父の詩

うらぎりもの

一瞬ふるえつきとばされて 蒼いっ! 俺は走った逃げたんだ背中まるだし逃げだしちまったんだふるえて蒼ざめて一瞬おしのけられた*よおに風にあおられたよおに俺は走った俺は走った逃げたくなくて逃げ走りたくなくて俺っ!俺は空も道路もおなじおんなじよおな灰の色灰色ばっかり道路のほおがわずかなわずかにくろくろずんでそれにそそれにもまして俺は蒼ざめ蒼ネオンよりも俺は走ったのだ俺

私服ばかりのたむろする街角から街角うすらよごれうす汚れて灰色のまして灰色の空ばっかりつぎ目もなにもなにもどこにもいついつまでもない私服の目つきなんて私服の目つきがこわいんじゃあない私服なんて私服なんか接点もなにもなんにもどこにもないじゃないか灰色灰なのっぺらぼおののっぺりのっぺらなまったいらな風景にどおしてなっちまうんだどおしてはみ出しちまうんだどどどどおして一瞬行進する足音くつ音とかんだかい空よりずうっとずうっと高い女の声スピーカー声声声のスピーカーから叫べ叫び叫べかなきりごえからだぢゅう泥こびりつけた子供子供子供子供のしゃがれごえがつづいて

破れる破破られるとわかってしまうわかっちまうんだどおしてもどおしたって引き裂いて引き裂きすぎてねじれねじれたとたんまわりまわってまわりながらいくら逃げてもいくら逃げだしてもきりがないのだきりがひろすぎてひろがりすぎてはるかはるか過ぎちまうじゃあないかどおしようもなくとびこえてみてもとびこしてみてもあああとすざりしているのだ俺背中なのだ背中なのだ

俺の名前はなんだ 俺は夜のたがいちがいの不眠のさむいさむいさむいんだ俺はすっぱりとまっしぐらまっすぐ切れおちて落ちる落ちる落っこちてしまう落ちたくない夜も昼もあるものか睡眠ねむいなんてなんて変な酒たりない感情なんてないことば知らない歴史あたりまえ関係ない目だまむしくい愛情いらないはらわたくさいぬれているのだぬれて寝汗なのだそおだそおだそおじゃないか

つめたいのだつめたいなめこてんぐだけわらいだけしめじさるのこしかけどくきのこぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる吹きだせ吹きだせ体ぢゅう吹きだしてくれそおしなきゃ俺の名前どこにあるんだどこにどこにどこどこどこどこど背中を前線最前線にさらしてさらしたつもりでだめだだめだだめなのだ前がどっちでどっちなんだうらぎりうらぎるには表がいるじゃないか表が俺がどおしたら逃げないでどおして走らないで四十八時間を一日ちょおど一日の憎悪になるならなければむりでもむりでなくてもかんじょおしろさつたば全部か*2げんじょおじょしてかんじょお俺が生きるのは生きかえるのはいつなのださむいじゃないかとりあえずとりあえてみるのだとりあわなきゃならんのだやめてやめてやめてやめて逃げたくなくて落ちたくなくて走りたくなくてなにもなんにもしないのに疲れるのだ疲れちまうんだどおしても声たちがいつも

そおだそおだそのはずだそおでなけりゃきっとそんなすぽっとらいとが目まぐるしくまたまたたいて体からあふれ体を体に黄と赤の点滅がかたこんぶのよおなえれべえたあしかないびるでぃんぐ今は思い出す思い出せることもないのだこともなく白っ茶けた光さむいさむざむの光がなまぐさく血が唇から鼻から目からはみだしてはみだしてきてたしかに…………………………俺は俺は走ったよこぎったよぎったにげたにげたにげ追われてなんかないにげたくなんかないんだ俺はなぜなのだ走りたくないのだなぜだなぜだなぜなのだ俺は

俺は昏いだんだん昏い階段を下った重たい冷たいぬれて螺旋階段を下った*アルトサクスが泣いてアルトサクスが泣いて俺どこなのかどこからどこへどっちへどおしてもなのか下った俺なのだ










*原文ママ。改行がほとんどないのも、吃音なのも……が長いのも全部原文ママ

*2原文ママだけど、これどういう意味なんだろ……🤔???

