☆【GK】選出選手
ティボー・クルトワ(ベルギー)
ダニエル・スバシッチ(クロアチア)
カスパー・シュマイケル(デンマーク)
ここは割とすんなり決まった。
大会最優秀GKにも選ばれたクルトワは、とりわけブラジル戦の好守が印象深い。
ワールドカップ準優勝のスバシッチは、VSデンマーク、VSロシアのPK戦勝利の立役者だ。
最後の3人目は、そのクロアチアVSデンマーク戦で『鬼気迫るPK合戦』を演出したもう一人の守護神。
偉大な父ピーターが見守る前で、カスパーは父親と肩を並べるほどの凄みを見せた。
☆【GK】次点
No4はメキシコのオチョア。今大会でも再三のビッグセーブを見せた。
続いて、コスタリカのナバス。
チームは予選リーグ敗退してしまったが、そのセーブでブラジルを散々に苦しめた。
韓国のチョ・ヒョヌの活躍は、韓国にとって数少ない明るい希望だ。
☆【GK】残念だった選手
今大会はGKのミスも目についた。
あまり趣味の良いコーナーではないが、1番に挙げるならデヘア(スペイン)。
彼の不調は大いにスペインを苦しめ、シュートを撃たれれば入るという惨状だった。
途中でレイナに代える選択はあったように思うのだが……。
カバジェーロ(アルゼンチン)もやってしまった。
しかし、代役GKのアルマーニもあまり良いパフォーマンスではなく……。
他にも、川島、ムスレラ、ロリスなどが失点に直結するミスを犯しているが、
中でも川島は株を落としたか。
☆【DF】選出選手
ラファエル・ヴァラン(フランス)
シメ・ヴルサリコ(クロアチア)
ジョン・ストーンズ(イングランド)
ハリー・マグワイア(イングランド)
キーラン・トリッピアー(イングランド)
ディエゴ・ゴディン(ウルグアイ)
アンドレアス・グランクビスト(スウェーデン)
トーマス・ムニエ(ベルギー)
決勝のクロアチア戦、フランスの最終ラインを支えていたのは間違いなくヴァランだった。相棒のウンティティはVSオーストラリア戦での軽率なハンドなどもあり、選出できない。
ゴール前に鉄壁の守備陣を引き、あらゆる攻撃を跳ね返す『引きこもりサッカー』の使い手
ウルグアイとスウェーデン。
その堅守を引っ張っていたのはゴディンとグランクビストだ。
イングランドの3人は、守備というよりも攻撃面で異彩を放った。
あまりにも強烈なセットプレー。
正確無比なプレースキッカー、トリッピアー(ヤングが蹴る事もあったが)、そして空中戦無双のマグワイアとストーンズ。イングランドベスト4の立役者は彼ら3人の存在が大きい。
ムニエは特別、パフォーマンスが際立ったわけではない。
しかし、ベルギー代表における『唯一、頼りになるWB』として独特の3バックシステムを成り立たせていたのは紛れもなく彼だった。
今大会でもトップクラスのSBとしてクロアチアを引っ張ったのがヴルサリコ。守備も安定し、攻撃面でのオーバーラップも光っていた。
☆【DF】次点
ウルグアイの左サイドバック、ラクサ―ルのハッスルプレイは見逃せない。
コロンビアのCBジェリー・ミナは3試合で3得点。セットプレーから無類の得点力を誇った。
余計な騒動を起こしてしまったのは残念だが、ピッチ上では素晴らしかったクロアチアのヴィダにも触れておきたい。尻上がりに調子を上げ、その気迫でチームを引っ張った一人だ。
大会前弱点と言われたフランスのSBを、しっかり引き締めたのがリュカ・エルナンデスだ。逆サイドのパバールも悪くなかったが、より優れていたのはリュカの方だろう。オーバーラップが少ないのは残念だが、こと守備面に関しては完璧に近い。
☆【DF】残念だった選手
真っ先に挙がるのは、アルゼンチンのオタメンディだ。
粗削りで粗暴だった彼だが、最近のマンチェスター・シティでの活躍ぶりで悪癖は治ったのかと思っていた。しかし試合に負けていると、苛立ち紛れにラフプレーをする悪癖は治っていなかった。
今大会、アルゼンチンが負けた試合は2試合。
そして2試合とも、彼のレッドカード相当のタックルを見る羽目になった。
メンタルがコントロールできないなら、ピッチに立つべきではない。
クオリティ不足を感じたのはドイツのリュディガー。スウェーデン戦で、フンメルスの代役を務めた彼は、相棒のボアテンクに散々負担をかけてしまった。
リュディガーの分まで働かなければならなかった結果、ボアテンクは2枚目のイエローで退場してしまった。
☆【MF:中盤の底】選出選手
DH エヌゴロ・カンテ(フランス)
CH ポール・ポグバ(フランス)
CH ルカ・モドリッチ(クロアチア)
大会MVPにして今大会最も輝いた司令塔はモドリッチだった。
