創作

ポエム 新世界より

行きたい 顔も忘れてしまった あなたの背中を追いたい
行きたい 六人で笑ってた 何も知らない若葉の季節(とき)
事あるごとに覚(さとる)が 私に突っかかっていたのは嫉妬?
私がいつもムキになって 彼をやりこめたかったのもそうなの?

知りたい 名も忘れてしまった 愛するあなたを知りたい
埋めたい カケラくずになって 飛び散った記憶を埋めたい
私たちは確かに 六人いて 真里亜(まりあ)と守(まもる)は仲良しで
私は皆に嫉妬していた 
あの人に近かった覚(さとる)に、真里亜(まりあ)と番(つがい)になった守(まもる)に
私は皆が大好きだった
きっと皆が私を好きでいる以上に  
そう思っていたから 片想いだと思っていたから

あなたの最後の言葉が花びらとなって心に積もる
「愛してる」
なんでそんなことを今更言うの?
解けない 恋の蔦鎖(つたぐさり)が あの頃へと引き戻す
呪いで繋がれている 
傷みがある限り炎は揺れない

逝きたい あなたがこの世界にもういないのだとしたら
生きたい 胸に包まれながら 鼓動を聴いていきたい
消えたのは一人じゃない みんな みんな 消えていった
残された私たちは二人ぼっち あなたを弔う番(つがい)

ねぇ 時間はなぜ 傷みの炎を焚き続けるの?
あの時 何も知らなければ みんな一緒だったの?
でも 針は戻せない 蝋は溶けていき砂は落ちていく 逆さまにはならない

あなたがつけてくれた痛みを 狂おしく抱えながら
無限の地獄を彷徨う 
本当に醜い心(もの)を 笑顔と愛で押し包みながら
生きていく
不要なものを笑顔で燃やし 罪など感じる余地もなく
生きていく
あなたがつけてくれた痛みを 悍ましく(愛おしく)抱えながら
生きていく

memory(ポエム)

シナプスが焦げ付くように メモリが焼き尽けばいいのに
逃げても逃げても貌のない過去が 
鎖で私を呼び戻すの
嘘だと知りつつ騙されて 
蜘蛛の糸に縋り堕ちていく 
惨めな私よ埋もれていけ
報われぬ孤悲(こい)よ 土に還れ

足跡が雪に消されるように マントルにデータが沈めばいいのに
疼く瘡蓋が膿を持ち 
じくじくと私を垂れ流すの
裏切られると知りつつ手を取って
蜘蛛の糸に縋り堕ちていく 
どうせ叶わぬ願いに夢を見た
愚かな心よ 潰(つい)えていけ

澱んだ森に撒かれた種は 
誰にも知られず芽吹きゆく
探して 探して 私を探して
求めて 理解(わか)って 受け入れて
そのくせ あなたの温もりに脅えて 逃げる私を 
「捕まえて離さないで 汚いこの身に口づけて」

水面(みなも)の月に縋りつく 惨めなメモリよ沈みゆけ
偽りの愛に縋り堕ちていく 無惨な存在理由(レートル)よ錆びていけ
どうせ消えない瘡蓋なら 偽りに気づかぬ私となれ
幸福なメモリが擦り切れるまで 再生(リピート)し続け朽ちていけ

廃墟で独り笑む 抜け殻となれ 
魂の抜けた 肉塊となれ
風に散りゆく 遺灰となれ
 

erosion(ポエム)

穢れた空気に まつわられながら
椅子に座って 教科書拡げ
四角い部屋に 閉じ込められて 
あたしが 自由にできるのは 頭の中だけ?

チャイムの音はまるで銃声 開戦の合図
捕まる前に 逃げなくちゃ
机の中のものは全て 鞄に入れて
隠れ場所を探してさまよう

獰猛なケダモノが 涎を垂らし
ストレスのはけ口を 見つけ出す前に……

刺してやりたい 抉った水晶体を踏みつけ 
庭に埋めてしまいたいと願う
非力なあたしは 神さまに祈る
今日を無事に生きられますように
明日を無事に迎えられますように

椅子に座り 教科書拡げ
四角な部屋に 閉じ込められた心
繁殖した蔦植物が 心臓(ハート)をずきゅずきゅと縛める
自由なんて どこにもない 居場所はない

チャイムの音はまるで銃声 開戦の合図
見つかる前に 逃げなくちゃ
机の中のものは全て 鞄に背負って
隠れ場所を探してさまよう 
誰にも踏み込まれず 安心できるスペースへ
下卑たケダモノの べとつく視線に
あたしの内奥(おく)が穢される前に……