*アルトサックスの事だと思われる。念のため

立つ

無駄な抵抗はよせ!

彼奴らが叫んだとき
俺は
そっぽむきながら
立ちあがった

だって
黒い花びらっていうのは
いつだって
俺の晩めしだった
それに

区切られた空に
蒼い絵の具を
塗りたくりぬりたくり
なんども
なんども
重ね塗りし
それから
ぼろぼろと雨を降らせ

くらい紫のヒトデの
ひとつひとつ足裏につぶし
俺は
あてもなく歩いた

それから
肉の痛みに耐えた

針金細工の心象

1

凋落の木の葉の一枚一枚剥がれとび
それらの黒さは
なぜなのか

2

ブラックコオヒィの
かけらの
しらじらしいこと

透きとおる 憎悪の苦がさ

3

それをもし
冷たいわらいと呼べるなら
俺には
やすらいの時がほしい
もし
自虐だ と呼ぶのなら
俺の頭に
やわらかい墓石を!

いらだちと
いつわりのマスクの中
築かれた 砂の城塞

4

黄色い空に風が吹く
かなむぐらの空に 風が吹く
かなむぐら生い茂る空 とじこめられた風の末裔

5


俺は
石英質の塔にいる
そりかえる
逆三角の塔のてっぺんに
俺は いる

6
サッコとヴァンゼッティの死んだとき
ひきがねを引いたのは 俺なのか
ヒロポンなんざあ いくらうっちゃみても
時間が増幅するわけはねえ
サッコとヴァンゼッティが死んだとき
ひきがねを引いたのは
俺なのか


心象風景Ⅱ

浜辺ニ 蒼グロキヒトデ 群ラガリ
薪ザッポオデハタキツケル 波ノ大口
或イハ
貝殻デ一杯ノ海ノ中
ヒビ割レタ 氷結ノ砂漠ヲ吹ク風ハ
何ナノカ

チギレ飛ブ 風ノ悲鳴ニ
霧ハ 舞イ上ガリ
コノ谷ニ 日ノアタル時
遠ク近クカスム幻ノ行列ニ
青白ク影ヲ落トスノハ 挽歌ナノカ

ソレハ モロクモ架ケラレタ橋梁
ソレハ 走リ去ル 女ノハダシ
ソレハ 目ノ中ノ赤イ流レヲ   
    ヒタムキニ 一本一本ナゾル時
ソレハ 蒼ザメテ 頭ノハジケタ磐梯山

筋肉繊維ノキシム時
目ニトッテ
青空トハナンダ!

俺ニトッテ
生キルトハ
何ナノカ

ハマベニ アオグロキヒトデ 
ムラガリ マキザッポオデ
ハタキツケル ナミノオオグチ
アルイハ
カイガラデ イッパイナウミ

雨―三河湾心象スケッチ―

まして
水平線なぞ あるわけがない
灼けただれ べっとりと膿んだ
つめたい汗の
空たちと 海たちの
苦がい婚姻だ

漂うブイは なんのために 誰のために
熱をはらんだ方角に 傾むき
世界のようにどろどろな
矢じりの雨は 海面に刺さり
降りそそぐ矢じりたちの
けれども

貼りつき すがりつく海苔の柵に
切り刻まれた海流は
静かに溶けこむが 溶けこみたくても
溶けこめず ふくらんでゆく格子の影は
いびつに歪み 破け とび

そして また
貝殻は方向を持たない
方向を持つのは
泡粒の 砕け散る島だ!
砂だ! それら
みな漂う藻だ

したたりふるえ 落ちようと
堕ちようとして まるくはじけ
すきとおりつづけた雫の
ただ それだけだった宇宙の
樹林をはずれ

水面に
繊毛 ふるえ ならび立ち
ゆびさきを
斜め上にささげて
繊毛
流れながら
しぶきをあげて
ならびたち

けれども
灰色のまひるから
蒼い深夜まで
コンクリートはひび割れて
むすうの白さ 苦がさ

割れ目にみち
ただよい
そして

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