本・映画などなど

ディーン・クーンツ「ウォッチャーズ」感想(バレあり)

78点。
最後の最後までは完全な『予定調和』だったけど、アインシュタインが死ななかったのは意外でした。

女性主人公のノーラは、伯母の精神的虐待のせいですっかり自信を失った引きこもりの女性。
男性主人公のトラヴィスは、子供の頃から大切な人を失い続けてきた男性。
そして、二人を結びつけるのは第三の主人公アインシュタイン。
有名な天才科学者の名をつけられた彼は、政府が造った諜報用の〈天才犬〉。
このアインシュタインのかわいらしさは、愛犬家には刺さるのではないでしょうか
(愛犬家なら78点に+5点してください)。

他に黒人のレミュエルも、親の『常に気を抜くな』という呪縛にかかっていますし、
何よりラスボスのアウトサイダーは、政府が造った殺人兵器ということもあって、〈造物主=親〉を深く憎んでいます。
このように、主要登場人物のほとんどが〈親〉の影響で〈呪縛〉を受けているという設定で、
アウトサイダー以外のキャラクターは、その呪縛を本編中で解いていくことになります。
中でも印象的なのはノーラでしょうか。

一方、〈親=造物主〉に愛を注がれ、唯一造物主に感謝していそうな陽キャ(?)がアインシュタイン。
〈親=造物主〉に憎しみを注がれ、恨みで凝り固まっているのがアウトサイダーで、この両者の対比はとても鮮やかです。
そのアウトサイダーも、「殺してくれ」とトラヴィスに懇願するように良心のカケラを持っているキャラクター。……というか、普通に考えて割と善良な子なのでは?
自分が他人から〈醜く見える〉というコンプレックスはノーラと共通しており、ここでも愛を注いでもらえないアウトサイダーの哀れさが際立っています。

その他のキャラでは、弁護士のギャリソンさんや獣医のキーンさんは善い人枠ですが、
キモストーカーのアートや、あっさりやられる前座のヴィンセントは……割とどうでもいい感じ。
アートはラスボスのアウトサイダーよりよほど気持ち悪かったし、凶悪だと思ったけどなw
ヴィンセントの潔癖症は一体なんだったんだ……?


ストーリーはクーンツらしく、不幸な人生を送ってきた二人の主人公が結ばれ、敵を撃退するという王道。
死ぬんじゃないか(病気で死ぬと思った)と思わせておいて、アウトサイダーにもボコられた上でのアインシュタイン生存エンドは思わずにっこり。
ただまぁ、最後以外は驚きのない予定調和ストーリーではあったかなぁ。
丁寧に作られているのはわかるし、エンタメとしても外しておらず、暇つぶしには持ってこいの本なので、それなりに高評価はできるけど。
あと、クーンツ先生、〈フランケンシュタイン〉ネタ大好きね。
未読だけど、その名もずばり『フランケンシュタイン』シリーズも書いているし、以前読んだ『ミッドナイト』も〈モロー博士ネタ〉だったし、
遺伝子組み換えによる生物兵器的なテーマが、クーンツは大好きなんだなぁと感じる。
「またかよ」感も、ある。



比較対象が適切かはわからないけど、同じモダンホラー作家ということで、スティーブン・キングと比べると、クーンツはとても〈健全〉。
その分、深みには欠けるし、容赦のなさという点でもだいぶ手加減してくれる。
キングの方が読むのに勇気がいる(ホラーとしての恐怖もだし、後味の点からも)が、90点台もバンバン出してくれる。
クーンツは「ファントム」が80点くらいで、既読の「ライトニング」、「ウィスパーズ」、「ミッドナイト」、本作は70点台。

ただ、クーンツの〈健全さ〉も悪くないな、とも。
本作の〈アウトサイダー〉はなかなかかわいそうな悪役だったけど、それでも悪役に自分を投影してしまうようなことはないし、不当に虐待されて生きづらさを強く感じる事もない
(本作におけるノーラや、「ライトニング」のヒロインにしたって、不当な虐待はあるものの、それを乗り越えていく陽性の力や、周囲からのサポートがある)。
モダンホラーというよりも、勧善懲悪のヒーロー小説の読み口だし、クーンツを読むうえで期待するのはその部分なのかな、とも思った。






2025年に読んだ本

S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

ゴーストハント7巻/小野不由美……
最終巻にして、一番面白かった巻。怖いし、切ないし、さすが小野さん。
それも、1巻からの積み上げがあればこそで、読み続けて良かったと思った。(反面、1巻からもっと面白いと良いのにとも思った)

幽女の如き怨むもの/三津田信三……
良い意味でタイトル詐欺。
貧しさ故に身売りされ、花魁として働き、幸せな結婚をしたのも束の間、死別し、再び花魁として働く健気な一人の女性を描いた作品。
ホラーではない。感動で心を揺さぶられた。

神は沈黙せず/山本弘……感想はこちら。

アイの物語/山本弘……感想はこちら

王者の妻/永井路子……感想はこちら。

ドラゴンの塔/ナオミ・ノヴィク……
ドヴェルニク村のアグニシュカは、領主ドラゴンに召し出され、魔法の才能を開花させていく。
奔放に魔法を紡ぐアグニシュカと、術式に拘るドラゴンの魔法は、反発し合いながらもいつしか溶け合い、一つの旋律を紡ぎ出す。
村の周囲では、邪悪な森がじわじわと浸食し、腐った樹液が人々の体内を侵し始めていた。

文章は歌のように情景を映し、まるでその場にいるような臨場感を味わいました。
現時点では、自分が読んだファンタジーの中でも屈指の作品でした!!


北条政子/永井路子……鎌倉幕府において、源氏というものは大して重要ではなく。
頼朝以降の2代、3代においては将軍という【お飾り】を【乳母一族】が争い合い殺し合う、権力争いの象徴としての存在と化し、政子が全てを失っていくと同時に、北条家は執権の座を手に入れる。
愛に溺れた女性の悲しい物語だった。

処刑の方程式/ヴァル・マクダーミド……
35年前、13歳の美少女アリソンが誘拐され、殺された。
犯人として挙がったのは義理の父、ホーキン。
母クロエと再婚したホーキンは、アリソンを凌辱し続けていた。
ホーキンは死刑になった。

そして35年後、全ての真相が明かされる。
法律では裁けない罪があること。
それを捻じ曲げてでも、止めるべき悪はあり、
けれどそれを恣意的に見逃せば、法治国家ではなくなってしまう。

事件の結果が、次の世代の人々にまで影を落とすこと。
面白かったです。
唯一あれだったのは、ホーキンが真性のクズすぎて、
『冤罪で処刑された』事に対して、
『これで良かったのだろうか……彼は邪悪そのものではあったけど、人殺しはしていなかったのに』という思いよりも、
『こんな屑は殺されて当然』と思ってしまったこと。
少しだけ、ホーキンにも良いところがあれば、もっと色々と考えさせられたと思った。
村ぐるみで一人のクズ男をハメて死刑に持ち込んだ、
処刑の物語。
という、陰の面よりも、
あまりにもクズ。殺されて当然、という気持ちが勝ってしまった。