クロアチアの攻撃を自由にオーガナイズした視野の広さは、レアル・マドリ―の同僚クロース(ドイツ代表)ばりだった。
シャビ、ピルロ、シャビ・アロンソ、シュバインシュタイガーらが引退した現在のサッカー界において、『マエストロ』の称号に相応しい。
フランス優勝を守備面から支えたのは鉄壁の中盤三人衆でもある、
カンテ、マトゥイディ、ポグバ。この三人の壁を突き崩せたのは、クロアチアしかいなかった。
三人とも選ぶにふさわしいパフォーマンスだったが、さすがに多すぎると感じたのでマトゥイディには泣く泣く次点に回ってもらった
(決勝のゴールがあるまでは、ポグバではなくマトゥイディにしようと思っていた)。
☆【MF:中盤の底】 次点
第二の司令塔としてやや影が薄かったものの、ここぞという場面では登場したのが
クロアチアのラキティッチと、ベルギーのデ・ブライネ。デ・ブライネは二列目部門で選出するかギリギリ迷ったが、人数の関係で選外にさせていただいた。
ブラジルの中盤を一手に引き締めていたのがカゼミーロ。
彼の出場停止の影響は甚大で、ベルギー戦の敗因の最たるものだろう。
また、二列目から飛び出してブラジルの攻撃に厚みを加えていたパウリーニョの貢献も素晴らしかった。
大物感は欠けるが、名バイプレイヤー達も紹介したい。
ウルグアイでは敵に食らいつく粘り強い守備でインパクトを与えたトレイラ。
日本では、攻撃のタクトを振るった柴崎のクオリティが高さが印象に残った。
オーストラリアのムーイと並んで、アジア屈指の司令塔だ。
アルゼンチンのマスチェラーノとバネガは、崩壊するアルゼンチンの中で唯一、中盤で戦えていた選手たちだ。彼らの頑張りがなければ、アルゼンチンは予選リーグすら突破できなかったに違いない。
サウジアラビア戦でセンセーショナルな活躍を見せ、スペイン戦では前線を務めたゴロビンも、
司令塔として今後が楽しみな選手の一人だ。
コロンビアでは不調のハメスに代わって、代役のキンテーロが存在感を見せていた。
アルゼンチン、フランスに『中盤勝負』で勝ったクロアチアから、支配権を奪取し、
最後まで準優勝国を苦しめたデンマークでは、ディレイニーの巧みなパス出しが光った。
スウェーデンでは、フォシュベリ、ラーションの2人が、最終ラインと前線の橋渡しを力強く演じた。
☆【MF:中盤の底】残念だった選手
残念だった選手、と来ると真っ先に名前が挙がるドイツでは、
ケディラ、ギュンドアン、エジルのトルコ系移民3選手が軒並み不調に終わった。
特にギュンドアンとエジルは騒動を自ら起こしてしまい、ケディラは騒動には(恐らく)加わらなかったがパフォーマンスレベルは、チームでも最低ランクだった。
『不運だった選手・やらかしてしまった選手』はまたしてもブラジルのフェルナンジーニョ。
前回大会ドイツ戦1-7のS級戦犯でもある彼が、今大会でもベルギー戦でやらかしてしまった。
どうにもワールドカップとは相性が悪い彼。マンチェスター・シティでは良いプレイヤーなのだが……。
やらかし、と言えばコロンビアのカルロス・サンチェスが日本でもおなじみだろう。
日本戦のハンドだけでなく、イングランド戦でも(やや厳しいジャッジだが)PKを取られるなど、
とにかく運がなかった印象だ。
元々は粘り強い守備で、あのネイマールをも苦しめた選手(コパアメリカなど)。
悪い選手ではないだけに、こんな形で注目を浴びたのは不運としか言えない。
そのコロンビアでは、怪我の影響もあったとはいえハメスの不調が残念だった。
怪我なので仕方ないが、彼の活躍を楽しみにしていたファンもきっと多かったはずだ。
よく知らない選手なので、期待外れも何もないのだが、セルビアのミリンコビッチ・サビッチは凄い選手だと散々聞かされていた。
その評判を知らなければ名前も覚えられなかったに違いない。
【サイドアタッカー&2列目&FW】 選出選手
キリアン・エムバペ(フランス)
アントワーヌ・グリーズマン(フランス)
エデン・アザール(ベルギー)
ネイマール(ブラジル)
フィリッペ・コウチーニョ(ブラジル)
クリスチアーノ・ロナウド(ポルトガル)
リオネル・メッシ(アルゼンチン)
ジエゴ・コスタ(スペイン)
エディソン・カバーニ(ウルグアイ)
優勝したフランスからは、個人的大会MVPのエムバペと副官グリーズマンを推す。
得点こそなかったものの、ジルー(次点に回ってもらった)の存在感も素晴らしく、この3人のユニットはバッチリ決まっていた。
フランス以外から選ぶなら、鮮烈なインパクトを残したエデン・アザール。
3位という望外の成績を残せた最大の立役者だろう。
限られた選手だけが持つ、スペシャルな輝きを放っていた。
