Euro2016

Euro2016 決勝 フランスVSポルトガル

     フランス 0-1    ポルトガル

主審  A
試合内容 B+
MOM SB ラファエウ・ゲレイロ(80)

GK ウーゴ・ロリス(55)    ルイ・パトリーシオ(80)
CB ロラン・コシールニー(50)  ジョゼ・フォンテ(60)
  サミュエル・ウンティティ(50) ペペ(70)
SB パトリス・エブラ(50)    ラファエウ・ゲレイロ(80)
   バカリ・サーニャ(60)    セドリック・ソアレス(60)
CH ブレーズ・マトゥイディ(65) DH ウィリアム・カルバーリョ(50)
   ポール・ポグバ(60)   CH ジョアン・マリオ(70)
   ムサ・シソッコ(70)      アドリエン・シウバ(50)
OH ディミトリ・パイェ(70)   レナト・サンチェス(65)
FW アントワン・グリーズマン(60) ナニ(65)
   オリビエ・ジルー(45)   クリスチアーノ・ロナウド(50)

監督 ディディエ・デシャン  A   フェルナンド・サントス  S

【フ】
ディミトリ・パイェ(70)→キングズリー・コマン(75)
オリビエ・ジルー(45)→ピエール・アンドレ・ジニャック(60)
ムサ・シソッコ(70)→アントニー・マルシアル ?

【ポ】
クリスチアーノ・ロナウド(50)→リカルド・クアレスマ(70)
アドリエン・シウバ(50)→ジョアン・モウチーニョ(60)
レナト・サンチェス(65)→エデル(65)


【フランス】

この日は攻守のつなぎ役となる中盤のシソッコ、マトゥイディが躍動する、「良い時のフランス」だったが、
最後までポルトガルの堅陣を崩すことができなかった。
大会を通して絶好調だったグリーズマンがこの日は輝けず、ジルーはほぼノーインパクト。
準優勝という成績は決して悪くないものではあるが、優勝の絶好のチャンスだっただけに失望も大きいだろう。
コマン、ジニャックの投入とデシャン采配は悪くなかったのだが……。

【ポルトガル】 

恐るべきしぶとさ。恐るべきサントス監督の采配だ。
前半早々にロナウドが負傷交代したダメージをものともせず、これまで通りしぶとくしぶとく戦ったポルトガルは、
この日も延長戦に突入。 そこで輝いたのが交代出場のエデルだった。
ゴール以外にも、身体を張って潰れ役になるなど、フランスのジルーとは対照的な活躍ぶりで、ポルトガルを優勝へと導いた。
GKパトリーシオと迷ったが、MOMはラファエウに。守りだけではなく、オーバーラップでポルトガルの攻撃に厚みをもたらしていた。ナニ、クアレスマ、ジョアン・マリオ、レナト・サンチェスなど、各々が奮闘し、見事に初優勝。
特に素晴らしいサッカーをしていたわけではないが、今大会のポルトガルは、とにかくタフで、粘り強い。
そんなここまでの印象どおりの戦いで、開催国フランスに「大金星」をあげた。

Euro2016 準決勝 ドイツVSフランス

   ドイツ  0-2     フランス

主審 D
試合内容  B
MOM FW アントワン・グリーズマン(80)(フランス)

GK ノイアー(60)         ロリス(75)
DF ボアテンク(55)        コシールニー(65)
  へクター(50)          ウンティティ(65)
  キンミッヒ(40)         エブラ(65)
  ヘーベデス(55)        サーニャ(35)
MF クロース(65)         マトゥイディ(65)
   エジル(55)          ポグバ(65)
   ジャン(60)          パイェ(65)
   ドラクスラー(55)        シソッコ(65)
   シュバインシュタイガー(60) FW グリーズマン(80)
FW ミュラー(50)           ジルー(55)

監督 レーヴ B      デシャン  B

【ド】
ボアテンク(55)→ムスタフィ(50)
ジャン(60)→ゲッツェ D
シュバインシュタイガー(60)→サネ B-

【フ】
パイェ(65)→カンテ B-
ジルー(55)→ジニャック C
グリーズマン(80)→キャバイェ ?