とらドラ6/竹宮ゆゆこ
とらドラ7/竹宮ゆゆこ

とらドラ8/竹宮ゆゆこ……
人間関係荒れ模様の修学旅行回。

竜児とも大河とも仲良しのままでいたい実乃梨と、
実乃梨と更に仲を深めたい竜児の間に生まれる齟齬に、
大河、亜美、北村なども絡み。
それぞれがそれぞれの【エゴ(自己犠牲、もエゴ)】で、がんじがらめになる様が見事。

8巻の最後の文章、
「しかし窓に~」から始まる文章で、
「【子供たちの】足を竦ませるには~」と書いているのも、自覚的だと思う。

そして、この作品に出てくる【子供たち】は、ほぼほぼ全員【いいこ】なんだよね。
でも、全員が自己犠牲ルーレットをしても、誰も幸せにならないんだよなぁ。

大河の父親回でも『子供(大河たち高校生)』と『大人』の対比がされていたし、
クリスマス回でも『いいこでいる』ことに大河がこだわっているし、
竹宮さんは完全に、高校生を【大人になりかけている最中の、子供】として描いている。
そこにブレがないから、面白いんだと思う。

とらドラ9/竹宮ゆゆこ……
完全に学園ラブコメの枠を超えて、青春小説の域に達した感のある9巻。
未成熟でありながら、大人になりかけの【半分オトナ】な高校2年生。自分は空っぽだ、と自覚する竜児と大河。
夢に向かって一直線の実乃梨。
竜児が実乃梨に惹かれるのは、彼女が自分より上のステージにいるからでもあって、実乃梨は狩野すみれと同種のキャラクターになっている。
すみれが北川を置いてアメリカに行ってしまうように、実乃梨が竜児を選ばないのは物語的には必然。
竜児にとって必要なのは手に手を取って支えていける大河なのだろう、と思う。
でも、実乃梨が好きなんだけど(小声)

とらドラ10/竹宮ゆゆこ……
高校2年生。まだまだ子供で、それでも大人へと少し足を踏み出す季節を切り取った、恋愛青春作品でした。

A→読んで良かったと思える作品

心霊電流/スティーブン・キング……
590ページ中、最後の40ページだけホラーw
電気の力で病を癒すジェイコブス師。禁断の新技術で癒された患者は多数いたが、彼は死の直前、亡くなった人が蟻のような動物に追い立てられ撲られる地獄を見てしまう。
そして、師の死をトリガーに、元患者たちは発狂する。

ストーリーを追えばそういう流れだけど、やはり6歳だった主人公と20代のジェイコブス師の出会い。
師を襲った悲劇と、成長した主人公の初恋。薬物中毒をきっかけに再開した師の変貌。といった人間ドラマに読みごたえがある。
元患者たちが発狂する、という展開もホラーっぽくて面白いけど、個人的には師の新技術は『誰にも理解されない、最新鋭の科学』のようにも読めたので、そちら方面で描いてくれれば、科学と宗教の関係を深堀りする作品になったのになぁ、とも思う。(同じ新技術でも、宗教の皮を被せれば人は信じるけれど、宗教の衣装を剥いでしまうと途端に誰も信じなくなる等)

ゴジラ 怪獣黙示録/大樹連司……
環境の破壊により、怪獣が出現するようになった地球。
アフリカ大陸をはじめ、多くの土地を失い難民化が急増する一方で、難民の受け入れ拒否やイデオロギーの対立で一つにまとまりきれない人類の敗北の歴史を描いたドキュメンタリータッチな作品。

ゴジラ  プロジェクト・メカゴジラ/大樹連司……
大樹連司の「GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ」読了。79点。
ヒマラヤ山脈を破壊し、ゴジラを生き埋めにするオペレーション・グレートウォールも失敗、地球総人口が2億を切った人類は、ゴジラに最後の決戦を挑むが……。
頼みの綱のメカゴジラは、ナウシカの巨神兵を彷彿とさせてくれます。
人類が散々破壊した地球環境を防衛するために、ゴジラが蘇ったように感じるので、大人しく滅びた方が良いような気がした。

愛の旋律/アガサ・クリスティ……
主人公のヴァーノンと、彼を取り巻く幼馴染。親友のレヴィンと、従妹のジョー。
ヴァーノンを取り巻くのは、【欲に弱く、流されやすいネル】と【自立した、強い女性のジェーン】。

そして、全てを失った時、ヴァーノンの才能は開花する。大昔からある主題の「芸術を取るか、恋愛を取るか」をベースに、19世紀末~第一次世界大戦後までの時代を生きた男女の物語。
クリスティは、ミステリ以外を書かせても面白いです。


愛の重さ/アガサ・クリスティ……
歳の離れた妹シャーリーを過保護に愛するローラ。
けれど、シャーリーには【不幸になる自由】が必要だった。
シャーリーは、望んで不幸な結婚をし、破産し、他所に女を作り、重病に罹り、自分に当たり散らす夫を必死に看病した。
そして全ての不幸の元凶とも言える、夫が亡くなった時、シャーリーには【生きる目的】が消えたのだった。

……いや、確かに不幸になる自由はあると思うし、
シャーリーの人生にローラが口を出しすぎるのはどうかとは思う……けど、これはローラが悪いとも言えないと思いました……。


妖異金瓶梅/山田風太郎……
強烈な悪女、潘金蓮の犯罪を探偵の応伯爵が解く連作短編ながら、世界の滅亡(遼の侵攻)を描く最後の四編を加えることで、長編小説として余韻を残す仕上がりになっている。
面白かった。

とらドラ2/竹宮ゆゆこ

とらドラ4/竹宮ゆゆこ

とらドラ5/竹宮ゆゆこ


はえだまの如き祀るもの/三津田信三……
村ぐるみの殺人に、四つの怪談、谷河の待避所にのみ棲息する真っ黒の塊、執拗に後を追いかけてくる玉砂利の音。面白かったです。

銃・病原菌・鉄/ジャレット・ダイヤモンド……感想はこちらで

ゴーストハント2巻/小野不由美……
明らかに1巻より面白い。
幽霊屋敷とフランス人形というベタなホラー装置だけど、怖いものは怖い。
ただ、人間関係と、子供のストレスの話だけに少し重苦しい面もありました。

夢幻諸島から/クリストファー・プリースト……
魅力的な群島を舞台にした数々の島(小話)は、緩やかに繋がり連関した群島(エピソード)を紡ぐ。
島に秘められた謎は、複数の島で少しずつ解かれ、一つの連なりを持った長編に仕上がっている。

ゴーレム100/アルフレッド・べスター……
わけがわからないが、作者の心的エネルギーの強烈さに被曝し、なぜだか先を読んでしまう知能のエナジードリンク的作品。
内容は今一つ理解できず、また読みやすい作品でもないが、読むと頭にエナジーが注がれるため意外とすんなり読める怪作。

プロジェクト・ヘイル・メアリ/アンディ・ウィアー……
遠宇宙で出会った地球人のグレースとエリダニ人のロッキーが、言葉も通じない状態から少しずつ交流を深めていく物語。
ロッキーの
「おい、君の顔から水が漏れてるぞ!」がとても印象的。

流星―お市の方/永井路子……
信長に好意的な永井さん。お市を薄幸の美女ではなく、女信長のように書いた点も魅力的。
しかし同著者の「王者の妻」ではお市と勝家はラブラブだったのに、本書では「生理的に無理」扱いされていて泣いた。