王国ブラジルを助け続けたのがコウチーニョ。
彼の2ゴールが、ブラジルを決勝トーナメント進出へと導いた。ネイマールの副官としての存在感は頼もしい限りだ。
そのネイマールは毀誉褒貶が相半ばした。
その『汚い』プレイに批判が集中するのは当然で、個人的にもあまり好きな選手ではないが、
それでも彼の活躍自体を否定する事は難しい。
同じ事はメッシ、クリスチアーノ・ロナウドの2人にも言える。
サッカー界最高峰のタレントだけに、チームを更なる上位へ導いてほしいという気持ちもあるが、
破滅的なアルゼンチンで、悲壮な孤軍奮闘を見せていたのは誰あろうメッシだった。
ポルトガルは、アルゼンチンほど酷くはなかったが、強国ウルグアイとの対決に敗れベスト16止まり。
とはいえロナウドは4試合で4ゴール。
とりわけ、スペイン戦でのハットトリックが印象深く、ウルグアイ戦で負傷のカバーニに肩を貸したシーンも感動的だった。
そのカバーニは、ポルトガル戦の2ゴールなどで完全にウルグアイの主役の一人となった。
以前から、ウルグアイの攻撃陣をスアレスと共に構成していた彼だったが、今まではワールドカップとンあると低調に終わっていた。
そんな彼が、本来の力を大舞台で披露し、スーパーな選手である事を証明してくれた。その試合で負傷してしまい、フランス戦に出られなかったのはつくづく残念だったと思う。
最後に選んだのはスペインを早期敗退の危機から救ったジエゴ・コスタだ。
大会前日の監督解任に揺れたスペインは、開始3分に先制点を許す。
彼の大活躍がなければ、スペインの今大会は初戦で終わっていたかもしれない。
スペインに久しぶりに表れた頼りになるFWだったが、欲を言えばロシア戦でも結果を残したかった。
【サイドアタッカー&2列目&FW】 次点
得点王の名前がないじゃないか、と言われるかもしれない。イングランドのハリー・ケインだ。
しかし、得点の内実を見れば、パナマやチュニジアと言った『守乱』チームからの固め取りで、特に印象が良いわけではない。とはいえ、仮にも得点王。ここで祝福しておこう。
同様の選手としてベルギーのルカクが挙げられるが、得点外の場面でもケインよりボールに絡めており、印象は良い。
クロアチアのアタッカー陣はそれぞれ、素晴らしいパフォーマンスを見せた。
最前線で身体を張ったマンジュキッチ、サイドを切り裂いたレビッチとペリシッチ。
ただ、マンジュキッチは決勝戦の印象が悪く、ペリシッチは好不調の波が激しすぎた。
逆にレビッチはコンスタントだが、『鮮烈な試合』というものはなかった。
とはいえ、いずれ劣らぬ好タレント揃いだ。
カバーニに席を譲ったが、名相棒スアレスはスーパースターたる所以を見せた。
メッシが孤軍奮闘する中、遅れてやってきた名相棒ディ・マリア。フランス戦では、必死の抵抗を見せてくれた。
南米からもう一人を挙げるなら、ペルーのカリージョだ。サイドバックのアドビングラ(書き忘れたがこの選手も、注目選手だ)と繰り出す右サイドの破壊力はなかなかのもので、こと、『娯楽性』なら南米一だった。
ドイツを破った中米メキシコでは、ロサーノ、ベラ、チチャリートのトライアングルが強烈なカウンターアタックを繰り出した。一人だけを挙げるならロサーノだろうが、チチャリートのポストプレイも見事だった。
開催国ロシアを勇気づけたのは、ラッキーボーイのチェリシェフと最前線で構える長身FWのジューバ。実力以上のものを出し切り、大会に確かな爪痕を残した。
ナイジェリアのムサがアイスランド戦で見せたゴールにも触れておきたい。
これぞアフリカの選手、というスプリント力で、相手DFとのスピードの違いを見せつけた。
北アフリカからはモロッコの華麗な攻撃陣。特に右サイド、ノルディン・アムラバットの突破力は見事で、観ているファンを楽しませてくれた。彼の負傷により交代で出てきた弟、ソフィアン・アムラバットが戦犯になってしまったのは残念だったが……。
スウェーデンの引きこもりサッカーを最前線で支えたのがベリ&トイボネンのペア。クオリティはベリの方が高く、彼のような選手がいるからこそアバウトなロングボールも効果的なのだと感じさせた。
大型FWでは大会前全く知らなかったセルビアのミトロビッチも、空中戦で存在感を見せてくれた。
【サイドアタッカー&2列目&FW】 残念だった選手
まずはクロアチアの二コラ・カリニッチだろう。
本当に負傷していたのかもしれないが、伝え聞くところでは『仮病』の疑いが濃厚で、代表を追放されてしまった。ただでさえハードスケジュールに苦しんだクロアチア。
その足を一番に引っ張った罪は重い。彼がいれば、もう少しマンジュキッチを休ませられたはずだ。
