグループBを3戦全勝、全く危なげなく勝ち上がってきたドイツ。
れっきとした優勝候補である。

グループリーグの戦いぶりを見る限り、やはり強い。
だが、面白さ、という意味では期待に応えられていないのが実際のところだ。
攻撃陣の両サイド、ミュラーとポドルスキに冴えが見られず、ラームのオーバーラップが少ないために
攻撃が中央に偏りがちになっている。
恐らくチーム戦術なのだろうが、工夫のないアーリークロスを繰り返すミュラー
ベンチにはデンマーク戦で良い動きを見せたシュールレやロイス、ゲッツェといった新鋭が控えており、ポドルスキやミュラーに拘泥することなく、彼らを試してほしいというのが率直な感想だ。
その絶好の機会であったデンマーク戦を逃した今、彼らの出番は訪れないのだろうか。
エースのゴメスもオランダ戦で永い眠りから覚めたものの、デンマーク戦で再び眠りについてしまった。
ベンチに控えるクローゼにはまだ、一歩も二歩も劣る。そんな印象だ。

そんなチームの中で最も輝いているのがケディラだ。
レアル・マドリーでは潰し屋の側面が強いが、思い返せば2010ワールドカップの時にも彼は
積極的な前線への飛び出しで、バラックの代役を立派に務めたのではなかったか。
ドイツ代表での彼は、守って良し、飛び出して良しの万能型センターハーフである。
ケディラとコンビを組む、シュバインシュタイガー、中央のエジルは彼らの実力を考えれば本領発揮とまではいかないものの、評価に値するパフォーマンスを見せているといえそうだ。
守備面では、ポルトガルのサイドアタックにやや苦戦を強いられたものの、ここまではほぼ問題ないと言っていいだろう。
心配されていたセンターの守備は、新戦力フンメルスの目を見張るパフォーマンスにより大幅に改善された。
バドシュトゥバーにやや落ち着きが見られないものの、ラーム、ボアテンクと組む最終ラインに問題は見られず、
後方に控えるのは今や世界でも3本の指に入るGKノイアーである。


一方、ギリシャの方はどうか。
奇跡的なメンタルの強さで、逆境を勝ち上がってきたのがこのチーム。
だが、ドイツと比べると1ランクどころか3ランク、4ランクは違うと言わざるを得ない。
特にキャプテン、カラグーニスの出場停止は大きく、彼抜きでチームの闘争心を保つことができるのか、
興味は尽きない。
立ち上がりに弱いのがここまでのギリシャの悪癖だが、ロシアを完封したことは自信に繋がったのではないだろうか。

まず大きな鍵を握るであろう最終ラインから見ていこう。
ポーランド戦、チェコ戦と、ボロボロだったのが左サイドだ。ここを守っていたホレヴァスは完全に「穴」で、
各チームに狙い撃ちにされていた。
ロシア戦ではツァベラスが起用され、やや改善したように見える。相変わらず磐石とは言いがたいが、前任者に比べればマシであろう。ドイツとしてはこのサイドを衝きたいところだが、ここまでのミュラーの動きを見ていると、ギリシャに脅威を与えるには不十分かもしれない。
ディフェンスリーダーはパパスタソプーロス、その横に若いK(キリヤコス)・パパドプーロスがつく。
ちなみにKと書くのは、アブラハム・パパドプーロスという選手がいるためだが、彼は負傷で大会を後にした。
この守備ライン、フィジカルに強く割と堅いが、スピード勝負に弱く、小回りの利く選手を捕まえるのは苦手である。
右サイドのトロシディスはここまで磐石。何の問題もない。
中盤のアンカーはマニアティス。更にここまではカツラニスとカラグーニスがコンビを組んでいた中盤センターは、攻撃よりも主に守備力に定評のある選手たちだ。
だが、今日はカラグーニスがいない。
代役に選ばれる選手が誰になるのかはわからないが、便宜上フォルトゥニスを予想スタメンには入れてみた。
これは、カラグーニスに最も特性が近い選手が彼だからという理由で、守りを固めるという意味でフォタキスを起用する可能性も高い。
(更に言えば、僕はギリシャ代表に詳しくはないので、僕の知らない選手が出てくる可能性も高い)。