成瀬は信じた道をいく/宮島未奈……
前作に比べてみゆきの存在感は薄いけど、前作同様、成瀬のアグレッシブな魅力とそれに振り回され、影響を受ける周囲の人々が描かれる、読みやすく元気になれるライトな作品。

73光年の妖怪/フレドリック・ブラウン……
1・睡眠中の動物に乗り移る
2・宿主の動物が死んだ時にだけ、新しい動物に乗り移れる
3・本体は亀に似ている。
この3つのルール内で繰り広げられる、寄生宇宙人VS博士&女教師の死闘。
田舎町の片隅で綴られる、人類の存亡をかけた戦い。
明確なルールが決められていて、その枠内で殺るか殺られるかというサスペンス。
スティーブン・キングの「クージョ」に状況が似ているが、あちらほどは重くないですね。

ウォッチャーズ/ディーン・クーンツ……感想はこちら

謎のクィン氏/アガサ・クリスティ……
ミステリアスな道化師クィンが演出し、【人生の傍観者】サタースウェイトが司会を務める、神秘的な事件を集めた短編集。
ミステリというか、幻想小説というか。
「死の猟犬」もそうだけど、クリスティはファンタジー色の強い作品も巧い。

B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

ハロウィーン・パーティ/アガサ・クリスティ……
ナルキッソスとウンディーネの結び付きが事件の根底にあるけれど、それが表面に出てくるのが遅いので途中までは盛り上がりに欠ける。
魔女のグッドボディ夫人が謎すぎるけど、ハロウィンだからまぁいいか。

スリーピングマーダー/アガサ・クリスティ……
面白くなるまでが長いけど、犯人の邪悪さはなかなかのもの。
マープルシリーズ最終作だけど、後期のクリスティ作品ほど、マープルに『復讐の女神』としての義憤が見られないのが少し物足りない、かな。

闇の囁き/ディーン・クーンツ……
事故で妹を殺してしまい、親から虐待を受け闇堕ちしたロイ。
そのロイと友だちになってしまったコリンは、初恋の相手ヘザーの力も借りて、ロイと対峙する。
コリンの親もなかなかのクズで、その点、ロイと境遇は多少似ているが、ロイの闇堕ちは親のせいとばかりも言えないのよな。


牧師館の殺人/アガサ・クリスティ

ヨブ/ロバート・A・ハインライン……
本書は「ヨブ記」をベースにした、ハインライン思想の集大成的な作品。
ハインラインはよく、右翼だとか左翼だとか言われるけれど、思想は一貫しており、右派リバタリアニズムに属する。
とにかく『反権力・自由主義・個人主義・マッチョ主義』を標榜し続けたハインラインにとって、個人の自由こそが最高善であり、それを妨害するような大きな政府(福祉政策)などは要らない。
一方で、権力者から要らないルールを強要されたくもない。

本書において、権力者とは『教会』であり、『神』である。
ハインラインは『国家』を超えて、『神』からもどうでもいい指図などは受けたくないのだ。
自分の力こそが全てであり、個人の自由を最高善と取れば、確かにそうなる。
福祉に反対するから右翼、国家主義に反対するから左翼というのは一面的すぎる。
というわけで、ハインラインの思想は知っていたけど、神にまで喧嘩を売るとはなかなかだなぁ、と思って読んだ。
また、こういう本が出版されるうちは、キリスト教も大丈夫だなと。

なお、物語として面白いかと聞かれると67点なので、
ハインラインの考えに興味がない人は読まなくて良いと思った。

とらドラ3/竹宮ゆゆこ……
青春ラブコメ、というか学生ラブコメとして【読んでてニヤニヤさせてくれる】という意味では面白い。
ただ、序盤の大河は理不尽系ツンデレで、そういうキャラだとわかっていてもストレスが溜まるし(俺なら付き合わん)、終盤の勢いに任せた怒涛の展開は、【こういうものだ】と納得できれば楽しめるけど、普通に考えれば「いや、教師が止めるだろフツー」的な醒めた感想も強い。

人間以前(短編集)/フィリップ・K・ディック……感想はこちらで

小さな黒い箱(短編集)/フィリップ・K・ディック……
11の短編のうち気に入ったのは3つなので、打率低めだけど、まぁいっか。
敵か味方かしかいない世界で、中立を保つ難しさを描く『傍観者』、ロボットが人間を支配する『ジェイムズ・P・クロウ』、海外SFファンなら出てくる名前だけでも楽しい『水蜘蛛計画』の3つが好き。
『水蜘蛛計画』はポール・アンダーソン(『タウ・ゼロ』が名作!)が大活躍!

パイは小さな秘密を運ぶ/アラン・ブラッドリー……
11歳、化学大好き実験大好き毒物大好きな、少女探偵フレーヴィアの魅力で読ませるミステリ。

祭りと信仰の怖い話/月の砂漠……

オイディプス症候群/笠井潔……
イリイチの、世界にHIVをばら撒こうというスケールの大きな邪悪さには驚いた。
ミステリとしては、ギリシャ神話に狂った犯罪者が多層に表現する神話的モチーフが難しすぎて整理できない。
大きな不満は、フーコーの思想が肩透かしに終わっていること。

見られるというのは、一般的には『自分を見ている相手を、こちらが見る』
(『自分を見ている相手の目に、相手を見ている自分の姿が映る)。

「見るー見返される」という対称性のもとで成り立つ事も多いが、パノプティコンに代表されるように
こちらからは見る事ができず、『見られているかもしれない』という恐怖を一方的に与え続ける事で、相手を封じ込め、弱者として規定する、『まなざしの持つ暴力性』について語っている
……という理解でいいのかな?
めっちゃ自信がないんだけど。

ミッドナイト/ディーン・クーンツ……
「モロー博士の島」をオマージュした、寒村の住民が獣人化していくホラーサスペンス。
中盤を過ぎた辺り、獣人化した警官が創造主に反旗を翻す辺りから面白くなる。
クーンツらしく、人間賛歌が漂うのは好みの問題(安心して読める。深みはまずまず)



吸血鬼と精神分析/笠井潔……
フロイトやラカンは、赤子にとっての最初の遭遇は『母』と『自分』。
そして『自分の性』への目覚めだと定義するけれども、『男性』である事に拘泥してしまう彼らに、女性の精神を分析する事はできないのではないか、と感じた。
伝統宗教が古代人に作られたものである以上、男神と女神が存在するけれども、そうした枠組み自体が性を区別しており、ジェンダーフリーを進めていく現代にそぐわないものになっているのではないかと思う。
話はズレるけれども、多重人格者の殺人というのは、ミステリにおいてあるようで(少)ないな、と思った。
リチャード・ニーリィの「殺人症候群」など、なくはない、けれども、こういう場合でも倒叙ミステリがほとんどな気はする。

ライトニング/ディーン・クーンツ……
主人公ローラが危機に陥る時、雷鳴が轟き、騎士が助けにやってくる。
ナチスとタイムマシン、カーチェイスに銃撃戦とB級色たっぷりの娯楽小説。

アイリッシュ短編集『裏窓』/ウィリアム・アイリッシュ……
アイリッシュの長編は、甘く切ない恋愛サスペンスが多いけど、この短編集にもその香りは漂っている。
ただ、彼の作風を考えれば必ずしもミステリである必要はなく、短編ならもっといろんなタイプの作品が読めるかと思っただけに、ほとんどサスペンスで占められていて、非ミステリ作品は1作だけというのは残念だった。