クラブチーム同様、惨めなパフォーマンスに終始してしまったのがフランスのデンベレだ。
単独突破しては潰されるだけ。
彼をジルーに代えたペルー戦以降、フランスは優勝街道を突き進んでいった。
それどころか練習態度をデシャンに批判され、半ば戦力外状態に落ち果てた。
そこまで酷かったわけではないものの、コウチーニョ、ネイマールが輝き、ウィリアンも徐々に調子を上げたブラジルで、最後まで波に乗れなかったのがガブリエウ・ジェズスだ。彼がゴールを挙げてくれれば、もう少し楽な戦いができたはずだ。
デンマークで完全に足を引っ張っていたのが最前線のニコライ・ヨルゲンセン。
ポストプレーもできず、ゴールの匂いも皆無な上、なぜか監督に重用され、最後にはPKまで外してしまった。左サイドのピオネ・シストも、セルタでのプレイを知っている身としては、もっとできるはずだと感じた。
デンマークの攻撃がエリクセンとユスフ・ポウルセンだけに終始してしまったのは、この2人の不調が原因だろう。
他に期待外れと言えば……ゴロゴロいるといえばいる。
ポーランドのレバンドフスキ、セネガルのマネ、エジプトのサラー、コロンビアのファルカオあたりが代表格だろう。
だが、レバンドフスキとサラーに関しては、チーム自体が悪すぎた。
☆監督
ディディエ・デシャン(フランス)
最優秀監督と言えばデシャンだろう。何も優勝したから言うのではない。
2014年から継続して強化してきた中盤3枚+カウンターの威力は、カンテとエムバペの登場により更に高まった。
調子が悪いと見るや、すぐさま交代させるその判断も実に妥当で、奇策の類は一切ないが
実に理解しやすく、効果的でソツのない手を打ってくる。
問題児と言われるベンゼマやベナルファ、ナスリらを追放し、チームから不協和音を駆逐したそのチーム作りも含め、最優秀監督の名は彼に相応しい。
☆良かった監督
成績順になってしまうが、クロアチアのダリッチは、『クオリティが高く、団結して、闘えるチーム』を作り上げてきた。
控え選手の層が薄いため、用兵術の腕はあまりわからなかったが、優勝候補に挙げる人間がほぼいなかったであろうクロアチアで成し遂げた準優勝は、あまりにも偉大だ。
乏しい戦力を練りに練り上げ、多彩なセットプレイを用意してチームを勝たせた、イングランドのサウスゲイト。イングランドベスト4進出の最大の立役者は彼だろう。
ここまでセットプレイに注力し、それがことごとく当たるとは、恐れ入った。
ベルギーのマルティネスは、有り余るタレントを活かせなかった前任者ヴィルモッツのチームを、
より良い形に進化させた。
攻撃の選手を無理やりスタメンに並べまくった、バランスの悪い布陣もご愛敬。日本戦で攻守のバランスを見出すと、新たなベスト11をブラジルにぶつけ、見事に勝利した。
今大会は、非常に組織化された好チームが多く、それらはやはり監督の手腕に起因すると思われるが、
いちいち挙げていくとキリがない。
戦術完成度が高いと感じたのは、ウルグアイのタバレス、スウェーデンのアンデションあたりだろうか。
メキシコのオソリオは、ドイツ戦で最高のサッカーを見せてくれたが、その後が続かなかったのが残念。
ブラジルのチッチは、ベルギー戦で敗れ期待外れの成績に終わったものの、決して悪い采配でもなければチームでもなかった。
特に惨状を呈しているライバル国と比べれば、雲泥の安定感だった。
【期待外れだった監督】
真っ先に挙がるのがレーヴだろう。なぜマリオ・ゴメスを先発で使わなかったのか。
なぜゴレツカをサイドで起用したのか。
ドイツが敗退したS級戦犯は、間違いなく彼だ。
とはいえ、今までドイツを栄光に導いてきたのは事実。次回の逆襲に期待したい。
スペインのイエロに罪はない。
何せ、大会前日に前監督のロペテギが不祥事により解任され、ほぼ素人の彼が緊急登板したのだ。
戦術オプションのなさや、デヘアの継続起用など、色々経験不足を感じたのは確かだ。
ここにロペテギがいればなぁと感じたのも確か。
しかし、ロペテギ解任はロペテギの自業自得だし、イエロに罪はない。
例えて言うなら、ベテランビジネスマンが丁々発止の交渉を繰り広げる場に、アルバイト店員が紛れ込んでしまったようなものなのだ。彼を叩くのは、あまりにも酷ではなかろうか。
イエロほど同情の余地があるか疑問だが、アルゼンチンのサンパオリにもさほど非は感じられない。
チームは崩壊しバラバラで、『優勝候補(笑)』と『世界最高選手メッシ』の看板だけが、
場違いなネオンサインで注目を浴びているように見えた。
内情はみすぼらしく、散々で、まるで良い所がなかった。
しかし、それはサンパオリの責任なのだろうか?