【ドイツ】

敗れてなお、ドイツの方が実力では上だったという印象を与えた。
それだけに敗退は残念だが、欠点のないチームなど存在しない。敗因は確かに存在する。

真っ先に挙げられるのが純正FWの不在だ。
前線で基準点となれるゴメスの不在により、ボールの収まりどころがなく、先制し、ゴール前に人数をかけて守るフランスの守備を崩すことができなかった。
ゴメスの負傷自体は不運とも言えるが、ドイツほどのサッカー大国なのだから、純正FWがゴメスただ一人しかいないというのはやはり問題だ。
イーブンの状況、あるいは先制してしまえば何とかなるかもしれないが、相手にリードを許した時、
ゴール前にフィジカルの強い選手が1人もいないのは厳しい。

また、2失点目のキンミッヒのミス……パスを出したヘーベデスのミスとも言えるが、あれは酷い。
あんな場所でボールを奪われたら、失点を喫するのは当然だ。
どうもノイアーの飛び出しミスを云々する声をよく見るが、これはノイアーではなく、トラップミスのキンミッヒ、パスミスのヘーベデスに責任を求めるべきだ。


【フランス】

MOMは当然グリーズマンだ。フランスがこのまま優勝すれば大会MVPは間違いなく彼だろう。
Euro2016という大会は、『グリーズマンの大会』として記憶される事となる……決勝で無事勝てばの話ではあるけれど。

ドイツ相手の勝利は正当なものだ。
しかしその上で言いたい事があるならば、今日もフランスよりの笛を吹いた、イタリア人主審ニコラ・リッツォーリの、開催国贔屓の笛である。
アイルランド戦で、フランスのゴールをお膳立てした彼に、
フランス戦の笛を吹かせるべきではないという常識的な判断は、Uefaの上層部にはなかったのだろうか?
シュバインシュタイガーのあの程度のハンドをPKにするぐらいなら、エリア内で二度にわたって相手の身体を上から抑え込んでいたサーニャのプレイを見逃すべきではない。

世紀の誤審とまでは言わない。しかし、『ホームアドバンテージ』の恩恵を大いに受けたチームが
大会を優勝する。
これほど、萎える展開があろうか。出来レースのようなものである。



 

Euro2016 準決勝 ポルトガルVSウェールズ

   ポルトガル  2-0      ウェールズ

主審  B-
試合内容 C+
MOM FW クリスチアーノ・ロナウド(70)(ポルトガル)

GK ルイ・パトリーシオ(65)    ヘネシー(45)
DF ブルーノ・アウベス(65)    チェスター(45)
  フォンテ(60)         ガンター(55)
  セドリック(60)        ニール・テイラー(55)
  ラファエウ(60)      アシュリー・ウィリアムズ(55)
MF ダニーロ(70)    DF コリンズ(40)
   アドリエン・シウバ(55) MF  レドリー(45)
   ジョアン・マリオ(50)     アレン(20)
   レナト・サンチェス(55)    キング(45)
FW クリスチアーノ・ロナウド(70)  ベイル(65)
   ナニ(65)         ロブソン・カヌー(55)

監督 フェルナンド・サントス A   コールマン B

【ポ】
レナト・サンチェス(55)→アンドレ・ゴメス B+
アドリエン・シウバ(55)→ジョアン・モウチーニョ ?
ナニ(65)→クアレスマ ?

【ウェ】
レドリー(45)→ヴォークス C
ロブソン・カヌー(55)→チャーチ C
コリンズ(40)→ジョナサン・ウィリアムズ C+


【ポルトガル】

しぶとい。そして勝負強い。ここまでの5戦、ポルトガルの成績は90分に限定するならば0勝5分0敗である。
運に恵まれた。アイスランド、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、ポーランド、ウェールズ。
クロアチアは強豪だし、アイスランド、ハンガリー、ウェールズといった今大会を彩った名脇役達を過小評価するわけではないが、やはりドイツやフランス、スペインやイタリアとは違う。
つまらない。これもまた真理だ。クロアチア戦での120分間は、拷問のようだった。

それでもポルトガルは勝ち上がってきた。運だけで、決勝まで駒を進められるわけがない。

ポルトガル躍進の最大の立役者はフェルナンド・サントス監督その人だろう。
2014年のワールドカップで審判に暴言を吐き、数試合ベンチ入りが禁止されていた状況で、
それでも彼に白羽の矢を立てたポルトガルサッカー協会の英断も評価できるところだ。