一方で、収録作の質は高めで、特に表題作の『裏窓』、『じっと見ている目』あたりが面白い。『踊り子探偵』や、『帽子』、『だれかが電話をかけている』などもサスペンスを感じられる。

1930年代に書かれた短編集にしては、そこまで古さを感じさせないのはアメリカ都市生活の凄さと、アイリッシュのセンスの良さだろう。
まぁ『外は風が強いから、帽子なしじゃ歩けないんだ』や、『他人の帽子をかぶるとふけの害が~』というあたりは、なかなか時代を感じさせるけれど。


エイダ/山田正紀……
『物語』が『現実』を侵食するというテーマと、多世界解釈を組み合わせたメタフィクション的な作品。
神話の神が集合するSFならゼラズニイの「光の王」があるけど、あちらよりかなり読みやすい。
『フランケンシュタイン』の解釈が作者さんと僕ではだいぶ違う……。

賢者の石/コリン・ウィルソン……
『古き者ども』によって作られた『人間』は、彼らの手足となって働きムー文明を作り上げた。
古き者どもはあまりにも進化しすぎてしまい、自らの能力を制御しきれず文明は滅び、人間は取り残された。
故に人間は、『支配者を望み続ける』というお話。
主人公たちは、いつか目覚める『古きものども』に対抗するため、超能力を身につけようとしているけど、
それだと『古きものども』と同じように、自らの能力を制御しきれず、文明は滅びてしまうような気がするんだけど??

成瀬は信じた道をいく/宮島未奈……
前作に比べてみゆきの存在感は薄いけど、前作同様、成瀬のアグレッシブな魅力とそれに振り回され、影響を受ける周囲の人々が描かれる、読みやすく元気になれるライトな作品。
前作が好きだった方は是非! 楽しかったです😊

ゴーストハント1巻/小野不由美……
怪奇現象をミステリ的に解き明かしていく作品。
後の小野さんの名作群に比べると見劣りするもののまずまず楽しめた。

ゴーストハント3巻/小野不由美……
今回はミステリ寄りの巻で、怖さは薄め
民謡ガール/ツキノマコト……
民謡を中心に、起承転結がしっかりまとまった堅実な作りですが、主人公のミーナと幼馴染のヨッペイの関係性がとても暖かいです。

ゴーストハント4巻/小野不由美……

ゴーストハント5巻/小野不由美……
シリーズ最恐の巻と評判だったけど、全然怖くなかった。
真砂子と麻衣の仲が進展する友情巻として印象深い。

ゴーストハント6巻/小野不由美……

忌名の如き贄るもの/三津田信三……
正直に言うと、真相よりも、真実から2番目の『呼ばれたから』殺した、の方が好みだったかな。

山魔の如き嗤うもの/三津田信三.……
ホラー要素は薄めでミステリに寄った内容。
よって、ほとんど怖くない。
このシリーズのミステリ形式は、『毒入りチョコレート事件』やコリン・デクスター作品によくある、【下手な推理も数打ちゃ当たる+どんでん返しに次ぐどんでん返し】で、個人的に苦手な形式。

双生児/クリストファー・プリースト……難解、というより答えは恐らく、ない。
双子のジャックとジョー。ジョーはビルギットと結婚するが、ジャックと不倫している。
ジャックが死んだ世界線Aでは息子が生まれ、ジョーが死んだ世界戦Bでは娘が生まれる。
また、世界線Bではおおよそ現実の歴史が展開しているのに対し、世界線Aでは英独単独講和が成立し、ヒトラーは失脚しヘスがナチス首領となり、ソ連を崩壊させ、アメリカはうだつの上がらない国のまま。

世界線Aはジョーが死ぬ間際に見た夢、という解釈は確かに成り立つが、それすらも解とは言いづらい
また、ビルギットの産んだ子供が、双子のどちらの子どもかを特定することは不可能。
二つの異なる世界が重なり、離れていく姿を、
イギリスと、ドイツ、アングロサクソンとゲルマンに分かれた、元は一つの『双子』のような民族の分離と結合になぞらえた作品。ということにしておく。

ビートレス/長谷敏司……
AIが人間をアナログハックできる新時代は、『人間が世界の中心だ』と考えたい人には暗黒時代かもしれないけど、
人間が、自らの機能を拡張させて進化させた被造物が、『新人類=人工知能』として世界の中心になる未来が、暗いものになるのかは何とも言えない。
ただ、どうせ『一部の、力のある人間』がAIを独占する、AI独裁が生まれるんじゃないかと思ってしまうけども。 支配権すらも人間がAIに明け渡せれば良いけれど、人間自身が支配権を握りつつAIを利用するなら、恐らくそうなる……。
まぁ今だって人類はスマホに支配されてるし、電車・自動車・飛行機に支配されてるし、パソコンに支配されてるし、冷蔵庫・冷凍庫に支配されてるし、
モノの奴隷となって生活しているわけだけどもね。

時間のかかる彫刻(短編集)/シオドア・スタージョン……
オチの効いた作品や、孤独を覚える作品、どこか心温まる作品はスタージョン風だけど、
初期短編『ビアンカの手』に見られるような猟奇的な『欠損』はこの短編集からは感じられない。
孤独にしても『孤独な円盤』ほどの強烈さはない
収録作では、『きみなんだ!』、
『ジョーイの面倒をみて』、『人の心が見抜けた女』、『ジョリー、食い違う』、『フレミス伯父さん』あたりが面白かった。

ただ、やっぱり以前読んだ短編集『一角獣・多角獣』に比べるとパワーダウンかなぁ……。


三体2/リウ・ツーシン……

有頂天家族/森見登美彦……

銀をつむぐ者/ナオミ・ノヴィク……
冬の王スターリクと、夏を齎す火の悪魔チェルノボグの狭間で、后として活躍する二人の女性の物語。
設定は良いのだけど、視点がころころ変わるので、物語に入り込みづらかった。

C→暇つぶし程度にはなった作品

バカの壁/養老孟子

エッジウェア卿の死/アガサ・クリスティ……
犯人がクズすぎて嫌悪感しかない。
初期クリスティらしく、キャラにそこまで愛着も湧かず、やたらと込み入ったトリックは、特に好みでもない(トリック愛好家ではない)のでこの評価。

クリスマスプディングの冒険/アガサ・クリスティ

ポワロのクリスマス/アガサ・クリスティ

北人伝説/マイクル・クライトン

アラビアの夜の種族/古川日出男……
【1793年の、ナポレオンの侵略にあっているエジプト】を舞台に、
【読み始めたら止まらなくなるくらい面白い小説(以下、魔術書)】を書いて、それをナポレオンに読ませれば、侵略もやめて読書し続けるのでは?という作戦のもと
語り手は物語を語る・騙るわけだけど、
正直その物語が今一つ面白くない。
これではナポレオンどころか僕でも止められないぞ……。