今大会のアルゼンチンを見て思い出すのは2010年、暗黒のマラドーナ時代だ。
あの時もメッシだけが頼りで、チームはバラバラのどん底だった。
それから一体アルゼンチンはどんな経歴を歩んだだろうか。
マラドーナ後に招聘したバティスタは1年で解雇された。
次に招聘したサベーラが思わぬ大ヒットで、アルゼンチンは前回大会準優勝を遂げた。
しかしその後も監督をコロコロ代え、ヘラルド・マルティーノが去り、バウサが去り、
去年就任したのがサンパオリだ。
2004年にビエルサ→ぺケルマンと交代した後、この国では平均2年で監督が代わり続けている。
こんな状態で一体何ができるのだろうか。
ティボー・クルトワ(ベルギー)
ダニエル・スバシッチ(クロアチア)
カスパー・シュマイケル(デンマーク)
ここは割とすんなり決まった。
大会最優秀GKにも選ばれたクルトワは、とりわけブラジル戦の好守が印象深い。
ワールドカップ準優勝のスバシッチは、VSデンマーク、VSロシアのPK戦勝利の立役者だ。
最後の3人目は、そのクロアチアVSデンマーク戦で『鬼気迫るPK合戦』を演出したもう一人の守護神。
偉大な父ピーターが見守る前で、カスパーは父親と肩を並べるほどの凄みを見せた。
☆【GK】次点
No4はメキシコのオチョア。今大会でも再三のビッグセーブを見せた。
続いて、コスタリカのナバス。
チームは予選リーグ敗退してしまったが、そのセーブでブラジルを散々に苦しめた。
韓国のチョ・ヒョヌの活躍は、韓国にとって数少ない明るい希望だ。
☆【GK】残念だった選手
今大会はGKのミスも目についた。
あまり趣味の良いコーナーではないが、1番に挙げるならデヘア(スペイン)。
彼の不調は大いにスペインを苦しめ、シュートを撃たれれば入るという惨状だった。
途中でレイナに代える選択はあったように思うのだが……。
カバジェーロ(アルゼンチン)もやってしまった。
しかし、代役GKのアルマーニもあまり良いパフォーマンスではなく……。
他にも、川島、ムスレラ、ロリスなどが失点に直結するミスを犯しているが、
中でも川島は株を落としたか。
☆【DF】選出選手
ラファエル・ヴァラン(フランス)
シメ・ヴルサリコ(クロアチア)
ジョン・ストーンズ(イングランド)
ハリー・マグワイア(イングランド)
キーラン・トリッピアー(イングランド)
ディエゴ・ゴディン(ウルグアイ)
アンドレアス・グランクビスト(スウェーデン)
トーマス・ムニエ(ベルギー)
決勝のクロアチア戦、フランスの最終ラインを支えていたのは間違いなくヴァランだった。相棒のウンティティはVSオーストラリア戦での軽率なハンドなどもあり、選出できない。
ゴール前に鉄壁の守備陣を引き、あらゆる攻撃を跳ね返す『引きこもりサッカー』の使い手
ウルグアイとスウェーデン。
その堅守を引っ張っていたのはゴディンとグランクビストだ。
イングランドの3人は、守備というよりも攻撃面で異彩を放った。
あまりにも強烈なセットプレー。
正確無比なプレースキッカー、トリッピアー(ヤングが蹴る事もあったが)、そして空中戦無双のマグワイアとストーンズ。イングランドベスト4の立役者は彼ら3人の存在が大きい。
ムニエは特別、パフォーマンスが際立ったわけではない。
しかし、ベルギー代表における『唯一、頼りになるWB』として独特の3バックシステムを成り立たせていたのは紛れもなく彼だった。
今大会でもトップクラスのSBとしてクロアチアを引っ張ったのがヴルサリコ。守備も安定し、攻撃面でのオーバーラップも光っていた。
☆【DF】次点
ウルグアイの左サイドバック、ラクサ―ルのハッスルプレイは見逃せない。
コロンビアのCBジェリー・ミナは3試合で3得点。セットプレーから無類の得点力を誇った。
余計な騒動を起こしてしまったのは残念だが、ピッチ上では素晴らしかったクロアチアのヴィダにも触れておきたい。尻上がりに調子を上げ、その気迫でチームを引っ張った一人だ。
大会前弱点と言われたフランスのSBを、しっかり引き締めたのがリュカ・エルナンデスだ。逆サイドのパバールも悪くなかったが、より優れていたのはリュカの方だろう。オーバーラップが少ないのは残念だが、こと守備面に関しては完璧に近い。
☆【DF】残念だった選手
真っ先に挙がるのは、アルゼンチンのオタメンディだ。
粗削りで粗暴だった彼だが、最近のマンチェスター・シティでの活躍ぶりで悪癖は治ったのかと思っていた。しかし試合に負けていると、苛立ち紛れにラフプレーをする悪癖は治っていなかった。
今大会、アルゼンチンが負けた試合は2試合。
そして2試合とも、彼のレッドカード相当のタックルを見る羽目になった。
メンタルがコントロールできないなら、ピッチに立つべきではない。
クオリティ不足を感じたのはドイツのリュディガー。スウェーデン戦で、フンメルスの代役を務めた彼は、相棒のボアテンクに散々負担をかけてしまった。
リュディガーの分まで働かなければならなかった結果、ボアテンクは2枚目のイエローで退場してしまった。