ギリシャの攻撃は前線任せである。より具体的に言えば、中盤を省略してロングボールを蹴りこみ、機動力に優れたサマラスがそれを収める。ここからギリシャの攻撃は動き出す。
そのサマラスは、この役回りをこなすには少々パス能力に欠けるところがあり、決定力も低い。
だが、そうは言っても彼しかいないのがギリシャの実情で、キープ力は高く、守備にも貢献するサマラスの働きは大事な一戦になればなるほど重要となる。
逆サイドのサルピンギディスは、ラインの裏を取る嗅覚に優れ、ポーランド戦では大暴れ。
ドイツの右サイド、ボアテンクの裏をつくことも可能と見る。
だが、ドイツ代表はより守備力に優れたラームサルピンギディス番に任命する可能性があり、こうなってくるとギリシャは相当キツくなるだろう。
最前線にはゲカスが構える。ブンデスリーガでも長く活躍したCFで、今大会でもチェコ戦で1ゴールを挙げている。
悪くない活躍だと個人的に思っているが、フェルナンド・サントス監督は彼をあまり評価していないのか、
途中でニニスなどを投入し、サイドのサマラスをセンターに置くオプションも多用している。


戦力を分析してみても、ドイツの勝利は固い。ギリシャの勝利は20%、ドイツの勝利は80%と予想する。
だが、ここまで不可能を可能にしてきたのがギリシャだ。
1人少ない状態から彼らがポーランドに追いすがると、引き分けすら許されない状況からロシアに勝利すると
予想した人は多くないだろう。
ベスト8に進出しただけでもビッグサプライズである。だが、逆境に負けないメンタルの強さを持っているだけに、
不気味な存在と言えるだろう。







準々決勝 ポルトガルVSチェコ 

ポルトガル 1-0  チェコ


試合内容  C
MOM WG クリスチアーノ・ロナウド(70)(ポルトガル)
主審 A

GK ルイ・パトリーシオ(60)       ペトル・ツェフ (70)
CB  ブルーノ・アウベス (60)      トマシュ・シボク (50)
    ペペ (65)               ミハル・カドレツ (55) 
SB ファビオ・コエントラン (70)     ダビド・リンベルスキー (65) 
   ジョアン・ペレイラ (60)        ゲブレ・セラシェ (55) 
CH ジョアン・モウチーニョ (65)   DH トマシュ・ヒュブシュマン (50) 
   ミゲウ・ヴェローゾ (55)     CH ヤロスラフ・プラシル (55) 
  ラウール・メイレレス (70)     SH ヴァツラフ・ピラジュ (40) 
WG ナニ (65)                ペトル・イラチェク (55) 
   クリスチアーノ・ロナウド (70)  OH ウラディミール・ダリダ(60) 
CF エルデル・ポスティガ (40)    CF ミラン・バロシュ (40) 

監督 パウロ・ベント B-          ミハル・ビレク C+

欠場者                   OH トマシュ・ロシツキー

交代

(ポ)
ポスティガ→ウーゴ・アウメイダ(40)
ナニ→クストージオ(?)
メイレレス→ロランド(?)

(チェ) 

ダリダ→レゼク(40)
ヒュブシュマン→ペクハルト(?)


【試合概要】

はっきりいって、凡戦だった。
Euroの決勝トーナメントというビッグマッチでなければ、途中で観るのをやめてしまっただろう。
その責任は、チェコにある。
いくら守りに守っても、枠内シュート0本では話にならない(枠外も2本)。


立ち上がりから、チェコはナニ、ロナウドを警戒し、徹底的にサイドを封鎖してきた。
これがポルトガルを攻略する上で非常に有効な手段であったといえる。
特にリンベルスキーはナニとのマッチアップにことごとく勝利を収め、完全に彼を封じることに成功した。
従来の、ナニ&ロナウドに任せきりの攻撃ではチェコを崩せない。
ポルトガルの攻撃はコエントランがオーバーラップしてサイドに厚みを増すか、
あるいは中央からのスルーパスに頼るかの選択を迫られることになる。
個人的には後者のほうがより可能性を感じるし、現にモウチーニョやメイレレスのパスから
ロナウドが抜け出すシーンもあったが、チーム全体としてそれを狙っていく意識には乏しいように映った。
また、ポスティガの負傷交代により、前半のうちに1枠を使ってしまったのも痛かった。
ポスティガの代わりに投入されたのは、秘密兵器のオリベイラではなく、ポストワーカータイプのアウメイダ。
個人的には、ベント監督にはもっとオリベイラを信用してあげてほしいが、
可能性を感じるとはいえ実績のないオリベイラよりも、長年代表に定着しているアウメイダをとる選択をベントは行った。
これにより、勝負どころの時間でオリベイラを投入することが難しくなってしまった。


一方のチェコは、前述したように格上相手ということでまずは守備からという入り。
このプランは成功を収め、前半はチェコペースといってもいい展開だった。
とはいえ、ポルトガルゴールを脅かせたかといえばそんなことはなく。
セラシェのオーバーラップからの決定機が一度あった以外は、これといった見せ場はなく前半を終えた。
ロシツキーの代役ダリダは溌剌としたプレイを見せ、プラシル、イラチェク、そして何よりリンベルスキーのパフォーマンスが良かった。