設定上、自分からハードルを爆上げしてしまってるので、この設定で小説を書くのは勇気が要るなと思った。

ポアロ登場(短編集)/アガサ・クリスティ……
ポアロとヘイスティングスが仲良くワチャワチャやっているのが好きなファン向け。
1つ1つの短編は特に面白いと思わないけど、シリーズの後半でめっきり出番がなくなってしまう、
「ポアロの一番の友」ヘイスくんと仲良さそうなのは、心温まる。

火曜クラブ(短編集)/アガサ・クリスティ

もう一つの異邦人/カメル・ダーウド……
ムルソーは母を亡くし、母国から離れた異邦人だった。
一方『僕』の母は『僕』を強固に縛り付けており、母国アルジェリアの独立に『僕』は手を貸さなかった。母の軛から逃げ出しつつも、フランス人のジョゼフを殺した『僕』は、この世のどこにも居場所を持たない、もう一人の『異邦人』だった。

本書は、カミュの「異邦人」を、宗主国フランスからのアルジェリアの独立を軸に再構成し、もう一人の「異邦人=僕」に語らせた物語。



輝石の空/N・K・ジェミシン

ブラインドサイト/ピーター・ワッツ

セルフ・リファレンス・エンジン/円城塔

宇宙消失/グレッグ・イーガン

闇の守り人/上橋菜穂子……
ファンタジー設定はしっかりしているんだけど、あまり心が躍らないんだよな。相性悪いのかな? つまらなくはない。

夢の守り人/上橋菜穂子……

D→自分には合わなかった作品

掌の小説/川端康成


E→プロ作品として見るにはつらい作品






好きな作家紹介 アガサ・クリスティについて(2017ver:作品リストのみ順次更新)

随分前に、ブログでアガサ・クリスティについて書きました。
それで満足していたんですが、今回新たに書き直しましたのでアップさせていただきます。

ちなみに全体の4分の1ぐらいは流用(前回と一緒)ですが、4分の3は新しく書き直しているので、
新記事としてアップしちゃっていいよね?



「トリック派」と「動機派」。「トリック」も疎かにしないが、「動機派」に特にオススメのクリスティ。


第二回はアガサ・クリスティ。
海外古典ミステリで抑えておくべき作家と言えば、アガサ・クリスティは外せないと思います。
また、クリスティ作品は「読み易い」ものが多く、更にほとんどの作品が文庫化されているため「購入しやすい」のも魅力です。
海外ドラマにもなっており、しかもこのドラマが割と良い出来なため、そちらから入ることもできる。そんな敷居の低さもポイントでしょうか。


さて、ミステリ作品を読む際に、皆さんは何を最重要視しますか?


不可能犯罪を可能にする大胆不敵なトリックを解明すること?
それとも、犯人の心情と、そこに流れる人間ドラマ?


個人的な好みを言えば、僕は後者です。
どんなに凄いトリックを見せられても、肝心の人間が血の通わない、盤上の駒のようなキャラクターであるなら、
真剣に身を入れて読むことができないのです。


お堅い人に怒られてしまいそうですが、僕のミステリの原点は漫画『金田一少年の事件簿』ですので、
やっぱりこう、登場人物は美男美女……とは言わなくても、色々とメロドラマがあったり、
涙ながらの犯人自白シーンがあったりね、してほしいんですよw


そんな僕が、過去のミステリ作家を読みますと……他の作家の話は避けますが、有名どころを何人読んでも
イマイチピンと来ませんでした。
どの作家さんも、『トリック』の方に比重が傾きすぎていて、『人物』が蔑ろにされている気がしたのです。
犯人が解った。この犯行を犯せたのはこいつしかいない。おしまい。みたいなね。


アガサ・クリスティに最初に触れたのは「スタイルズ荘の怪事件」
そのあと、「七つのダイアル」とか「茶色の服の男」とかを読んだんですが(後者はそもそもミステリではない)、
どうもピンと来ず。
決定的だったのは「アクロイド殺し」。
この作品、確かに名作だと思います。トリックを知らない未読の方には是非読んでいただきたい作品です。
でも、あくまで『人間ドラマ』として読んでみて、面白いですかね?


そんなわけで長らく離れていたクリスティだったんですが、「春にして君を離れ」という作品を読んでから、少し見方が変わりました。
この作品の主人公は、すんごい嫌な奴です。嫌な奴なんですが、その心理描写がものすごくリアルなんです。
あ、こういうのも書ける作家さんなんだ、と。


そして次に読んだ「ナイルに死す」で、ガツンと心を持って行かれました。
あ、これ金田一(漫画)だww と。
なんかこう書くとアレなんですけど、面白いんです。
主人公の男性は、最近結婚したばかり。
ところが、別れたはずの元カノがストーキングをしてきてヤバいと。
元カノは主人公の男性に未練たっぷりでして、もうね、女の戦いが良いんですよ!
思わず(ストーカーなのに)元カノキャラを応援しちゃいましたw


クリスティ未体験の方へのお薦め作品


クリスティ作品の分類の仕方は、色々考えられますが、シリーズで大きく分ければ3種類あります。
『ポワロもの』、『マープルもの』、『その他』です。
僕の好みは断然『ポワロもの』なんですが、『マープルもの』にも好きな作品はありますし、クリスティ作品の中で一番好きな作品は、実は『その他』にあったりします。
このコラムでは、それぞれについて好きな作品を挙げていきたいなと思っています。


それとは別に、『超有名作』と『それ以外』という身も蓋もない分け方をすることもできます。
有名だからどうだ、というわけでもないのですが、
もし幸運にも、あなたが有名作で使われているトリックを知らないならば、やはり知ってしまう前に読んでほしいなと思うわけです。


というわけで一発目、まずは「オリエント急行の殺人」です。
オリエント急行の中で起こった殺人。その乗客たちはどの人物も、一癖も二癖もありそうな魅力的な方々ばかり。
この作品は『トリック』と『人間ドラマ』が最もバランス良く高レベルで融合している作品だと思います。
逆に言えば、「オリエント急行」にピンと来なかったなら、クリスティを楽しむのはひょっとすると難しい?
極論ですが、そう言い切ってしまっていいくらい、この作品には彼女の良さがぎっしり詰まった名著だと思うのです。


あるいは私自身がクリスティにハマる切っ掛けになった「ナイルに死す」から入るのも良いかもしれません。
こちらについては↑でも書きましたが、エジプトの旅情をバックにした船旅、三角関係、トリックと
三拍子そろった一大エンターテイメントでとても面白い作品です。


時系列順に読みたい方は「スタイルズ荘の怪事件」から入るのが良いのかな、とも思うんですが、
個人的にはあまりお薦めしません。


1920~1973と53年間もの長大なキャリアを誇る彼女ですが、最盛期と言えるのは『オリエント急行の殺人』を発表した1934年から、1953年くらいまででしょうか。
1953年の後も、素晴らしい作品をちょこちょこと発表しているのですが、少し打率は落ちたかなと思います。


1934年より前の作品で言いますと、お薦めしたい作品はありません。
「アクロイド殺し」が世間的には有名ですが、僕個人としては面白いと思いませんでした。


『シリーズ全作読んでやるんだ!』という方がいれば、当然『スタイルズ荘』から読んでいただきたく思いますが、面白そうな作品をつまみ読みしたい方には、1934年以降の作品から選ぶのが無難ではないかと思います。
その際に、私のコラムが参考になれば、とても嬉しく思います。