その程度の娯楽しか持たない人たちこそ 
誰かを贄として 友情を育むのが巧い
群れないと狩りもできない 臆病者のくせしてね

抉ってやりたい まき散らされた臓腑を 
靴底で踏みしだき ゴミ箱へ叩きこみたい
無力なあたしは 神さまに祈る
散らばる骨粉が 宙に舞うように 鋸であいつらを 挽いてください


穢れた空気に まつわられながら
濡れた椅子に座り 切り刻まれた教科書拡げ
四角い部屋に 閉じ込められた あたしの
蔦の絡みついた脳は べっとりとしたタールを血管へ送り込む

愚かなあたしは 神さまに祈る
あいつらと同じ 下卑たケダモノに変わりませんように
あたしを傷つける言葉を探すのに熱心な 
ゾクブツと同じ種になりませんように

そうして一日 一日が過ぎていき あたしの学生生活(懲役)はきっと終わる
さよなら くだらない 人たち  
ビリビリに引き裂いた アルバムを想像しながら 
バカバカしい夢を見るの

「ねぇ、友だちになりませんか?」
誰かが声をかけてくれる
そんな、夢を見るの

穢れた空気に まつわられながら
椅子に座って 教科書拡げ
四角い部屋に 閉じ込められて 
そんな、夢を見るの

カイブツ(ポエム)


何とか人の振りをしなくちゃ そっと周りを窺って 窮屈な『普通』を演じてるの
軋む心に気づかない振り 歯車がギシギシ唸ってる
お願い あたしを『普通』でいさせて……

「あの娘は何だか変だよね」 そっと誰かが 耳の奥で囁いている
そんなの全部わかっているよ 『正解』があたしを窒息させるだけ
正しい答えもわかってる ただ、わかっていてもできないだけなんだ
お願い あたしに『息』を吸わせて……


勝手に期待して 勝手に裏切られて 勝手に傷ついて
そんなこと 終わりの時までし続ける懲りないあたし
だけど期待がなかったら どうして誰かを好きになれる?
だけど期待がなかったら どうして誰かと繋がれる?


みんながやるのと同じように どうして あたしはできないのだろう?
どうしてみんなと 同じ振りをしなくちゃならないのだろう?
「あなたが出来損ないに造られた」からと 聲が頭蓋骨を震わせる


みんながへんなあたしを見て 嗤っている
あたしは何も変なことなどしていないのに



何とか人の振りをしなくちゃ そんな息苦しさに あたしはもう惑わない
だってあたしはバケモノだもの 神さまが 戯れに造った不良品
お願い 誰か あたしを拾って……


ヒトの偽物は本物のカイブツになり あたしを嗤うものはもういない
そして カイブツは無人の流砂に巻かれてる

世界にはヒトがいなくなったから 出来損ないも正解もない
お願い 誰か あたしを見つけて

世界には誰もいなくなったから ヒトもカイブツもない
お願い あたしの声は届かない もう誰にも もう誰にも


ポエム「ナイルに死す」(アガサ・クリスティの「ナイルに死す」を読んで

どうしょうもなく情けないあなただけど
太陽が出ていても 私(月)を見つける人
五臓を焼き尽くす宝石(想い)を見つけたの
たった一人だけ譲れない私だけの人

永遠に側にいさせてね
あなたの微笑みを守りたい
川の流れに離れ離れになったら
身を引き裂く覚悟はとうに持ってる

永遠に側にいさせてね
あなたの幸せを守りたい
その笑顔を陰らせるものは
たとえ太陽(とも)であっても踏みつぶす

どうしょうもなく情けない私だけど
誰にも負けない想いがある
あなたの瞳に捉えられると
心臓をピストルで撃ち抜かれるの

照れくさそうに「好き」と言ってくれるたび
私は言葉の無力さを知る
心奥から生じ焦がされた炎は
「愛」なんて言葉じゃ伝えられない

あなたが太陽に目を奪われるなら
月(わたし)が太陽を消し炭にする
あなたが月に気がついたなら
淡い光で照らしてあげる

永遠に側にいさせてね
あなたを穢れから守りたい
全ての汚穢は受け止めるから
あなたはどうかそのままでいて

永遠に側にいさせてね
あなたがいれば何もいらない
あなたがもしも迷うなら
力強く導いてあげる

永遠に側にいさせてね
川の流れに引き離されたなら
全霊であなたに飛び込む覚悟がある
たとえワニの棲む川であっても

always by your side
because I love you so crazy so crazy so crazy……

地獄でも側にいさせてね
あなたがいれば必ず大丈夫
溺れることなんて怖くはないよ
既にあなたに溺れてるもの

五臓を焦がす宝石(想い)を見つけたの
それを守るためなら太陽だって灰にする
嘘じゃないよ
それくらい譲れない 私だけの人


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