☆【MF:中盤の底】選出選手
DH エヌゴロ・カンテ(フランス)
CH ポール・ポグバ(フランス)
CH ルカ・モドリッチ(クロアチア)
大会MVPにして今大会最も輝いた司令塔はモドリッチだった。
クロアチアの攻撃を自由にオーガナイズした視野の広さは、レアル・マドリ―の同僚クロース(ドイツ代表)ばりだった。
シャビ、ピルロ、シャビ・アロンソ、シュバインシュタイガーらが引退した現在のサッカー界において、『マエストロ』の称号に相応しい。
フランス優勝を守備面から支えたのは鉄壁の中盤三人衆でもある、
カンテ、マトゥイディ、ポグバ。この三人の壁を突き崩せたのは、クロアチアしかいなかった。
三人とも選ぶにふさわしいパフォーマンスだったが、さすがに多すぎると感じたのでマトゥイディには泣く泣く次点に回ってもらった
(決勝のゴールがあるまでは、ポグバではなくマトゥイディにしようと思っていた)。
☆【MF:中盤の底】 次点
第二の司令塔としてやや影が薄かったものの、ここぞという場面では登場したのが
クロアチアのラキティッチと、ベルギーのデ・ブライネ。デ・ブライネは二列目部門で選出するかギリギリ迷ったが、人数の関係で選外にさせていただいた。
ブラジルの中盤を一手に引き締めていたのがカゼミーロ。
彼の出場停止の影響は甚大で、ベルギー戦の敗因の最たるものだろう。
また、二列目から飛び出してブラジルの攻撃に厚みを加えていたパウリーニョの貢献も素晴らしかった。
大物感は欠けるが、名バイプレイヤー達も紹介したい。
ウルグアイでは敵に食らいつく粘り強い守備でインパクトを与えたトレイラ。
日本では、攻撃のタクトを振るった柴崎のクオリティが高さが印象に残った。
オーストラリアのムーイと並んで、アジア屈指の司令塔だ。
アルゼンチンのマスチェラーノとバネガは、崩壊するアルゼンチンの中で唯一、中盤で戦えていた選手たちだ。彼らの頑張りがなければ、アルゼンチンは予選リーグすら突破できなかったに違いない。
サウジアラビア戦でセンセーショナルな活躍を見せ、スペイン戦では前線を務めたゴロビンも、
司令塔として今後が楽しみな選手の一人だ。
コロンビアでは不調のハメスに代わって、代役のキンテーロが存在感を見せていた。
アルゼンチン、フランスに『中盤勝負』で勝ったクロアチアから、支配権を奪取し、
最後まで準優勝国を苦しめたデンマークでは、ディレイニーの巧みなパス出しが光った。
スウェーデンでは、フォシュベリ、ラーションの2人が、最終ラインと前線の橋渡しを力強く演じた。
☆【MF:中盤の底】残念だった選手
残念だった選手、と来ると真っ先に名前が挙がるドイツでは、
ケディラ、ギュンドアン、エジルのトルコ系移民3選手が軒並み不調に終わった。
特にギュンドアンとエジルは騒動を自ら起こしてしまい、ケディラは騒動には(恐らく)加わらなかったがパフォーマンスレベルは、チームでも最低ランクだった。
『不運だった選手・やらかしてしまった選手』はまたしてもブラジルのフェルナンジーニョ。
前回大会ドイツ戦1-7のS級戦犯でもある彼が、今大会でもベルギー戦でやらかしてしまった。
どうにもワールドカップとは相性が悪い彼。マンチェスター・シティでは良いプレイヤーなのだが……。
やらかし、と言えばコロンビアのカルロス・サンチェスが日本でもおなじみだろう。
日本戦のハンドだけでなく、イングランド戦でも(やや厳しいジャッジだが)PKを取られるなど、
とにかく運がなかった印象だ。
元々は粘り強い守備で、あのネイマールをも苦しめた選手(コパアメリカなど)。
悪い選手ではないだけに、こんな形で注目を浴びたのは不運としか言えない。
そのコロンビアでは、怪我の影響もあったとはいえハメスの不調が残念だった。
怪我なので仕方ないが、彼の活躍を楽しみにしていたファンもきっと多かったはずだ。
よく知らない選手なので、期待外れも何もないのだが、セルビアのミリンコビッチ・サビッチは凄い選手だと散々聞かされていた。
その評判を知らなければ名前も覚えられなかったに違いない。
【サイドアタッカー&2列目&FW】 選出選手
キリアン・エムバペ(フランス)
アントワーヌ・グリーズマン(フランス)
エデン・アザール(ベルギー)
ネイマール(ブラジル)
フィリッペ・コウチーニョ(ブラジル)
クリスチアーノ・ロナウド(ポルトガル)
リオネル・メッシ(アルゼンチン)
ジエゴ・コスタ(スペイン)
エディソン・カバーニ(ウルグアイ)
優勝したフランスからは、個人的大会MVPのエムバペと副官グリーズマンを推す。
得点こそなかったものの、ジルー(次点に回ってもらった)の存在感も素晴らしく、この3人のユニットはバッチリ決まっていた。
フランス以外から選ぶなら、鮮烈なインパクトを残したエデン・アザール。
3位という望外の成績を残せた最大の立役者だろう。
限られた選手だけが持つ、スペシャルな輝きを放っていた。
王国ブラジルを助け続けたのがコウチーニョ。