大好きな作品 ポワロシリーズ編


先に『オリエント急行』『ナイルに死す』については書きましたので、他の作品について書かせていただきます。


知名度はあまり高くないものの、ポワロシリーズの最高傑作として挙げたいのが「五匹の子豚」
16年前に起きた殺人事件。その当時、事件現場にいた5人の容疑者たち。
彼ら、彼女らから「事件当日」の様子を聞かされるたびに、その姿は二転三転し、新たな事実が次々と判明していく……。
被害者となったアミアスとその妻カーラ。アミアスの不倫相手エルサ。
カーラの妹で目が不自由なアンジェラとその家庭教師セシリア。アミアスの親友のフィリップ、メレディス。
事件関係者を少人数に絞り、関係者同士の関係性を密接なものにする。
登場人物一人ひとりに感情移入をさせ、『わが事』のように事件に引き込むクリスティの得意技が存分に発揮された作品です。


次に紹介するのは「葬儀を終えて」
空気が読めないコーラの一言「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」から始まるこの作品も、『トリック』と『人間ドラマ』のレベルがとても高く、正統派で質実剛健な作品に仕上がっています。


ドラマ版の出来が非常に素晴らしく、印象に残るのが『ホロー荘の殺人』に登場する、
被害者の妻、ガーダ。
敏腕な美人ヘンリエッタに人気が集まりそうですが、ぼんやりとした美しさを持つ彼女のエピソードは忘れられません。
デイビッド・スーシェ主演のドラマ版ポワロ・シリーズも、全力でお薦めしたい内容になっていますので、
本が苦手な人(はこのサイトにはいないかw)にもお薦めできる。
そういう意味で、敷居が低いのもアガサ・クリスティを人に勧めやすい理由の一つですね。
ドラマ版の宣伝になっちゃいましたが、原作もとても面白いです。


軽い読み口で楽しめるのが「メソポタミヤの殺人」
旅情、トリック、人間ドラマとどれも10段階で7くらいで強い印象を残す作品ではありませんが、
高いレベルでまとまっていると感じます。


シリーズ最終作だからといって最後に読む必要はありませんが、ポワロ最後の事件「カーテン」
ある程度ポワロシリーズのファンになった人に読んでほしい作品。
これでポワロと会えなくなるんだなぁと思うと、しんみりしてしまいます。
単なるお別れ会ではなく、内容も面白いのでぜひ。


読了したポワロシリーズ作品(備忘録)    独断と偏見による個人的評価 S~E  


「オリエント急行の殺人」   S
「葬儀を終えて」       S
「五匹の子豚」        S
「ナイルに死す」       S
「カーテン」         A
「ホロー荘の殺人」      A
「メソポタミアの殺人」    A-
「ABC殺人事件」        B
「死との約束」         B  ←ドラマ版はお薦めできません……。
「杉の柩」           B
「ハロウィーン・パーティ」   B-
「マギンティ夫人は死んだ」   B-
「三幕の殺人」         B-  ←ドラマ版の方が好き。
「満潮に乗って」       B-
「白昼の悪魔」        B- ←訳が…。この作品だけガラが悪いポワロw
「ヘラクレスの冒険」     C(短編集)
「愛国殺人」         C
「もの言えぬ証人」      C
「スタイルズ荘の怪事件」   C
「クリスマスプディングの冒険」(短編集) C
「エッジウェア卿の死」 C
「ポワロのクリスマス」 C-
「アクロイド殺し」        C-
「ポワロ登場」(短編集)   C-

「クリスマスプディングの冒険」(短編集)

ポワロものとマープルものの違い


アガサ・クリスティの二大シリーズといえば、ポワロシリーズとミス・マープルシリーズ
(全4作のトミー&タペンスシリーズというのもあるのですが、それはおいといて)。


シリーズが違うのですから、当然特色も違……います?
いや、違うはずなんです。
クリスティ自身が「ポワロシリーズで書いてしまったが、これはむしろマープル向きの事件だった」
という発言を残していたりもします。
ただ……感性の鈍い私には、明確な違いはわかりません。


これが、『百鬼夜行シリーズ』と『どすこいシリーズ』(京極夏彦)とか、
『悪党パーカーシリーズ』と『ドートマンダーシリーズ』(ウェストレイク)くらい違えば、特徴を書けるのですが……。


一応、個人的な印象を書かせていただくと


・旅先での事件が多いポワロと、自分の住んでいる村(セントメアリミード)近郊での事件が多いマープル

ただし、マープルにも旅先での事件は存在する(「カリブ海の秘密」など)し、
ポワロにも村での事件は存在する(「アクロイド殺し」など)


・なんとなく、ポワロものの方がシリアス色が強く、マープルものの方がのほほんとしている気がする

もちろんマープルものでもシリアス作品はあるし(「鏡は横にひび割れて」など)、
逆もまた然り(「ポワロのクリスマス」など。


・ポワロシリーズの恋愛描写の方がドロドロしている気がする
「白昼の悪魔」、「ホロー荘の殺人」、「五匹の子豚」などなど)


・マープルシリーズにはたまに、少女漫画っぽい作品がある。
 また、マープルシリーズの方が、女性の活躍頻度が高い気がする。

多分そうだと思うけど、気のせいかもしれない……。「動く指」、「ポケットにライ麦を」など



・ポワロは年をとる、マープルは多分年をとらない

ポワロシリーズにおいて、ヘイスティングスは結婚し、ポワロは老衰する(「ゴルフ場殺人事件」、「カーテン」など)。
マープルはもともとお婆さんであり、年は『多分』取らない。
多分、と書いたのは、全作品を読んではいないので僕の間違いかもしれない(ご指摘があれば訂正します!)



・初期ポワロ作品にはワトソン役(ヘイスティングス)が存在した。マープルものには存在しない

ただし、ヘイスティングスが登場するのは初期だけ




というわけで、『シリアス路線が多く旅先での事件が多いポワロと、たまに少女漫画っぽかったり、牧歌的な村での事件が多かったりするマープル』という印象はあるのですが、
自分で書いておきながら、自信はありません!



大好きな作品(マープルシリーズ編)


マープルシリーズのお気に入りは、まずこの2つ。

『ポケットにライ麦を』

卑劣な男に命を奪われた少女と、その復讐に立ち上がるミス・マープル。
少女の庇護者として、善き祖母のような存在感を発揮するマープルが印象的。
ミステリとしてもドラマとしても一級で、「見立て殺人」の要素もある名作。

『鏡は横にひび割れて』

犯行動機が秀逸で、さすが心理描写の巧いクリスティ、と唸らされる作品。
犯人はバレバレだけど、ドラマとしては非常に面白かったです。
この作品は、かなりシリアス色の濃い作品なので、ポワロシリーズに紛れ込んでいても、違和感がない気も。



続いては、村を震撼させた悪質な誹謗中傷手紙事件を描いた「動く指」
キャラクターが実に活き活きしていて、特に女性キャラの描き方が素晴らしい。
中でも、「地味で変な子扱いされているダサダサファッションのヒロイン」が
「オシャレにキメた瞬間、モテモテ美少女に!」という、ニンマリシチュが楽しめる
おすすめ作品。