予選リーグ、サントス監督は右SBにヴィエイリーニャを起用。
この時点でのポルトガルのサッカーは、トーナメント以降の「退屈さ」とは無縁の、攻めて攻めて攻めまくるチームだった。アイスランド、オーストリア相手に1得点しか取れなかったのは、前線の決定力不足によるもので、
試合を支配していたのは彼らだった。
その攻撃的な姿勢がピークを迎えたのは3-3の乱戦と化したハンガリー戦。
サントス監督は悟ったのかもしれない。この魅力的なサッカーでは、トーナメントは勝ちあがれない、と。
クロアチア戦、右SBには守備的なセドリックが起用され、ポルトガルは突如「退屈で硬い」チームへと変貌した。

怪我によるものなのかもしれないが、目まぐるしく変わるスタメンもまた、今大会のポルトガルの特徴だろう。
GKルイ・パトリーシオ、FWのナニとクリスチアーノ・ロナウド。
毎試合登場するのはこの3人ぐらいだ。
初戦のアイスランド戦、リカルド・カルバーリョとペペ、ヴィエイリーニャとラファエウのセットでスタートした最終ラインは、このウェールズ戦ではブルーノ・アウベスとフォンテ、セドリックとラファエウと一新されていた。
唯一変更の無いラファエウも、クロアチア戦やポーランド戦ではエリゼウが起用されていた。
ペペの怪我もあるが、全ての選手を起用している事になる。
中盤も、ダニーロ、アドリエン・シウバ、ジョアン・モウチーニョ、ウィリアム・カルバーリョ、ジョアン・マリオ、アンドレ・ゴメス、レナト・サンチェスと、目まぐるしく構成が変わるが、誰が出ても一定の力を発揮している。
前線ではジョーカーのクアレスマが存在感を見せつけた。

この分厚い選手層をもってすれば、ちょっとやそっとの怪我人や出場停止者で不安になる事はない。
選手の疲労も分散しており、コンディションも良好だ。
勿論、小国であるウェールズと、強豪国のポルトガルを比較するのも酷な話ではあるが、
これが、ラムジー1人を欠くと途端に機能不全となってしまうウェールズとは違うところだ。

ただ……そんなポルトガルの決勝進出は確かに素晴らしいのだが、やはり「つまらなさ」は問題だろう。
巷では2004のギリシャと比較する声もあるようだが、個人的には的外れのように思う。
まず、2004のギリシャは今大会のアイスランドやハンガリー、ウェールズのような立場の弱小国であり、完全なるアウトサイダーと目されていた。
しかしポルトガルは違う。絶対的な優勝候補ではないものの、ベスト4、ベスト8候補の強豪国である。
更に言わせてもらえば、明らかに2004のギリシャの方が面白かった。
これは「あのギリシャがどこまで行くんだ!?」的な興奮と混ざり合っているため、一概にサッカーの質そのものとの比較ではないが、
今までメジャートーナメントで1勝も上げていなかったギリシャが、開催国のポルトガルを二度にわたって下し、フランスも下した姿には、興奮を覚えたものだ。
しかし今大会のポルトガルの決勝進出には、興奮はない。

サッカーの強豪国が、つまらないサッカーで粛々と勝ち上がっていくのを、冷めた目で眺めているだけだ。
その選手層、サントス監督の手腕は見事だ。
誤審で勝ち上がったわけでもなく、ファイナリストに相応しくないとは思わない。
トーナメントの山だって、事前に決められたルール通りだ。
いくら向こうの山のドイツ、フランス、イタリア、スペインよりも質が低いのでは?と言ったところでどうしょうもない。

しかし……。
決勝で当たるのは、ドイツかフランスか。いずれにせよ、今大会でポルトガルが今まで当たってきたチームとは、
明らかに2ランクは上のチームである。
その決勝で勝利した時……ポルトガルは、「退屈だ」という声を堂々と跳ね返し、王者として認められるだろう。

できれば、ヴィエイリーニャを起用し、攻撃的サッカーを演じた予選リーグのポルトガルの姿を決勝では観たい。
そうなれば、たとえ敗北してもサッカーファンの記憶には美しい敗者として、良い印象が残るはずだ。
あるいは、退屈なサッカーでも勝利すれば、王者の称号が得られるだろう。
問題は、つまらないサッカーで敗北した時。
その場合は……「トーナメントの山の不均衡」を嘆く、サッカーファンの声がこだまするに違いない。

2010ワールドカップの、『退屈な準優勝者』オランダを人々は美しい記憶として覚えているだろうか?
答えは否だ。
1998ワールドカップの、『美しくベスト4』に散ったオランダに比べれば、2010のオランダなど語る価値もない。