彼の2ゴールが、ブラジルを決勝トーナメント進出へと導いた。ネイマールの副官としての存在感は頼もしい限りだ。
そのネイマールは毀誉褒貶が相半ばした。
その『汚い』プレイに批判が集中するのは当然で、個人的にもあまり好きな選手ではないが、
それでも彼の活躍自体を否定する事は難しい。
同じ事はメッシ、クリスチアーノ・ロナウドの2人にも言える。
サッカー界最高峰のタレントだけに、チームを更なる上位へ導いてほしいという気持ちもあるが、
破滅的なアルゼンチンで、悲壮な孤軍奮闘を見せていたのは誰あろうメッシだった。
ポルトガルは、アルゼンチンほど酷くはなかったが、強国ウルグアイとの対決に敗れベスト16止まり。
とはいえロナウドは4試合で4ゴール。
とりわけ、スペイン戦でのハットトリックが印象深く、ウルグアイ戦で負傷のカバーニに肩を貸したシーンも感動的だった。
そのカバーニは、ポルトガル戦の2ゴールなどで完全にウルグアイの主役の一人となった。
以前から、ウルグアイの攻撃陣をスアレスと共に構成していた彼だったが、今まではワールドカップとンあると低調に終わっていた。
そんな彼が、本来の力を大舞台で披露し、スーパーな選手である事を証明してくれた。その試合で負傷してしまい、フランス戦に出られなかったのはつくづく残念だったと思う。
最後に選んだのはスペインを早期敗退の危機から救ったジエゴ・コスタだ。
大会前日の監督解任に揺れたスペインは、開始3分に先制点を許す。
彼の大活躍がなければ、スペインの今大会は初戦で終わっていたかもしれない。
スペインに久しぶりに表れた頼りになるFWだったが、欲を言えばロシア戦でも結果を残したかった。
【サイドアタッカー&2列目&FW】 次点
得点王の名前がないじゃないか、と言われるかもしれない。イングランドのハリー・ケインだ。
しかし、得点の内実を見れば、パナマやチュニジアと言った『守乱』チームからの固め取りで、特に印象が良いわけではない。とはいえ、仮にも得点王。ここで祝福しておこう。
同様の選手としてベルギーのルカクが挙げられるが、得点外の場面でもケインよりボールに絡めており、印象は良い。
クロアチアのアタッカー陣はそれぞれ、素晴らしいパフォーマンスを見せた。
最前線で身体を張ったマンジュキッチ、サイドを切り裂いたレビッチとペリシッチ。
ただ、マンジュキッチは決勝戦の印象が悪く、ペリシッチは好不調の波が激しすぎた。
逆にレビッチはコンスタントだが、『鮮烈な試合』というものはなかった。
とはいえ、いずれ劣らぬ好タレント揃いだ。
カバーニに席を譲ったが、名相棒スアレスはスーパースターたる所以を見せた。
メッシが孤軍奮闘する中、遅れてやってきた名相棒ディ・マリア。フランス戦では、必死の抵抗を見せてくれた。
南米からもう一人を挙げるなら、ペルーのカリージョだ。サイドバックのアドビングラ(書き忘れたがこの選手も、注目選手だ)と繰り出す右サイドの破壊力はなかなかのもので、こと、『娯楽性』なら南米一だった。
ドイツを破った中米メキシコでは、ロサーノ、ベラ、チチャリートのトライアングルが強烈なカウンターアタックを繰り出した。一人だけを挙げるならロサーノだろうが、チチャリートのポストプレイも見事だった。
開催国ロシアを勇気づけたのは、ラッキーボーイのチェリシェフと最前線で構える長身FWのジューバ。実力以上のものを出し切り、大会に確かな爪痕を残した。
ナイジェリアのムサがアイスランド戦で見せたゴールにも触れておきたい。
これぞアフリカの選手、というスプリント力で、相手DFとのスピードの違いを見せつけた。
北アフリカからはモロッコの華麗な攻撃陣。特に右サイド、ノルディン・アムラバットの突破力は見事で、観ているファンを楽しませてくれた。彼の負傷により交代で出てきた弟、ソフィアン・アムラバットが戦犯になってしまったのは残念だったが……。
スウェーデンの引きこもりサッカーを最前線で支えたのがベリ&トイボネンのペア。クオリティはベリの方が高く、彼のような選手がいるからこそアバウトなロングボールも効果的なのだと感じさせた。
大型FWでは大会前全く知らなかったセルビアのミトロビッチも、空中戦で存在感を見せてくれた。
【サイドアタッカー&2列目&FW】 残念だった選手
まずはクロアチアの二コラ・カリニッチだろう。
本当に負傷していたのかもしれないが、伝え聞くところでは『仮病』の疑いが濃厚で、代表を追放されてしまった。ただでさえハードスケジュールに苦しんだクロアチア。
その足を一番に引っ張った罪は重い。彼がいれば、もう少しマンジュキッチを休ませられたはずだ。
クラブチーム同様、惨めなパフォーマンスに終始してしまったのがフランスのデンベレだ。
単独突破しては潰されるだけ。
彼をジルーに代えたペルー戦以降、フランスは優勝街道を突き進んでいった。
それどころか練習態度をデシャンに批判され、半ば戦力外状態に落ち果てた。