名門クラッケンソープ家の男たちの視線を独り占めする、超有能メイド、ルーシーの活躍が光る「パディントン発4時50分」
も少女漫画路線でお薦め。
いろんな男から迫られても、色恋にうつつを抜かさず仕事はテキパキ、とはいえ全くの堅物ではないルーシーの
恋の行方はいかに!
なお、殺人事件の方は割とどうでも良かったです(苦笑)



真面目な人には不謹慎だ! と怒られてしまいそうだけど、
死体にまつわるドタバタ劇がユーモアたっぷりに描かれる「書斎の死体」
も、ユーモアミステリ好きにはお薦めですね。


独断と偏見による マープル作品お気に入り評価 S~E

ポケットにライ麦を    A+
鏡は横にひび割れて    A+
動く指          A
パディントン発4時50分   B
書斎の死体        B
予告殺人         B
カリブ海の秘密      B-
復讐の女神        B-
牧師館の殺人 C+
スリーピングマーダー C+
火曜クラブ(短編集) C-


 大好きな作品(非ポワロ・非マープル編)


僕が最も好きなクリスティ作品は、実はポワロシリーズでもマープルシリーズでもない、
「終りなき夜に生れつく」という作品です。

詳しくはこちらに書いたので……と言いたいところなのですが、
こちらではモロにネタバレをしているので、注意。

ネタバレなしで書くならば、クリスティ作品では珍しく、ホラーに近いテイストで描かれる
情感たっぷりの恋愛ストーリーになっています。


心理描写が書ける作家はホラーも書ける、と僕は常々思っているんですが、
心理描写があれだけ巧いクリスティなのに、ホラー作品はほとんど残していません。
そんな彼女が書いたホラーが読めるのが短編集「死の猟犬」
SFファンタジーの表題作や、ホラーに分類される「ジプシー」から、
純正ミステリの名作「検察側の証人」まで収録されており、クリスティの様々な作風が楽しめる
超お薦め短編集となっております。


ポワロシリーズの名作「五匹の子豚」に似た設定を持つ、「忘られぬ死」
ミステリ要素・サスペンス要素・ドラマ要素と、三拍子揃った良作。
ただ、クリスティ作品の中でも個人的ベスト3に入る「五匹の子豚」と比べると、
(似ているだけに)少し弱いかもしれませんが……単体で考えれば十分以上に面白い作品です。


クリスティはスパイ・冒険小説も書いているんですが、個人的にこのジャンルはそこまで好きではなくて。
ジャック・ヒギンズとかロバート・ラドラム、ケン・フォレット「針の眼」など、大好きな作品もあるんですが、
クリスティのスパイ・冒険モノは……あんまり面白くはなかったですね。

ただ、「親指のうずき」に出てくる悪役はかなりインパクトがあったんで、一応お薦めしておきます。


と、ここまで書いて何か忘れてると思ったら、超有名作を忘れていました。


「そして誰もいなくなった」

「見立て作品」&「クローズド・サークル」の定番作品で、オールタイムベストの常連、
恐らくクリスティの作品の中で一番売れた作品でもあります。
個人的にも結構面白いと思います……が、あんまり読みやすい作品ではなかったような……。
クリスティの入門書としてはあまりお薦めではないかなぁ。
前回も書きましたが、「オリエント急行」とか「ナイル」あたりのとっつきやすい作品から入った方がいいと思います。


あ、ちなみにクリスティ最大の地雷作品として一部で囁かれている「フランクフルトへの乗客」
ですが、ちゃんと読める作品でした。
お薦めか?と聞かれると別にお薦めはしませんが、想像していたよりは遥かにマシでした。




独断と偏見による クリスティ作品お気に入り評価 S~E(今まで書いたものを全部合体させただけです)

ポ→ポワロ  マ→マープル 他→その他 


「オリエント急行の殺人」   S   ポ  
「葬儀を終えて」       S   ポ
「五匹の子豚」        S   ポ
「終りなき夜に生れつく」   S   他
「死の猟犬(短編集)」    S   他
「ナイルに死す」       S  ポ

「ポケットにライ麦を」    A+  マ
「鏡は横にひび割れて」    A+  マ
「忘られぬ死」        A   他
「そして誰もいなくなった」  A   他
「カーテン」         A   ポ
「ホロー荘の殺人」      A   ポ
「動く指」          A   マ
「愛の旋律」         A   他
「愛の重さ」         A-  他
「メソポタミアの殺人」    A-  ポ
「謎のクィン氏」(短編集)  B+  他
「パディントン発4時50分」   B  マ
「書斎の死体」        B  マ
「予告殺人」         B  マ
「死との約束」        B  ポ
「杉の柩」          B  ポ
「春にして君を離れ」     B  他
「ABC殺人事件」       B  ポ
「マギンティ夫人は死んだ」  B- ポ
「ハロウィーン・パーティ」  B- ポ
「三幕の殺人」        B-  ポ
「満潮に乗って」       B-  ポ
「白昼の悪魔」        B-  ポ
「親指のうずき」       B-  他
「カリブ海の秘密」      B-  マ
「復讐の女神」        B-  マ

「スリーピングマーダー」  C+  マ
「アクロイド殺し」        C+  ポ
「フランクフルトへの乗客」  C+  他
「クリスマスプディングの冒険」(短編集) ポ マ
「ヘラクレスの冒険」(短編集)C   ポ
「愛国殺人」         C   ポ
「もの言えぬ証人」      C   ポ
「NかMか」          C   他
「スタイルズ荘の殺人」    C   ポ
「牧師館の殺人」       C   マ  
「エッジウェア卿の死」    C- ポ
「ポワロのクリスマス」    C- ポ
「火曜クラブ」(短編集) C- マ
「ポワロ登場」(短編集)   C-   ポ
「茶色の服の男」       D   他
「七つの時計」        D   他





最後に、ネタバレになりますので、白文字で書きますが(反転させてください)


恋愛関係での悪女&チャラ男は超高確率で死にますね
うまくいかなかった最初の結婚生活の影響でしょうか……

作家語り 第2回 ディック・フランシス

★イントロダクション


1冊1冊の感想はその都度書いているのだけれど、もっと大きな括り。
作家全体についてはブログで書いたことがないので、書いてみようと思います。
いつ挫折するかわかりませんが……。
 

取り上げる作家については、
①僕が好きな作家
②10作以上読んだ作家
③直近半年以内に読む予定のない作家
④未読の方のために、可能な限りネタバレを避けつつ面白さを伝える


というスタンスでやっていきます。

↑ここまで前回記事のコピペ。


では、書いていきましょう!


★本文

好きな作家を語るこのコーナーは今回が第二回。ディック・フランシスの登場です。
第一回でご紹介したアガサ・クリスティと違い、「誰?」と感じる方も多いかもしれません。


ディック・フランシスはイギリス『冒険小説』の中で、僕の最もお気に入りの作家。
特に『主人公への感情移入を促す』手腕は比類のないものがあります。

 
★ 競馬にまつわる物語を描き続けるフランシス


と書くと、「競馬? 興味ないねそんなの!」という声が聞こえてきそう。
でもご安心、そんな人でもフランシス作品は全く問題なく楽しめます!

だって、この記事を書いている私自身が、競馬にはちっとも興味がないんですもの(競馬ファンの方、すみません)。
だからね、「競馬に興味がない」と言って読まないのは勿体ないです!