【ウェールズ】

敗因はなんと言ってもラムジーの不在に尽きるだろう。
今大会ここまでウェールズの躍進を支えてきたのは、中盤のアレン、ラムジー、そして前線のベイル。
この三本柱の一柱でも欠ければ、彼らのサッカーは機能不全に陥る。
選手層の厚薄こそが、ポルトガルとの最大の違いであり、小国ウェールズ故の限界でもある。

この日はアレンも中盤で不用意なボールロストとファウルを連発するなど冴えがなく、
前線で一人ベイルが奮闘する姿だけが印象に残った。
しかし、ウェールズにとってベスト4進出は素晴らしい快挙。
敗色濃厚となったチームを最後まで支えたサポーターの、心を震わせる応援とともに、
彼らの魅せたフットボールは世界中のファンの記憶に残るだろう。
 

Euro2016 準々決勝 フランスVSアイスランド

    フランス  5-2   アイスランド

主審  B
試合内容 B-
MOM FW アントワン・グリーズマン(80)(フランス)

GK ロリス(60)       ハルドールソン(40)
DF コシールニー(55)    サイバルソン(45)
  サーニャ(50)      ラグナル・シグルドソン(40)
  エブラ(50)       アルナソン(40)
  ウンティティ(55)     スクラーソン(45)
MF マトゥイディ(60)     グズムンドソン(40)
  ポグバ(75)       グンナルソン(45)
  シソッコ(65)       ギルフィ・シグルドソン(60)
  パイェ(75)        ビルキル・ビャルナソン(45)
FW グリーズマン(80)     シグソールソン(55)
   ジルー(70)       ボドバルソン(40)

監督 デシャン B+      ラガーベック B

【フ】
ジルー(70)→ジニャック(60)
コシールニー(55)→マンガラ(55)
パイェ(75)→コマン ?

【ア】
アルナソン(40)→インガソン(50)
ボドバルソン(40)→フィンボガソン(45)
シグソールソン(55)→グジョンセン ?

【フランス】

相手の守備力の問題もあるかもしれないが、中盤で自由を享受したフランス攻撃陣は、素晴らしい連動で
次々とゴールを奪った。
予選リーグでの拙攻から見違えた要因は、ポグバの復調が大きい。
ポグバ、そしてマトゥイディが(マトゥイディはまだまだだが)前線と中盤を繋ぐ接着剤となることで、フランスの攻撃は華麗な色彩を帯びる。
今大会絶好調のパイェ、グリーズマンはこの日も素晴らしく、不調だったジルーも2ゴールと、準決勝ドイツ戦に向けて、そして優勝に向けていよいよ調子が上がってきた。
ただ、アイスランドに2失点を喫した守備は懸念材料だ。
いくらアイスランドが、ここまで全試合にゴールを挙げてきたチームとはいえ、2点は取られすぎである。
今一度、マークの受け渡しなど、細かな守備の修正を確認したいところ。

【アイスランド】 

偉大なるアイスランドの冒険が終わった。
雨の影響か、はたまたアウェイだからか、前半早い時間に2失点を喫し気落ちしたか、
今日のアイスランドはいつもに比べ球際が大人しく、今大会を湧かせてきた彼ららしいサッカーはあまり見られなかった。
しかしそれでも、後半2ゴールを奪ってみせ、サポーターの期待に応えたのはさすがだ。
アイスランドは全試合で相手からゴールを奪った。今大会、PK以外の失点がないフランスからも2ゴールを奪った。
負けたチームを讃えるアイスランドサポーター、恒例のワーチャント。
最後まで気持ちの良いチームだった。彼らの健闘を讃えたい。

Euro2016 準々決勝 ドイツVSイタリア

   ドイツ  1-1     イタリア
PK                     6-5

主審   B
試合内容 A
MOM ヨアヒム・レーヴ監督 (ドイツ)

GK ノイアー(65)     ブッフォン(60)
DF  フンメルス(65)    ボヌッチ(55)
   ボアテンク(55)    キエッリーニ(60)
   へクター(65)     バルザーリ(55)
   ヘーベデス(55)     フロレンツィ(65)
   キンミッヒ(50)      デ・シーリオ(65)
MF  ケディラ(50)  ストゥラーロ(40)
   エジル(60)     ジャッケリーニ(35)
   ミュラー(50)     パローロ(45)
   クロース(65) FW ペッレ(40)
FW ゴメス(60)       エデル(45)

監督 レーヴ S       コンテ B+

【ド】
ケディラ(50)→シュバインシュタイガー(50)
ゴメス(60)→ドラクスラー(60)