そこまで酷かったわけではないものの、コウチーニョ、ネイマールが輝き、ウィリアンも徐々に調子を上げたブラジルで、最後まで波に乗れなかったのがガブリエウ・ジェズスだ。彼がゴールを挙げてくれれば、もう少し楽な戦いができたはずだ。
デンマークで完全に足を引っ張っていたのが最前線のニコライ・ヨルゲンセン。
ポストプレーもできず、ゴールの匂いも皆無な上、なぜか監督に重用され、最後にはPKまで外してしまった。左サイドのピオネ・シストも、セルタでのプレイを知っている身としては、もっとできるはずだと感じた。
デンマークの攻撃がエリクセンとユスフ・ポウルセンだけに終始してしまったのは、この2人の不調が原因だろう。
他に期待外れと言えば……ゴロゴロいるといえばいる。
ポーランドのレバンドフスキ、セネガルのマネ、エジプトのサラー、コロンビアのファルカオあたりが代表格だろう。
だが、レバンドフスキとサラーに関しては、チーム自体が悪すぎた。
☆監督
ディディエ・デシャン(フランス)
最優秀監督と言えばデシャンだろう。何も優勝したから言うのではない。
2014年から継続して強化してきた中盤3枚+カウンターの威力は、カンテとエムバペの登場により更に高まった。
調子が悪いと見るや、すぐさま交代させるその判断も実に妥当で、奇策の類は一切ないが
実に理解しやすく、効果的でソツのない手を打ってくる。
問題児と言われるベンゼマやベナルファ、ナスリらを追放し、チームから不協和音を駆逐したそのチーム作りも含め、最優秀監督の名は彼に相応しい。
☆良かった監督
成績順になってしまうが、クロアチアのダリッチは、『クオリティが高く、団結して、闘えるチーム』を作り上げてきた。
控え選手の層が薄いため、用兵術の腕はあまりわからなかったが、優勝候補に挙げる人間がほぼいなかったであろうクロアチアで成し遂げた準優勝は、あまりにも偉大だ。
乏しい戦力を練りに練り上げ、多彩なセットプレイを用意してチームを勝たせた、イングランドのサウスゲイト。イングランドベスト4進出の最大の立役者は彼だろう。
ここまでセットプレイに注力し、それがことごとく当たるとは、恐れ入った。
ベルギーのマルティネスは、有り余るタレントを活かせなかった前任者ヴィルモッツのチームを、
より良い形に進化させた。
攻撃の選手を無理やりスタメンに並べまくった、バランスの悪い布陣もご愛敬。日本戦で攻守のバランスを見出すと、新たなベスト11をブラジルにぶつけ、見事に勝利した。
今大会は、非常に組織化された好チームが多く、それらはやはり監督の手腕に起因すると思われるが、
いちいち挙げていくとキリがない。
戦術完成度が高いと感じたのは、ウルグアイのタバレス、スウェーデンのアンデションあたりだろうか。
メキシコのオソリオは、ドイツ戦で最高のサッカーを見せてくれたが、その後が続かなかったのが残念。
ブラジルのチッチは、ベルギー戦で敗れ期待外れの成績に終わったものの、決して悪い采配でもなければチームでもなかった。
特に惨状を呈しているライバル国と比べれば、雲泥の安定感だった。
【期待外れだった監督】
真っ先に挙がるのがレーヴだろう。なぜマリオ・ゴメスを先発で使わなかったのか。
なぜゴレツカをサイドで起用したのか。
ドイツが敗退したS級戦犯は、間違いなく彼だ。
とはいえ、今までドイツを栄光に導いてきたのは事実。次回の逆襲に期待したい。
スペインのイエロに罪はない。
何せ、大会前日に前監督のロペテギが不祥事により解任され、ほぼ素人の彼が緊急登板したのだ。
戦術オプションのなさや、デヘアの継続起用など、色々経験不足を感じたのは確かだ。
ここにロペテギがいればなぁと感じたのも確か。
しかし、ロペテギ解任はロペテギの自業自得だし、イエロに罪はない。
例えて言うなら、ベテランビジネスマンが丁々発止の交渉を繰り広げる場に、アルバイト店員が紛れ込んでしまったようなものなのだ。彼を叩くのは、あまりにも酷ではなかろうか。
イエロほど同情の余地があるか疑問だが、アルゼンチンのサンパオリにもさほど非は感じられない。
チームは崩壊しバラバラで、『優勝候補(笑)』と『世界最高選手メッシ』の看板だけが、
場違いなネオンサインで注目を浴びているように見えた。
内情はみすぼらしく、散々で、まるで良い所がなかった。
しかし、それはサンパオリの責任なのだろうか?
今大会のアルゼンチンを見て思い出すのは2010年、暗黒のマラドーナ時代だ。
あの時もメッシだけが頼りで、チームはバラバラのどん底だった。
それから一体アルゼンチンはどんな経歴を歩んだだろうか。
マラドーナ後に招聘したバティスタは1年で解雇された。
次に招聘したサベーラが思わぬ大ヒットで、アルゼンチンは前回大会準優勝を遂げた。
しかしその後も監督をコロコロ代え、ヘラルド・マルティーノが去り、バウサが去り、
去年就任したのがサンパオリだ。
2004年にビエルサ→ぺケルマンと交代した後、この国では平均2年で監督が代わり続けている。
こんな状態で一体何ができるのだろうか。