さて、まず一番最初にフランシスを知らない皆さんが、誤解をしそうなポイントを訂正しておきます。
それは、フランシス作品は競馬に『まつわる』物語を描いているのであって、
ギャンブル小説ではない』ということ。


たとえば、「不正レースをするため、何者かが馬に興奮剤をもった! 犯人を捜せ!」(「興奮」)とか、
「競馬記事を書いていた記者が自殺した! 彼を追い詰めた犯人は?」(「罰金」)
といった具合。
前半ミステリ、後半は犯人との対決といった具合の「サスペンス小説」であって、
業界用語が沢山出てきて主人公が競馬で儲けるようなお話ではありませぬ。


それでいて、馬への愛情だとか、芝の匂いが香り立つような厩舎の描写などは、
さすが騎手出身の小説家だなぁと唸らされるわけですが。


★主人公の抱える内面と敵キャラの嫌らしさ

フランシス作品の主人公は、基本的に似たような人々です。
それは、『勇気があり、大胆で、正義感溢れる好人物。人付き合いが悪いわけではないが、やや思索的で内に篭る性質があり、身近な友人を大切にする。しかし心の奥底に弱さ、葛藤も抱えている』。

やや陰性のヒーロー、完璧なる英国紳士ですが、『弱さ、葛藤も抱えている』というのがミソで、
読者がググッと感情移入しやすい、絶妙なバランスの英雄に仕上がっているんですなぁ。


そこを持ってきてまた悪役が嫌らしいのなんの。
くっそー、よくもやってくれたな! と憤りを覚えながら、いつの間にか主人公を応援しまくっていること間違いなし。
誤解され、周囲から主人公が蔑まれれば読み手も悔しさを感じ、主人公が認められれば胸がすっとする。
フランシス作品は完全に、『感情移入型。主人公没入型』の物語なのであります。


良くも悪くもパターンが決まっており、たいていの作品で、悪役は卑劣。
主人公は悪役に追い詰められるも、不屈の闘志で乗り越えて、遂に悪役を倒す。
と、こういう物語が展開されます。


★ではまず、どの作品から読むべきか?

競馬シリーズ。
シリーズ、と名前がついておりますが、ごく一部の作品を除いて、作品相互の関連性はありません。


シッド・ハレーものという主人公が共通するシリーズはありますが、(「大穴」→「利腕」→「敵手」→「再起」
これはほぼ例外ですし、話も一話完結なのであまり順番は気にしなくても構いません

何せ僕自身、これがシリーズものだということを知らずに、「利腕」→「大穴」と遡って読みましたが、
全然問題なく、大いに楽しめましたから。


というわけで、どれから読んでも問題なしのシリーズですが、これから読む方には、
どの作品からお薦めすればいいかを考えてみます。


候補としてまず思いつくのが『興奮』
日本で初めて訳されたフランシス作品であり、評価も高い作品です。
ここから入るのがまぁ無難ではないでしょうか。

ただ、僕自身の『興奮』の評価はそこまで高くありません。
面白くなるまで時間がかかる作品だと思うんですよ、これ。


では僕ならばどの作品をお薦めするか。
ズバリ『利腕』です。
この作品は、僕が読んだ競馬シリーズの中で、最高傑作だと思います。


男らしさというものに価値を置かない僕のような人間でさえも虜にする、
主人公シッド・ハレーの、その男らしさ、男故の辛さ、繊細さ、傷つきやすさ、そして勇気。
悪役との対決もさることながら、妻とのすれ違いも非常にセンチメンタルに描かれており、泣かせます。
もう、僕が間にたって和解させてあげたいと思うくらい。


基本、順不同のシリーズだと思いますが、敢えて順番を気にする向きには
利腕』を楽しむために、同じくシッド・ハレーが登場する『大穴』から読むのもアリでしょう。
こちらも(『利腕』ほどではないと思いますが)非常に素晴らしい作品で、お薦めしやすいです。


★その他、僕の好きなフランシス作品


ドギツい悪役の存在感がものすごい、『度胸』は良くも悪くも忘れられない作品。
ちょっと僕の趣味からすると悪役が邪悪すぎて、血管切れそうになったので再読はしたくないんですけど、
そのインパクトで、忘れられない作品ではあります。


シッド・ハレー三度登場の『敵手』は、『度胸』とは正反対で安心して読める作品。
悪役は適度にウザいですが、それほどストレス無く爽快に勧善懲悪が楽しめます。
利腕』でもすれ違いを繰り返した妻とのあいだですが、『敵手』を読めば
「やっぱりこの奥さん、ハレーのこと大好きなんじゃん」と思えます。
なのに、やっぱりすれ違ってしまう二人……うーん、恋愛小説ではないはずなのに、切ない……。


親からの自立をテーマに、息子たちの成長を描く骨折』も忘れられない作品。
フランシスは心理描写もうまいし、人間関係の描写も暖かく、
最初はワガママで鼻持ちならなかったバカ息子が、段々主人公に心を開いていく様子、成長していく様子が
読んでいて気持ち良いんだなぁ。


何作も連続して読むと、「またこのパターンかw」と思うこともありますが、触れたことのない方は一度
読んでみることをお薦めします。



読了したフランシス作品(S~E)

「利腕」  S
「大穴」  A
「骨折」  A
「敵手」  A
「興奮」  A
「再起」  A
「名門」  B
「侵入」  B
「証拠」  B
「罰金」  B
「重賞」  B
「査問」  C
「暴走」  C
「反射」  D
「追込」  D
「血統」  D


44作(かな?)中16作しか読めていません(少しだけ増えた)。
死ぬまでには全作制覇できるかな? 
1年に1冊、毎年●月の第●日曜日は「競馬シリーズの日」と決めて、読破していくのも楽しそう♪

一気に読むよりも、末永く付き合っていきたいなぁと感じるシリーズでもあります。








 

短編集「人間以前」感想

フィリップ・K・ディックの短編集「人間以前」を読了しました。評価はB。

表題作の「人間以前」は、13歳以上で代数の知識がある人間以外を『人間以前』と見なし、中絶……つまり殺しても良い社会を描いたディストピア作品。
貴志祐介がこの設定も盛り込んで(他にもたくさんアイディアがありますが)、名作「新世界より」を描いており、そちらの方が更にインパクトが大きいですが、『人間以前』の方がもちろん昔の作品です。

庭の虫が父親に化けて、本物になりすます『父さんもどき』は、「人間以前」と同じく、子供が持つ原初的な親への恐怖をよりダイレクトに描いた作品。

逆に、ロボットとデータによって子供を育成する未来世界で、昔ながらの子育てを行ないたいと苦悩する父親を描いた『新世代』も面白い。

毎年のように新モデルが発売され、強制的に新モデルを買わされ続ける世界を描く『ナニー』『フォスター、お前はもう死んでるぞ』は、現代の消費社会への皮肉がたっぷり。

過去の小さな出来事によって、現在が変わってしまいかねないあやふやさを描いた『地図にない街』
天使の不始末によって、世界中が同じ人間で埋まってしまう『この卑しい地上に』も良作。

『欠陥ビーバー』『シビュラの眼」は途中までは面白かった。
『妖精の王』、『不法侵入者』、『宇宙の死者』はピンときませんでした。
記事検索
月別アーカイブ
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

プロフィール

fee

カテゴリ別アーカイブ
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