後半に入っても試合の流れは変わらず。
前半同様、守りのことしか考えていないチェコには正直失望させられた。
時間を追うにつれ、ナニ、モウチーニョ、メイレレスとポルトガルの圧力が増していき、とうとうロナウドにゴールを決められた時、チェコの可能性は完全に消えた。
守ることはできても、攻めることができないチーム。
ベスト8でありながら、ネガティブな印象を残してチェコは大会を去った。


【ポルトガル】

ナニ、ロナウド頼みという弱点が如実に表れた試合となった。
同時に、攻め手を封じられても、全てを打開するだけの力が、ロナウドの個人技にあることも教えてくれた。
MOMは、この大事な試合でもきっちりとゴールを決めた、ロナウドだろう。
ナニも前半の不出来は痛かったとはいえ、後半は違いを作り出せていたので65点とした。
中盤では、いつも以上に前線にスルーパスを供給できていたメイレレスを70点。
後半からチャンスメイクに存在感を発揮したモウチーニョを65点とした。
最終ラインでは、効果的な攻め上がりを見せたコエントランを70点と評価。
とはいえ、チェコの攻撃があまりにも酷かったため、ポルトガル守備陣は仕事がほとんどなかった。
GKのパトリーシオがボールをセーブするシーンは皆無だった。

ベント監督の采配にはやや疑問が残った。
チェコにはまったくチャンスがなかったのだから、後半立て続けに守備固めの交代をする必要はなかったと感じた。
むしろ、攻撃の駒を試すなり、あるいは万一の時のために交代枠を残しても良かったのではないか。


【チェコ】

力の差といわれればそれまでだが、あまりにも守備的にすぎた。
その中ではGKツェフを70点、前半はナニをほぼ完璧に封じ込んだリンベルスキーを65点とした。
ロシツキーの代役を果たしたダリダは、運動量豊富で、少なくともコラージュよりは上だと感じさせた。
ワーストはバロシュ。この試合を含め、今大会4試合全ての試合で、何もできなかった。
バロシュ以外にFWがいないのかもしれないが、動き出しの遅かったビレク監督の采配にも不満が残る。



【チェコ代表まとめ】

2勝2敗 4得点 6失点 攻撃 C+ 守備 B- 面白さ B- 総合 B-


チーム力を考えれば、ベスト8に行けたことだけでも成功と言えるだろう。
テクニシャンを揃えた中盤2列目、イラチェクやピラジュ(どちらも来シーズンはヴォルフスブルクですね)など面白いタレントはいたが、一人で打開できるほどの選手ではない。
前線には終始眠り続けたバロシュがいるのみで、その攻撃力の乏しさがポルトガル戦ではモロに出てしまった格好だ。
一方、守備陣は初戦のロシア戦で崩壊の憂き目にあったが、DHヒュブシュマンの起用を境に持ち直したと言える。
ゲブレ・セラシェ、リンベルスキーのSBにはポジティブな評価を与えられるものの、やはり力不足という印象は拭えなかった。


【試合前に書いたプレビュー】

死のグループを2位で通過したポルトガル。
大会前は正直、彼らを全く評価していなかっただけに、予想外のパフォーマンスに驚かされた。
守備陣はペペコエントランのレアル勢のパフォーマンスが抜群に良い。
特にコエントランは、2年前の輝きを取り戻したように、縦横無尽の運動量を見せている。
逆サイドのジョアン・ペレイラもオランダ戦では1アシスト。
数字では3試合で失点4を喫しているが、守備の堅いチームという印象は変わらない。
堅実な守備をベースにした3センターも、守備力の高さに一役買っている。
特に、セットプレイも任されるモウチーニョは、守備と攻撃の繋ぎ役として大きく貢献しているといっていい。
欲を言えば、メイレレスあたりの飛び出しがもう少しあっても良いところ。

チームの重心は低く、攻撃は前線の3人任せというシーンが多い。
両サイドのナニ、ロナウドの2枚はいずれも圧巻の突破力を誇っており、同時に決定力をも兼ね備えている。
ナニ、もしくはロナウドがサイドを突破すると、前線、機動力を生かしてポスティガがスペースを作り、そのスペースに逆サイドのウイング(ナニが突破をすればロナウドが、ロナウドが突破をすればナニ)が詰めてくるのだ。
チーム戦術は攻撃的とは言えないのだが、両ウイングの破壊力溢れる突破は見ていて面白い。


一方のチェコは、グループAを首位で通過した。
だが、ポルトガルを相手にするには分が悪いというのが率直な印象だ。
大会前、謳われていた守備力は、ロシアを相手の4失点で崩壊。
続くギリシャ戦では守護神ツェフのファンブルまで加わった。
両サイドバックは比較的良い。特に同国初の有色人種選手でもあるセラシェは、抜群のスプリントを見せている。ポルトガルの攻撃はサイドアタックが主であるため、セラシェ、リンベルスキーがいかにポルトガルのウイングを抑えられるか注目である。