【イ】
フロレンツィ(65)→ダルミアン C
エデル(45)→インシーニエ B+
キエッリーニ(60)→ザザ E


【ドイツ】

1対1でも勝ち、戦術でも勝った。
ここに来て、優勝候補に名乗りを挙げたイタリアに対し、万全の体制で勝負に挑んだドイツ。
その「油断のなさ」、相手への研究、修正力、そしてそれをやりきる力。
ドイツのレベルの高さを見せつける、素晴らしい勝利だった。

内容面でスペインを圧倒して勝ち進んできたイタリアに対し、本来、どちらかと言うとスペイン寄りのサッカーをするドイツは、「いつもどおりでは勝てない」と焦ったに違いない。
先制点を許し、縦に攻め急いだ結果、イタリアのショートカウンターを浴び続けたスペインを反面教師に
「縦に急ぐのは愚策」だということを悟ったのだろう。

そこでドイツは従来の4バックではなく、ヘーベデスを投入し5バック気味の3バックへと移行。
それだけではなく、ロングボールを多用してピッチを広く使い、意図的にボールを縦へと急がせない、相手を焦らすような戦いを見せた。
これは、PKに強いドイツとPKに弱いイタリアという伝統
「最悪、0-0のPKでも勝機がある」という自信から来る、余裕だったように思う。
まるで1-0でリードしているかのような、ポゼッション、ボール回しでイタリアを焦れさせたドイツ。
イタリアの守備の網にかからぬよう、安全第一でありながらロングレンジのパスを合わせるフィード力。
そして、中盤、最終ラインの争いで決して負けない球際の強さ。
文字どおりイタリアを「窒息」させた、ドイツ戦術の勝利だった。
その戦術の中心を1人選ぶのは難しいが、巧みな位置取りでパスコースを引き出したへクターの貢献は大きかったように思う。

後半15分過ぎから、イタリアが不要なファウルを連発したのは、ドイツの仕掛けた我慢比べに耐えきれなかったからだろう。
イタリアからすれば、過去のデータからPKは避けたいという思いもあったはずだ。
そのメンタルの動揺を素早く突いたドイツの先制点は完璧だった。
不運な形でPKを献上し、追いつかれてからも、従来の「窒息」戦術をやりきったメンタルの強さも含め、
試合巧者たるドイツの力、メンタルと、戦術プランの確かさを感じさせられる。

MOMは、個人にというよりもチーム全体に。
少し反則気味かなとも思ったが、この対イタリアシフトをチームに授けたレーヴ監督に捧げたい。


【イタリア】 

大会前は「史上最弱のイタリア」と揶揄されていた今大会のイタリア。
しかし、予選リーグではベルギーを、決勝トーナメントではスペインを内容面でも圧倒してその下馬評を覆してきた。
その見事な戦いぶりが、タレント力では圧倒的に優位である世界王者ドイツに、「対イタリアシフト」を決断させるまでに至ったのだ。

イタリアは、ドイツの敷いた「対イタリアシフト」を崩すことが結局できなかった。
やや幸運なPKを手に入れ、PK戦にまで持ち込んだものの結局破れてしまったが、
内容面では完敗だった。
大会前から危惧されていた「最弱」たるゆえんは、タレント力の差であり、1対1の強さの差である。
トッティやビエリのような、1対1で勝ちきる強さは、ペッレやエデルにはない。
結果、ペッレやエデルはドイツのへクターに、ヘーベデスに、フンメルスに完全に競り負けてしまった。
ピルロのような中盤のコンダクターも、ガットゥーゾのような1対1の鬼もイタリアにはいなかった。
ストゥラーロ、ジャッケリーニ、パローロの中盤は脆弱で、シュバインシュタイガー、クロースらに完全にゲームを支配されてしまった。
ボヌッチのロングフィードは大きな武器となったものの、中盤から前線にかけての1対1の弱さがドイツを崩せなかった大きな原因だ。

コンテ監督に落ち度はない。
むしろこの選手達を率いて、ここまで見事な戦いをしただけでも立派だと思う。
ザザのE評価は……試合終了間際に投入され、PKを外してしまった事によるもので、
評価不能とするかE評価とするかは迷った(彼のミスは詰まるところ1つだけだし、なんだかいじめみたいである)が……他の選手はPKも評価に含めているので、彼だけを例外とするのもどうかとは思い評価をつけた。


 
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