守備の重鎮といえばDHのヒュブシュマンだ。ロシア戦の後半から登場し、瞬く間にレギュラーポジションを奪った彼の存在により、チェコの守備は格段に改善された。
チェコの中盤はとにかくテクニカル。吸い付くようなボールタッチが魅力の好選手揃いだ。
中でも右サイドのイラチェクのドリブルは実に巧い。スピードではなくテクニックで抜き去るタイプのSHである。
対して左サイドのピラージュは、前線への飛び出しの得意なMF。するすると抜け出して得点を奪う。
中央のロシツキーのゲームメイクも必見だ。ポーランド戦は負傷欠場したが、恐らくポルトガル戦には戻ってくるだろう。
イラチェク、ピラジュ、ロシツキーの中盤はチェコのストロングポイントであり、個性溢れる三者三様のプレイは見所だ。ただ、巧く言葉にできないのだが、タレント性というかパーソナリティがどこか小粒な印象は拭えない。
優れたタレントではあるが、スター選手ではないというか、小さくまとまっている印象が否めないのだ。
最前線のバロシュは、過去3試合いずれも眠ったままである。はっきり言って、全く脅威になれていない。
まだ30歳と老け込むような年齢ではないのだが、8年前の得点王は復活するのだろうか。
得点はもっぱら、二列目のピラジュ、イラチェクらにかかっているというのが、チェコの苦しいところである。


#青字は今大会、ここまでポジティブな印象を抱いている選手
赤字はネガティブ。色なしはまずまず。


グループC スペインVSクロアチア

スペイン1-0 クロアチア

MOM GK イケル・カシージャス(70)(スペイン)
試合内容 B
主審 C+
 
GK カシージャス(70)                  プレティコサ (65) 
DF アルバ  (60)                                  ストゥリニッチ (50) 
   アルベロア (60)                               ヴィダ (40) →イェラビッチ(50)
   ラモス (60)                                    シルデンフェルト (45) 
   ピケ (55)                                   コルルカ (50) 
MF ブスケッツ (60)                                 プラニッチ (40) →ペリシッチ(50)
   シャビ・エルナンデス (60)→ネグレド(55)   スルナ (50) 
   シャビ・アロンソ (60)                             ラキティッチ (25) 
FW イニエスタ (70)                                モドリッチ (65)    
   シルバ (60)→セスク(60)             ブコイェビッチ (20) →エドゥアルド(?)
   トーレス (60)→ナバス(60)             マンジュキッチ (65)

監督 デルボスケ  B                  ビリッチ B+


【試合概要】

2-2の引き分けなら両者突破ということで、両チームの目標がどこにあるのかを探りながらの観戦。
引き分けで良いという消極的な入り方をしたスペインに対し、ファウル紛いのプレイでガツガツと削りにいくクロアチア。
クロアチアの守備の荒さに、スペインは自由にボールを回せないまま前半が終了する。

後半に入ると、クロアチアは攻撃姿勢を強め始める。
スペインは後手後手に回り、完全にクロアチアペースに。
イタリア戦の後半を思わせる、クロアチアのペースコントロールは実に見事で、スペインが失点を免れたのは
ひとえにカシージャスのスーパーセーブによるもの。

終盤、デルボスケ監督はトーレスを下げ、ナバス、シルバに代えてセスクを投入する不可解な采配を見せるも、これが当たってしまうのだから面白い。
後半43分、セスクのスルーパスに飛び出したイニエスタ。横パスでGKを外して詰めたのはナバス。
セスク、ナバスと、監督の采配が的中し、スペインは綱渡りの勝利を収めた。


【スペイン】

全体的に良くなかった。
チームの窮地を救ったのはカシージャスのスーパーセーブ。
彼をMOMに選ぶのはある意味当然といおうか、それ以外に選ぶべき選手が見当たらない。
トーレス、シルバと動きの良かった選手を下げたデルボスケ采配にも疑問が残るが、
交代して入ってきたナバス、セスクが仕事をしたのでここは評価しておくべきか。

【クロアチア】

闘志の伝わってくる好試合ではあった。
だが、その闘士がファウルという形で見えてしまったのは少し残念ではある。
特に目を覆うファウルが数回あったラキティッチとヴコイェビッチの採点は辛い。
スルナも攻撃面で素晴らしい働きを帳消しにしてしまうような2回のラフプレイであった。
一方、アイルランド戦、イタリア戦以上にキレのある動きを見せたモドリッチ、
前線で脅威となり続けていたマンジュキッチには一定の評価が与えられる。
記事検索
月別アーカイブ
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

プロフィール

fee

カテゴリ別アーカイブ
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